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怪我の状況報告と、無線と実験誌へのWF-P502L掲載について

トップに告知させていただいた通り右手に怪我をしまして先日まで入院していました。現在は退院しましたが右手はほとんど使えない状態です。完治まで3ヶ月ほどかかる見込みです。ただ途中である程度右手を使えるようになるはずです。

ご不便をおかけしますが当面の業務は以下のように対応できる内容に絞って行います。

  • 貸出機の対応
  • 簡単なメールやフォーラムでの対応
  • 交換修理
  • 完成品の出荷
  • Nilai500グループバイ関連

以下は制限があります。ですが緊急性の高い内容の場合はできる範囲で対応の努力はいたします。

  • 長文での返答全般
  • はんだ付け作業、調査や分解を伴う修理
  • 量産、開発作業全般(DDC、P952は遅れてしまう見込みです)

無線と実験 MJ 4月号

こちらは良い報告です。こちらに当社のWATERFALL Power 502Lが掲載されました。会社の簡単な紹介、製品の技術的要点、音についてのレビューがあります。音については価格を考慮の上ではありますが大変高い評価を頂いていると思います。また今回ありがたく雑誌掲載をいただきましたのでDDCのリリース時には広告も載せてみたいと考えています。新しいお客様への告知も少しずつ検討していきたいところです。

https://www.seibundo-shinkosha.net/magazine/hobby/78894/

Hypex Nilai500 GroupBuy計画

グループバイ申込みはページ最下部にあります。今の時点では3/20ごろまで募集予定です。現在Hypex社と数量納期価格などの交渉中ですが、先方がイベント出展中なので返答が2月9日以降となる見込みです。もし納期遅れがある場合は募集期間をそれに合わせて延長します。その他重要な追加情報あればこの記事に随時追記していきます。

グループバイを行うのはNilai500のモノアンプキット(Nilai500DIY 500W mono kit)になります。プリアンプキットについてもご要望あれば検討いたします。ステレオアンプキットについては出力が大幅に低下することとコストメリットが少ないので現在は検討していません。

価格についてです。モノアンプ2台の予想価格は送料込で約25.5万円です。金額ベースはオンライン見積もりですので、最終的な台数、為替変動、送料によって上下が予想されます。あくまで目安です。

本国定価は820ユーロ、2台で1640ユーロです。現在ユーロは141円ですが、決済手数料2.5%、為替手数料約2円、送料72ユーロ、国内消費税+10%が加算されます。概算しますと個人輸入の場合は約27.5万円です。

最新報告 2023/03/20更新

モノアンプの注文リクエスト23名です。ほかにプリアンプが1台希望入っています。またパワーアンプは納期6月になりました。遅くなりますがよろしくお願いいたします。

よくあるQ&Aはページ下部へ移動しました。こちらは今後台数と予定のみ記載いたします。

Nilai500までのUcD方式アンプの歩み

以下今回はじめての方向けの参考情報です。

Nilai500の始祖はBruno氏がPhilipsに在籍していた時代の特許製品UM10155が発端です。画期的な発明ではありましたがPhilipsから本格的な製品が発売されることはなく、有名になったのはオランダHypex社に在籍していた時代のUcDモジュール以降です。Nilai500も実質はUcDの改良版です。

このUcD方式は最もシンプルなフルアナログ式PWMアンプで動作はデジタルではありません。LCフィルターを含めたフィードバックを実現し、2000年代中盤以降UcDが初登場した当時唯一負荷インピーダンスに完全に左右されないフラットな周波数特性を実現しました。当時としては従来型D級アンプの複数の問題を同時に解決した方式です。しかしながら初期のUcDはD級としての問題をうまくクリアしたものの、まだよくできたアナログアンプに匹敵するほどの性能ではなく完全にアナログアンプと同等と言えるほどの性能は実現できていませんでした。

2012年にBruno氏は新世代のNcoreを発表します。UcDと比較してほとんどすべての測定指標で一桁(20dB前後)上回る数値を達成し、ついに大半のアナログアンプとの格差を解消します。このNcoreはコストパフォーマンスでは新世代モジュールに対して優位性があり、当社も現行でエントリークラスのパワーアンプ製品としてこのNcoreを搭載した製品を販売しています。

