ジッター対策の話 その1

今となっては広く知られた事項となり今更特筆すべき事ではないかもしれませんが、ジッターとは決してオカルトではありません。踏み込んでいくと大変難しい話なのですが、オーディオで簡単にいえばデジタルからアナログへの変換の際に基準タイミングのズレが波形の乱れ=音質変化につながります。全く同じデジタルデータであってもクロックにジッターが多い=タイミングがずれる、これによってオリジナルとは別の波形が再生されてしまうわけです。といっても文章で事例を具体的に説明するのは難しいです。個人的にわかりやすいと思った説明ページがありましたのでこちらを参照ください。(よくわかっている方は飛ばしてください)

新人エンジニアの赤面ブログ 『 なぜ Jitter に注意しなくてはならないのか? 』

デジタルからアナログへの変換の場合、このようなジッターの少ない基準クロックを用意することが音質にとって重要ということです。実際にクロックの扱い一つで実際の再生スペクトルに影響があります。

ところでオーディオでは一時期クロックの周波数確度=ppmスペックの高さを重要視する流れがあったと思います。しかし音質のためにはこのppmスペックだけ確保すれば良いというものではありません。上記のような波形そのものに影響するのはppmではなくジッター(ps)であり、オーディオで重要になるスペックはこちらだと逢瀬では考えています。これについても次のリンクを参照いただけたらと思います。

新人エンジニアの赤面ブログ 『クロック信号の精度表記について』

周波数確度ppmとは音楽で言えば音程のズレに関する指標です。この精度が悪いならば音程が微妙にずれてしまうというわけです。対してジッターは上側のリンクの画像にあるような波形単位の乱れに直結します。こちらは音程ではなく音質の変化です。ですからオーディオの設計においてはジッターの低さこそが音質のためには重要であって、周波数精度については通常の精度があれば十分でありオーディオにおいて最重要課題ではないと判断しています。厳密な音程は一流のクラシック含めた伝統的音楽の奏者ならば非常に微細な音程の違いに敏感かもしれませんが、一般人にとっては無縁な世界だと思います。

もちろん逢瀬ではクロックについても当然気を配っています。上記の事項を基本とし周波数確度ppmよりも低ジッターであることを優先したクロック(jitter RMS 0.5ps typ)を使いデジタル再生に必要とされる低ジッター特性を確保しています。

その結果が次のJ-testの測定データです。J-testはジッターに敏感な信号を送信し、その再生スペクトルを見ることでジッターの発生レベルを調べる方法です。(日本語の資料がなくなってしまいましたが、詳しくはこちら(PDF英文))下の画像をみていただければ、逢瀬のDACでは余計なノイズや高調波が発生しない=ジッターが全く発生していないことがよくわかると思います。またノイズフロアはここが測定系の限界であり、実際のDACそのもののノイズフロアはもう少し低いと思われます。

図、44.1kHz J-testの様子

ただし実際のDAC設計では低ジッタークロックをなんでも使えばいいというものではなく、きちんと性能を出して使う上で注意点がありますがそれについては次回以降に書きたいと思います。

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