逢瀬がクラスDアンプを選んだ理由

WATERFALLシリーズであるWATERFALL Compact、WATERFALL Integratedのパワーアンプ部には共通してD級=クラスDアンプを採用しています。国内では通称としてデジタルアンプと呼ばれることもある方式です。国内では一時期のブームがあったものの最近では落ち着いてきた印象があります。

まずクラスDアンプの音質の特徴を言えばアナログアンプと比べて量感は少なめで中低域があっさりしており、分離が良い、透明感があるというような感じでしょうか。スイッチング電源と組み合わされることも多く、駆動力があると評価されることも多いです。逆に高域はアナログアンプに比べて良い特性、質感を出すのが難しく荒さが目立ちやすい方式だと思います。

一時期のブームを考えると今更クラスDアンプ?と思われるのも無理がないかと思うのですが、個人的にはこのアナログアンプとは異なる音質を持つクラスDアンプの音、省電力、省スペースが可能な先進性、これらの特徴に可能性を感じていました。そしてやはりその音質に惹かれたから、というのが逢瀬のラインナップでクラスDアンプを中心に据える主な原動力となりました。もちろんアナログアンプで省電力を目指すのも良いと思いますが逢瀬はクラスDアンプの可能性に注目しました。上記のような弱点さえ克服出来れば従来達成できなかったような理想のアンプが出来上がるはずだと思ったわけです。

先日歪率が音質において最重要ではないという記事を書きましたが、個人的な経験的ではクラスDアンプの場合は歪率特性の良さと高域の綺麗さにおいてアナログアンプよりも強い相関関係があると感じました。一事が万事ではない、耳で判断しなければわからない、このようなことはオーディオでは日常茶飯事です。いままでの比較結果からはクラスDアンプの場合は歪率が優秀なアンプのほうが音が綺麗である可能性が高いということだけです。

クラスDアンプにおいて歪率はアナログアンプよりも強く音質に影響を与えているか、高周波領域において歪率が悪いアンプは歪率以外の要因で劣化をしている可能性があると考えています。(もちろんそれだけが絶対に正しいとは言い切れないですが)

例えばクラスDアンプでは高周波をカットするために通常は出力にフィルタ回路がありますが、それによってスピーカインピーダンスによる影響を受け、実際にスピーカから出力される周波数特性は通常大きく変動してしまいます。参考までに次のような測定データがあります。メーカは伏せますがクラスDアンプにおいて周波数が変動している様子がわかるかと思います。左上がアナログアンプ、それ以外は全てクラスD方式です。

この表の中で右上にあるHypex社のUcdと左下のアンプのみが周波数特性の変動を押さえたクラスDアンプだといえると思います。しかしこのようなクラスDアンプの欠点をうまく処理しているアンプを0から探すのはなかなか大変でした。なれない英語を使って海外から各種取り寄せて組み立てて比較。そのような日々がしばらく続きました。

そして現在逢瀬のメインで使用しているパワーアンプ部、Ucd=Universal Class Dと呼ばれるHypex社による独特の方式のアンプに出会いました。国内ではほとんど知名度がありませんが海外ではそれなりに知られたパワーアンプモジュールです。このUcdアンプは全てディスクリート、アナログ回路で作られておりデジタル制御ではありません。ですので厳密にはデジタルアンプという呼び方は正しくありません。アナログ回路によるMOSFETスイッチングアンプでしょうか。

またUcdモジュールは周波数特性の変動がないだけではなく、クラスDアンプとして非常に優れた高域特性を持っており、低域と高域で歪率特性がほとんど一定です。このような歪率特性を持つクラスDアンプは非常に稀であり、このような特性を実現することはほとんど類を見ない事例です。

実際にはほかにも一部で近い特性のアンプも見つけましたが動作の安定性や入手性などから、逢瀬の最初のラインナップではUcdを採用することとなりました。Ucdモジュールはそのままでも十分優秀な音質を持っていますが、逢瀬ではそれに独自の対策を施し更なる滑らかさと音の分離を持つ製品として仕上げました。

類まれな特性によって生じるクラスDアンプとは思えないような滑らかな高域、それとクラスDアンプそのものの音質である高い分離の良さと透明感、この奇跡のような両立がついに可能となったのです。もし機会がありましたらば、是非ともこの理想のクラスDアンプの音質を体験していただきたいと思います。

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