ここまではHypex社単独によるものでした。しかし現在Ncoreのさらなる発展技術は2つの企業が保持しています。

1つ目はデンマークのPurifiです。UcD特許発明者であるBruno氏はHypex社をやめ別の企業Purifiに移籍しましたが、その後2019年に新世代となる1ET400Aというアンプモジュールを発表します。これはUcDとNcoreほどの巨大な格差はありませんでしたが着実に性能を向上させたものでオープンループゲインが約20dB向上、実測特性でNcoreを総合的に上回る内容でした。

2021年にPurifi社は1ET400Aの大出力版となる1ET7040SAを発売しました。こちらは1ET400Aの性能をできる限り維持しより大出力でよりハイエンド志向を目指した製品です。現在量産手配中の当社のWF-P952に採用するのもこちらの1ET7040SAモジュールになります。測定性能そのものは1ET400Aよりわずかに落ちるのですが、それでも従来のNcoreより高い水準にまとまっています。Ncore発展系で最大出力を追求する場合にはこれが現在唯一の選択肢です。

そして2022年に長い間沈黙をしていたHypex社からPurifiに対抗する最新型のモジュールが発表されました。UcDからPurifiまでの進歩はすべて発明者のBruno氏によるものでしたが、NilaiはBruno氏ではなく残されたHypex社の技術スタッフが改善を行いました(技術の継承含め、大変な仕事だったと予想します)。またNilai500の発表性能はPurifiの1ET400Aの性能を上回るもので、最大出力を度外視すれば現行最高特性のD級アンプと言える内容です。

以下にNilai500のTHD+Nと同方式アンプの性能を比較したグラフをASRから転載します。

グラフの見方としては、低いほどノイズと歪が少ないということです。低出力時の数字が低いほどノイズが少なく、大出力時の数値が低いほど大音量時でも歪まず高い性能を維持しているといえます。Nilai500の性能は180W以内であればほぼすべての条件でNilai500が優秀です。

唯一Nilai500より上回っているのはNCx500の7W以内の性能ですが、これは前段バッファーを含まない数値ですので参考程度です。実際に製品として組み込まれる場合にはここからノイズ性能がある程度犠牲になりますので、結局はNilai500と同等になる可能性が高いです。

また1ET7040SAが最大出力で伸び悩んでいるのは4Ω負荷で電源電圧によるスイング制限が原因です。1ET7040SAは2Ω時に950Wまで最大出力が伸びますがNilai500は2Ωでは500Wから伸びません。一部のスピーカなどに該当する非常に重い負荷を駆動する場合には1ET7040SAが適切になります。

グループバイについて

グループバイのメリットはまとめて購入することで個別でオランダから輸入していただくよりも低価格で購入できるチャンスを提供できると考えています。以前目安として10人としていましたがこちらのミスでモノアンプ2台が5セット以上(10ユニット以上)の希望者が集まれば割引購入ができました。ただし10人未満の場合は単価が10人以上と比較して多少高くなるかもしれません。

当社を通すメリットはいくつかあります。

  • 本国から直接個人で買うより関税、送料、為替手数料を含めると安くできる可能性があること
  • 日本語サポートを提供できること
  • 組み立てにコツが必要な箇所の情報を予め提供できること
  • 初期不良や故障の際の交換対応を代行できること(余剰在庫があれば在庫品と交換するのでおまたせしません)

もちろん当社を通すことに抵抗がある方は個別で本国から購入頂いても構いません。そこは制限はありませんし自由です。ですがその場合はサイト表示の定価+為替手数料+決済手数料+送料+消費税がかかりますので表示金額より追加費用がかかりますのでご注意ください。Hypex社の表記価格はこれら手数料を含まない価格なので手元に届く頃には17%程度割増です。

グループバイの利点は送料と送金手数料を大幅に削減できること+当社がHypex社と法人契約のため仕入れや数量割引が適用できる点にあります。これを適用すれば本国で個人購入するトータル金額比で同等か安い価格で上記サポートや販売対応もできるということです。ですので実売に近い価格でも赤字にならずペイできる見込みです。

なお大事な注意点ですが完成品ではなくケースと全ての部品と内部配線ケーブルを含む自作キットなことに注意が必要です。決して難しい内容ではありませんが買ってすぐに使える完成品ではないことは予めご理解をお願いいたします。参考までに中身はこのようになっています。

Nilai500DIY 500W mono kit Hypex社公式情報

(Hypex社の商品ページを翻訳した内容です。)

商品説明/Nilai® Class Dテクノロジー登場!

