分離型構成DAC AK4498+AK4191について

面白い構成のDACが発表されました。実はこの構成は逢瀬的に待望の構成です。

https://www.akm.com/jp/ja/about-us/news/2020/20200304-ak4498ak4191/

世代的にはPCM1704以前の構成に戻るのですが、この構成には大きな可能性があると考えています。未だにPCM1704以前のDACが評価が高い、ディスクリートの評価が高い、これらの理由にはチップ分離が関係していると考えています。マルチビットとΔΣでたまたま分離世代からワンチップ世代に以降されたので、どうしてもマルチビット以前、ΔΣ以降という対立軸で語られることも多いDAC界隈ですが、実はチップが分離しているかどうかはマルチビットとΔΣ以外に重要な一因と予想しています。AKMが製品化したということはその優位性をようやく認めたということだと思いますのでとても期待しています。

ということで分離型には期待は大きいのですが、逢瀬でこの構成の製品をすぐにそのまま採用して発売などは行わない予定です。先日のAK4499特注DAC用の追加基板としても今のところは開発を考えていません(ベストレイアウトにはできない為)。一部期待がありましたらすみません。以下の理由で採用は見送る予定でいます。

優位性はあるものの懸念も沢山

DACチップのアナログ段とデジタル段を分離する構成には色々な優位性はあります。デジタル段を強化または独自設計できること、アナログ回路とデジタル回路を完全に分けられること、電源設計も同様です。色々と構想も選択肢も広がりますし、逢瀬としてもこの構成が本来あるべき理想形とは認識をしています。ではそんなに理想ならばすぐに採用したいと思うわけですが以下の理由により製品化は見送ります。

  1. 前段、後段分離の最適化には時間が必要
  2. デジタル段の強化方針はAK4191と逢瀬で理想目標が異なること
  3. AK4498がAK4499ではなくAK4497と同等であること

1つめの最適化について、じっくり時間を掛けて検証が必要です。現在のAK4499のレイアウトはWM8741、CS4398、PCM1792、AK4495、AK4497と何世代も開発と試験を繰り返し最適化を進めてきた最終形態なので、新しい構成を採用してすぐに音質で超えられるとは考えていません。なのでどのような構成、分離パターンが最適なのかは何通りもの試行錯誤をした上で、さらに熟成をさせる必要があると考えています。もちろん分離型の実験は行うのですが正式なラインナップの製品としてはすぐに取り扱うことができる予定ではありません。

2にAK4191の前段処理について。AK4191のスペックを見るとデジタル処理の精度が強化されています。主にビット数、OSレート、デジタルフィルター性能です(実はOSレートは同じ可能性もあります)。これらによりAK4498+AK4191にAK4499よりも音質向上があったと想定すると、その理由の一部はAK4191に理由があるということです。実は逢瀬でもAK4499特注DACでデジタルフィルターを一般的な特性ではないものに変更したことで音質向上を経験しています。なのでAK4191によって同様の理由でAK4499よりも進化を感じさせる部分があるでしょう。しかし逢瀬の理想とAK4191のスペックは合致しません。なので逢瀬では前段は独自開発したものを用意する予定です。そしてAK4499特注DACでは一部デジタル段は外部DSPで補強しています。なのでAK4191を使う優位性の一部は全くないと考えています。AK4499特注DACで分離型の優位性の一部は既に取り込んでいるということなので、例えば他社のAK4499とならばAK4498+AK4191に優位性があっても、逢瀬のAK4499ならそうではない可能性があるということです。

3にAK4498のスペック、仕様を見るとAK4497と同様です。AK4497からAK4499では相応の音質差がありました。パッケージサイズ拡大、電流出力化、大電流化、抵抗スイッチというアーキテクチャの進化、外部リファレンス電圧化、いろいろな理由があると思っていますが、どちらにせよ同等レイアウト、回路構成ならばAK4497よりAK4499に優位性があったのは事実です。おそらく開発時期の問題でAK4498はAK4497ベースで発売されたものと思われますが、近い将来AK4499と同等の世代でAK4498のような分離型が出てくると予想しています。それならば期待はそれ以降に向けます。慌ててAK4498を採用した製品を作るよりAK4499相当のチップが出てくるのを待ちたいです。

お客様の真の満足と利益のために

逢瀬はAKM(または他のチップメーカー)の展開戦略に振り回されないようにしたいと考えています。頻繁な製品のアップグレードは、同時に出費をお客様に強いることでもあります。新しければ何でも良いという方であれば音の善し悪しに関わらず最新のものを選ぶ自由と権利があります。AKMやメーカーもそうやっていろいろな製品を出しながら生き残っていくのでそれ自体は悪いことではありません。AK4499で利益とポジションを確保し、AK4498+AK4191で新しい可能性を開く。とても良いと思います。しかしそれに乗るかどうかは各メーカーの判断です。

逢瀬は今回発表されたものが最善で最良、ハイエンドにふさわしい内容だとは考えていません。その根拠がいくつかあることは上記で説明したつもりです。自社利益のためにクオリティ的に無意味な製品を売ろうとは思わないということです。それがメーカーポリシーです。最新のチップを使った製品を(完成度に関わらず)他よりも早くリリースするようなことは逢瀬が積極的にやるべきことではないと考えています。これについては過去にも度々触れてきたつもりです。

DACにおいてチップが全てでも支配的でもないからこそ、それに振り回されるべきではないわけです。おそらく中華や一部メーカーは目新しい製品にすぐ飛びついて新規需要獲得のために動くと思いますが、逢瀬は小さい会社ですしハイエンド志向なので、早さや目新しさより変わらない価値、もっと大事なことにリソースをつぎ込みたいと考えています。それはチップ依存ではありません。

その大事なこととは、分離型でどうやって高い性能を音質を確保し、理想的なレイアウト、性能となるのかをじっくりベストを模索し検証することです。前段の中身についても同様です。そのような実験をしているうちにAK4499相当またはそれ以上の分離型DACは出てくるかもしれません。もしかしたらAKMではない他社から同様の構成に対応したDACチップが出てくる可能性すらあります。もしくは後段のみ全く別の構成ディスクリートにするなども検討できるでしょう。

逢瀬は次世代DACの可能性は分離型にあると信じていますが、少なくとも今回リリースされた製品が当面のベスト性能だとは思えないということです。よりよい結果を出すために最大限の準備をし、然るべきタイミングに備えたいそのための実験をしておきたいと思います。

もしAK4498+AK4191について、新しくわかったことがあればBlogで報告をします。

AK4499特注DACの本予約時期を追記しました

本記事と無関係ですが、リンク先はこちらになります。

AK4499特注DACの開発と量産状況

ユーザーフォーラム開設しています

顧客登録をしている方限定ですがユーザーフォーラムを公開しました。登録をしていないと内容は見れません。製品のサポートはこちらで行います。

https://shop.ause-audio.com/forums/

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