Nilai500DIYは、好評を博したNC400の待望の後継機です。その洗練された輝きを放つ外観は、中身がどうなっているのかを如実に表しています。エンジンルームには新開発のコントロールループ・トポロジーを搭載し、パフォーマンスを一段と向上させました。Ncoreの10倍以上の性能を誇ります。

このモジュールは、NC400と同様に、完全ディスクリートのバッファー段とオンボードの電圧レギュレーターを備えています。Nilai500DIYは、厳選された高品位な部品と相まって、これまでで最高のサウンドのアンプとなりました。私たちは、ハイエンドオーディオの新たなベンチマークとなる真に特別な技術を生み出し、私たちDIYコミュニティにとって真にユニークなアンプモジュールとなりました。

Nilai500DIYとPS500DIYを組み合わせることで、最高のDIY体験を実現することができます!簡単な手順で、ハイエンドのパワーアンプをわずかなコストで、しかも30~60分で完成させることができます。DIYclassD PreAmplifierキットと組み合わせることで、素晴らしいサウンドの機器一式を作成することができます。

用意するものは、この箱といくつかの工具だけです。

  •  ワイヤーカッター(またはペンチ)
  • 5.5mm六角ナットドライバー(またはペンチ)
  • 7mm六角ナットドライバー(またはペンチ)
  • 3.5mmマイナスドライバー

保証期間:5年/20.000h

主な特徴

超低歪み
超低アイドルパワー
超低ノイズ
超低出力インピーダンス
オーディオファイルコンポーネント搭載
仕様

入力端子

1 x バランスXLR
1 x トリガー12V
出力端子

1 x 金メッキバインディングポスト・セット
(バナナプラグ、スペードプラグまたは裸線)

このキットには以下のものが含まれています。

  • DIYclassD Nilai500DIYモノケース(マットブラック)
  • 完全な内部ケーブルハーネス
  • PS500DIY電源。
  • Nilai500DIYのアンプモジュール。
  • 入力ボードとフロントボード。
  • 必要なすべての取り付け材料。
  • 組立説明書
  • 1.5mm六角レンチ
  • 2.5mm六角レンチ
  • TX-10 トルクスキー
  • TX-20トルクスキー

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組み立て動画

空気録音による音質比較、Nilai500の参考評価記事

Nilai500とその他Purifi、Ncore系パワーアンプの空気録音比較

グループバイ申込み方法

購入確定の方のみ以下のフォームに必要事項を入力し送信してください。フォーラム未登録かつ偽名または存在しないメールアドレスまたは匿名メールアドレスで送信された場合、集計にカウントしません。

2023/03/21 締め切りました。追加での希望がある場合はコメントにてお知らせください。一定数量が集まりましたら追加で取り寄せします。

Q&A 質問と回答

こちらお客さまからの質問と回答の事例になります。青字はHypexからの公式回答です。

  • BTL接続は可能ですか? はい、可能です。
  • BTL は UCD モジュールと同じ方法ですか? はい、UCDと同じです。
  • ACインレットをフィルター式に変更することに妥当性はありますか? ほとんどの場合、効果があると思います。お客様ご自身でお試しください。
  • 保証について  DIY製品なので、最終的なエンドユーザーには5年保証が付きます。そのため、グループ購入に参加される方全員が、弊社に直接5年保証を請求することができます。

Q:8Ω負荷でUcDアンプが出力できる倍以上のパワーが必要です。例えばUcD400を2台ブリッジする方法はありますか?

入力信号のマイナス側とプラス側を入れ替えるだけで、片方のモジュールが180度位相がずれて駆動します。ラウドスピーカーをアンプの両方のプラス側ラウドスピーカー出力 の間に接続し、アンプ側のラウドスピーカーターミナルに 100n/200V のコンデンサを接続します。各アンプは、8 オームの負荷が接続された 4 オームを「見て」いるので、この設定は 8 オーム負荷に最も適しています。4オームの負荷では電流保護が作動し、期待したほどのパワーが得られない可能性があります。

  • ACインレットフィルターのおすすめはありますか?

これはこちらで回答いたします。Nilai500の付属アンプケースのインレットは以下のような構造になっています。

この部分の固定にかなりの力が必要なのでフィルターインレットタイプは無加工の適合品がないかもしれません。ケースの追加工が必要になる可能性が高いです。予めそのつもりで選定をお願いいたします。

そのうえで推奨品の回答ですがSchaffner社のものが高品質です。そして電流定格はできるだけ大きいものが良いです。定格が低いもののほうががノイズ抑圧スペックが高いことが多いですが、低い定格のものを使うと力感が低下することがあります。こちらで似たタイプを探しましたが固定金具が金属でしたのでそのままではつかない可能性が高いです。またヒューズ対応のものは高額です。

  • SP出力端子のおすすめはありますか?

高品質なのはWBT社のものになると思います。定価自体がコネクタとしてかなり高額ですので費用対効果はあまりよくありませんが、一般グレードのものと比較するとそれなりの無視できない違いはあると感じます。ですが個人的には同じ費用をまずはケーブルとケースのインシュレータ類に投資したほうが効率は良いと思います。

  • 支払い方法はどのようになりますか?

次のショップページリンクにNilai500の項目を追加します。銀行振込、Paypalを選択できます。クレジットカードはPaypal経由で利用可能です。

トップページ

  • Nilai500用に逢瀬のレタリングシートがほしいです

ありがとうございます。ですが今回のキットは逢瀬の製品ではなくHypex社の製品ですのでそのような対応は考えていません。パワーアンプはP952ももうすぐ発売になりますので、こちらをかわりにご検討いただければありがたいです。

  • 背面に12Vのトリガー入力があり、電源のオン/オフが可能です。 トリガーコントロールの場合、前面のプッシュボタンの状態は関係ありません。 これは正しいです?

12v トリガーは、プッシュ ボタンを無効にします。

  • AVアンプの12Vトリガー出力に接続した場合、AVアンプの電源ONと同時に本機の電源がONになりますか?

Nilai500 mono kit が 12V トリガー信号を受信するとすぐに、スイッチがオンになります。 12vトリガーを送信するときのAVプリアンプによって異なります。 一部のブランドは少し遅れて構築されます。 また、当社の DIY プリアンプは 12V トリガーの遅延が非常に小さいです。

  • 一定時間入力がない場合、スタンバイに戻る機能はありますか?

Nilai500 キットにはシグナル検出機能はありません。 したがって、12V トリガーを使用すると、それにのみ反応します。 12V トリガーがない場合は、前面のプッシュ ボタンを使用して手動でスタンバイに切り替える必要があります。

  • 連続使用した時の消費電力や発熱について実測値はありますか?

現在測定作業ができませんが似たスペックのP502Lでの実測データがありますので参考にしてください。同じではありませんが直系アンプですので結果が大幅に違うことはないと思われます。

無信号アイドル時:0.15A
矩形波駆動、アンプが歪み始める最大出力、4Ωダミーロード:2ch合計平均約12A
サイン波駆動、アンプの最大出力、4Ωダミーロード:2ch合計平均約8A

これを音楽信号にだいぶ近いエネルギーバランスだと思われるピンクノイズ波形に変更しますとボリューム位置が同じでも合計で2A以内まで下がります。筐体温度はさほど高くありません。冬場なら少し暖かい程度です。これが空調のない夏場や周囲に熱源のある設置状況では大幅に過酷になるかと思われます。

Nilai500とその他Purifi、Ncore系パワーアンプの空気録音比較

以前に予告しておりましたが、Hypexの新型Nilai500のグループバイに当たってオンラインで試聴ができるソースを用意いたしました。

Hypex Nilai500とPurifi 1ET7040SAのパワーアンプについて

注意点

  • 録音環境は同一(スピーカやDACやマイクは固定)ですが録音ゲインは多少の誤差があります。100V系の録音が200Vより1-2dBほど高いですが録音全体の誤差は最大でも2dB以内です。録音時のゲイン誤差は編集で0.1dB程度まで補正済みですが、もともとの録音ゲインの違いによって多少の影響があります。そこは厳密な比較ではなく、参考程度としてください。
  • 使用音源はフリーでダウンロードが可能な2Lの2L-056_04_stereo_96kHz.flacを使っています。他にも検証用として複数の楽曲の録音をしていますがこちらにすべてアップはしません。(若干わかりにくくすみません)
  • 200VのWF-P952のみ環境ノイズがやや大きいですがアンプによるものではなく空調と録音レベルの影響です。総合的には問題ないと判断し掲載しています。

空気録音データ

100V環境 Nilai500

100V環境 WF-P502L 1ET400A

100V環境 WF-P952 1ET7040SA

200V環境 Nilai500

200V環境 WF-P502L 1ET400A

200V環境 NC1200

200V環境 WF-P952 1ET7040SA

今後の予定

Nilai500グループバイの受付スタートは2月までに準備し案内予定です。次回はトップから特設ページへのリンクを新しく作成し、今回の録音データや過去記事に掲載した内容のまとめなどもそちらに掲載する予定です。事前のお申し込みもそちらからショップに移動していただき行う流れを予定しています。

録音について参考コメント

以下必要な方のみお読みください。

上記録音のみではわかりにくい現場で聞いた印象、掲載できなかった別の楽曲の録音結果と合わせまして、当方のコメントを追記しておきます。基本的には録音を聞いて各自でご判断いただくのが最適です。

Nilai500について

まず今回の注目であるNilai500は背景の静寂感や透明感ではすべての中で最も優秀だと思います。これは測定上でもSNが最優秀なので現場で聞きますとこれらが非常に優れていることがわかります。ですのでNilai500自体は繊細で丁寧な方向性のアンプと言う印象です。

またNilai500はP502の半分の電源容量で最も小さい電源のため駆動力の低下が心配でしたが100V環境では駆動力面でも十分健闘していると思います。おそらくですが従来モデルの電源よりも容量は小さくてもエネルギーを効率よく取り出せる設計になっているようです。

NC400 mono kitの位置づけについて

今回Nilai500に注目している方のうち現状でNC400 mono kitをお使いの方もいるかと思いますが、録音でNC400の基準とすべきはNC1200の高域+Nilai500かP502の低域です。この特徴を合わせた結果がNC400に近いです。Nilai500にアップグレードすることで低域や駆動力面で大きな向上はないと思いますが、背景音や中高域の精細な描写力は向上する可能性が高いでしょう。

高域について

NC1200とNilai500はフィルター非搭載なためか少しだけ付帯音を感じます。エージングでも初期の高域付帯音の印象を完全に払拭はできませんでした。比較によれば原因は帯域外ノイズを対策しているかどうかのようで、P952とP502はアンプ側に帯域外ノイズを取るフィルターがありますのでより素直な質感でした。

高域付帯音とは別の要素でもそれぞれに違いがあり、音像がシャープで細かい描写が得意なのはNilai500とP952で、P502は全体的にやや丸め、NC1200は少し雑なところがありそうです。あわせますと開発者としてはP952>P502≒Nilai500>NC1200という順番ですが、このあたりは何を重視するかによって順位や意見が分かれるところかもしれません。Nilai500やP952のような傾向は環境によってはシステムの問題をさらけ出し良い結果とならない、むしろP502のような方向性が合うこともあります。

200Vと100Vで傾向が変わる点に注意

今回比較して強く感じたのはアンプ以上に100Vと200Vの差が大きいことです。電源電圧は駆動力と切り離しては考えらないようで、200Vと比較すると100Vは全般的に立ち上がりが遅く、音が遠く、低音のグリップが弱いです。

参考情報として今回使用電源ユニットは3グループに分類されます。

  1. NC1200とWF-P952はSMPS3Kという3000Wクラスの電源を使用
  2. WF-P502LがSMPS1200でこれは1200Wクラスの電源
  3. Nilai500は専用の500W電源

正直100V環境ではSMPS3K搭載モデルの真の実力は発揮できていないようです。100VでのP952は低域の下の方に重い帯域があります(全体的に立ち上がりが早く余裕もありますが…)。P502ではそういう傾向はなく100Vでも帯域バランスの良い音です。Nilai500も傾向はP502とにてますが若干P502のほうが踏ん張りの効く音でしょうか。ですが200Vと比較すると大きい差ではありません。

これらの傾向は200Vでだいぶ変わるように感じました。200VではNC1200が駆動力では優秀で次点でP952、これはどちらもSMPS3Kモデルです。P502やNilai500は駆動面では少し弱いと感じます。ですが意外なことに200VになるとNilai500がP502より若干力強いでしょうか。

SMPS3Kの100Vでの実力低下は家庭用電源の電流スペックに上でもそうなっています。通常15Aが定格ですから100Vでは3000W取り出すことはできません。ですが200Vなら15Aで3000Wです。ですので100V環境ではWF-P952の実力は最大限には発揮できないということです。またNilai500は従来の電源と傾向が違うのか100Vより200Vで強みを見せるようです。

以上です。

今年の予定と現在の各製品の進捗について

皆様今年もよろしくお願いいたします。遅くなりましたが今年の予定について簡単にまとめます。

新型パワーアンプのPower 952

直近リリース目標は新型パワーアンプのPower 952です。年明けに量産向けケースが到着したのですが文字入れの指定に齟齬があり、黒色シルクではなく褐色のレーザー刻印になってしまいました。製品の位置づけとして高級モデルですので文字は国内で修正することを考えていますが、問題なく再シルクができるかどうか相談中です。

不可能そうなら前後パネルはすべて作り直しになります。金属加工は中国外注ですので春節明け以降の再生産となり、しばらく量産準備に時間がかかりそうな状況です。

Nilai500のグループバイ

おまたせしております。空気録音は現在準備中です。各種パワーアンプの比較用空気録音のための設備に万全の準備をと考えていますが、DAC関連が落ち着いていないため少し先延ばしになっています。一応ですが今月中には比較用の音声をアップする予定です。

Hypex社の受注再開が3月末以降ですので、2月からスタートするとしても予約受付の猶予は2ヶ月程度確保できる見込みです。最小注文数はモノアンプをペア10セット以上としています。これ以下の注文数の場合は発注自体を行いません。

ネットワーク対応のUSB-DDC

こちらは発売は今年後半以降になる可能性が高いです。現在は各機能を個別に検証している段階です。簡易インターフェース、簡易ケースでコストダウンを最大にしますが中身はできる限り力を入れます。

現在の予定ではネットワークにも対応できそうな見込みです。ネットワーク機能は現在検証中ですが、Roon以外の主要ストリーミングサービスに対応(AirPlay、非HDのAmazon music、Tidal、Qubuz、Spotify他)、UPNPも対応です。

他に光SPDIF入力(10M+内部リクロック)、USB入力、10Mクロック入力、HDMI-I2S出力、SPDIF+ワードクロック出力の予定です。RoonやDirettaへはネットワーク側では対応しませんがUSB入力がありますので外部に他社製品と組み合わせてそちらで対応することはできます。その分これらのライセンス費用を削減できますから価格は10万円台前半までに抑えられそうです。既存のDDCや低価格系のUSB-DDCやネットワーク製品よりも高品質かつ高機能を予定しています。

ネットワーク機能については基板メーカー側から詳細仕様や機能の情報提供が最低限で正直こちらもわかっていないことが多いですので万全のサポートにはかなり不安があります。そのためネットワーク対応の簡易基板を先行でキットとして手頃な価格でリリースし、ネットワーク関連の詳細な性能や機能の検証評価を皆様にご依頼するかもしれません。自作系ですと能力のある方はNUCやラズパイなどでネットワークオーディオは需要を満たしているような気もしますが、もしご興味があればテストしていただければありがたいと思っています。

注意:これらはまだ予定ですが確度の高い情報として記載しています。

DAC関連(当面AK4499EX+AK4191を予定)

現在こちらも試作検証中です。特性が安定せず音もまだ万全ではないため、リリースができる見込みはまだまだありません。最終的には万全の仕様、音質をお届けできるようにしたいと考えています。そのためには検討できるすべての可能性(AK4499EXに限らず他の構成を採用する可能性まで)を検証するつもりです。

正直なところですが最新のデジタル段をフル装備した「10Mクロック検証試作用AK4499EQ使用DAC」が現在こちらにある最高音質の仕上がりで、AK4499EXを使った全く同じコンセプトの試作品は音的にも特性的にも完成度が不足しています。まずはこれをクリアできるかどうかが製品リリースのための最低条件と考えています。

AK4499特注DACのアップデート再開

作業者さまの引っ越しに伴う一時停止を解除し再開しています。殆どの方は対応済みと思いますが、まだご希望がありましたら、こちらよりお申し込みをお願い致します。

【受注再開】AK4499本格アップグレードの作業発注

Hypex Nilai500とPurifi 1ET7040SAのパワーアンプについて

Nilai500ですが発売日に購入手続きを行いまして、先日到着したものを組み立てました。非常によくできているキットで組み立ても簡単で使用感もなかなか良いです。

現在評価中で数時間鳴らした段階です。まだ完全にエージングも終わっていない状態ではありますが、初期よりは落ち着いてきたので一旦ファーストインプレッションを投稿します。P952(1ET7040SA)やP502Lの1ET400Aモデルと比較すると高域がだいぶ伸びる印象があります。低域よりも高域のエネルギー感が強いです。そして全体的な雰囲気は静寂感と落ち着きがあります。

ただし高域については伸びと精度はあるものの余計な音を出している印象もあります。Nilai500がこちらのシステムの細かい問題をさらけ出しているのか、それとも実装上のなにか別の問題があるのか、このあたりはエージング後でも傾向に変化がない場合は要検証となりそうです。まだ鳴らしたてですのでもう少し経過を見てから判断します。

Nilai500はおそらくNC400からならアップグレードと感じられる可能性が高いです。背景の透明感、高域のピントの細かさ、粒子の細かさなど、全体の精度は向上していると思います。1ET400Aでも同様の向上がありますのでここからは完全なアップグレードとはならない可能性が高く、比較評価も難しいところです。

Nilai500とこれら製品の比較は気になっている方も多いと思いますので、エージングが完了したと思われる段階になりましたら、空気録音で上記製品との比較ファイルをアップしてみたいと思います。

P952の試聴感想から見る、今後あるべきパワーアンプの展開

非常に残念なのですが、今の時点ではP502Lと比較して圧倒的優位と評価する方が少ない印象です。特に駆動面はP502Lでも十分と評価する方が多いようです。一部制動のし過ぎという意見もありました。高域については意見が分かれており概ねP502Lの方向性のほうが好ましい意見が多く、総合性能的にはP502Lで十分という印象を受けます。要するにP952のような過剰な駆動力を必要としておらず、高域もP502Lの傾向のほうが聞きやすいということのようです。

もちろん全員がそのような印象というわけではないのですが、現在貸出を行ったお客様のケースに限ればトータルではP502Lのバランスがよいという印象が多数派のようです。そしてP952で気になった点ですが高域側の指摘が多いとはいえ内訳はだいぶ意見が分かれているように見えましたので、お客様の好みやシステムとの相性が支配的になっている可能性が高いと現状は判断しています。(この点では一部の方はP952よりNilai500の方向性が適合しそうにも思いました)

もちろんP952のほうが圧倒的に良いという意見もありまして、これはこちらの印象は当方とかなり近いものなのですが、予想よりもこのような意見がかなり少ないのが現状です。この反響は今後のパワーアンプの展開と方向性について考えるきっかけになっています。

P952を必要とするような顧客層に製品の情報が届いていない、そもそもそのような方は少ないなど、色々要因は考えられます。今後のP952の売上次第ですが、もし今回のP952の少数生産でも売れないとなると今後は同じコンセプトのハイエンドモデルを掘り下げていく方向は縮小せざるをえないです。

もちろん少数でもこの方向性のご要望自体はあると思いますので、後継の1ET9040BAについてもご要望があれば少数生産を行うことは考えていますが、この製品の方向性はP502LからP952のさらに延長線上になりそうですので、今回ご試聴でP952が合わなかった方には不要な製品だと思います。このような製品は受注生産でかなり生産を絞る形か、Purifiのリファレンスをそのまま売る形など、リスク回避の方向での展開を検討する必要があります。

すでにClassDも成熟の域になってきていますので、もはや絶対性能の追求よりも、別の付加価値、異なる方向性へのチューニング、好みに寄り添う解釈などが求められてきているのかもしれません。現在は中華系のさらに高特性アンプもより廉価で選択肢がありますし、特性度外視で個性を出していくアンプも固定ファンがいます。同様に既存の有名ブランド品に別の魅力を感じる方もいると思います。

ここから見えてくるのは、Ncore系での素直な性能追求路線やコストパフォーマンスのバランス追求の時代はそろそろ終わりということです。現状のニーズは当面P502LとP952の在庫が十分役割を果たすと予想していますので、より安くまたはより趣味性や所有欲の高いものを求められていくような気がしています。

とにかく従来路線のままでは、大手製品、既存ブランド、海外廉価製品に挟まれて勝負するのは不可能だろうという判断です。

2022/12/22 補足追記:基礎クオリティの曲がり角

書き方として誤解があるかもしれませんので補足を書きます。まずP952の音的な基礎クオリティに問題があるとは思っていません。ですがすでに基礎クオリティが問題を解決しない領域に到達したものと理解しました。

オーディオではよくあるお話だと思いますが、一線を越えた品質領域になりますとシンプルなクオリティ向上のみで問題を解決することが困難になっていくと考えています。それは多くの不完全性の存在が浮き彫りになるからです。そうなったとき必要なのはシンプルな基礎クオリティの向上ではなく、バランスの調整やチューニング的な要因が重要かつ支配的になってくるということです。この帯域での一般的な手段は、アクセサリーやケーブルやセッティング等です。機器の場合は相性の模索という非常に難しい選択肢になります。

昨今低価格帯で基礎クオリティの向上が目覚ましいです。そのため基礎クオリティの問題を抱えている方が少なくなったこと(P502Lのお客様もこのカテゴリです)、これらの要因がより高度な問題解決手段を望む今回の結果につながったと理解しています。

なので次世代のハイエンドに求められるのはおそらく基礎クオリティ向上だけでは不足で、すでに一定のクオリティ条件を満たした環境にあるお客様にとって重要な、「高度な問題解決手段の提供」が必須になると思いました。

ただの基礎クオリティの向上の提示はP952がおそらく最終モデルです。同じコンセプトの後継製品は1ET9040BAを使ったPurifiのリファレンス設計でも十分だと思います。このような製品は海外で安く売られることでしょう。そしてこのような製品はおそらくほとんどの方にとって不要ですし、当社があえて似たような製品を作る意義はもうないという判断になります。

あえて独自設計で次世代パワーアンプを作るなら今後は今までとは全く違うコンセプトで、少なくともいくつかの問題解決手段を取り入れないといけないのではと思いました。ですのでここで書いた内容は決して悲観的な将来ビジョンではなく、今後のパワーアンプ展開における重要なコンセプト変更だと捉えていただけるとありがたいです。

今後の新展開として、Nilai500 mono kitのグループバイを検討しています

上の結論を受けた新しい試みです。今後オリジナル製品以外にこのような展開が可能な場合、こういう選択肢も取り入れていく見込みです。

組み立ててみてわかりましたが、Nilai500のキットは非常によくできており多くの人にすすめられる簡単な組立製品でした。こちらでまとめて購入すれば個別でご購入いただくより安く提供できる見込みですので、次回ロットの3月末までにグループバイ企画を立ててみようと思っています。為替も今より円高になる可能性が出てきていますので、3月は時期的にもちょうどよいと思います。

目安ですが10人以上希望者が集まれば個別で買うより確実に安くできます。こちらのNilai500が落ち着きましたら他のNcore系製品との空気録音比較をアップしますので、そちらを聞いて購入の判断をしてみてください。

当社を通すメリットがあるとすれば、本国から直接個人で買うより安くできること、日本語サポートを提供できること、組み立てにコツが必要な場所の情報を予め提供できること、初期不良や故障の際の交換対応をこちらで代行できることでしょうか(もし余剰在庫があれば在庫品と交換するのでおまたせしません)。

もちろん当社を通すことに抵抗がある方は個別で本国から購入頂いても構いません。なんの制限もないし自由です。ですがその場合はサイト表示の定価+為替手数料+決済手数料+送料+関税がかかりますので表示金額より追加費用が結構かかります。

グループバイの利点は送料と送金手数料を大幅に削減できることと、こちらは法人契約なので数量割引が適用できることにあります。これを適用すれば本国で個人購入するトータル金額比で同等か安い価格でも売れます。上記サポートや手数料などもちゃんと赤字にならずペイできる見込みです。

10M外部クロックのメリット・デメリット、性能上の要件について

先日発表したDDCの外部クロックについて色々ご要望を頂いておりますが、一旦こちらの設計意図や目的、制約や問題についてまとめておきたいと思います。基本的には外部クロックによって何を改善することを意図し、何を目的とするのかです。当社の設計や考え方では性能面だけでなく、オーディオとしての幅や楽しみ方にも関係してくる部分だと思っています。またご質問いただいたSMAコネクタの必要性についてもまとめています。

外部クロック搭載の目的

主に2つです。

  1. オーディオとしての楽しみ方を広げるもの、内蔵のクロック以外を使うことによって音を変える、特定部分を改善する、チューニング要素を提供するものです。
  2. 内蔵クロックのコスト制約を超えた、周波数精度と低周波位相雑音性能の追求を可能にします。

これらが主目的になると思います。特に2は低価格で提供する本体には内蔵できないようなクロックの追加を可能にする選択肢です。また性能の追求だけでなく1のような楽しみ方もできます。製品に音を改良または変化できる選択肢を提供することは、長く楽しめる機器を提供することと同じですのでとても大事なことだと考えています。

1ではケーブルを含め多くの価格帯で多くの選択肢があり、多くの方にとって選べる楽しみがある方法論を提供することが大事です。選択肢が狭く極端な方法論や極端でバランスの悪い性能追求は、ハイエンドならともかく手頃な価格帯の製品では避けることが大事だと考えています。

これらが理由でクロック用SMA端子、SPDIF用BNC端子など、極端に採用例の少ないコネクタの搭載はできるだけ避けたいです。

外部クロックのメリットとデメリット

まず知っておいて頂きたいのは、外部クロックは万能の解決策ではないことです。安易な外部クロック対応、外部クロックの接続はスプリアスや広帯域ノイズが悪化するリスクが高いです。これは既存のDAC製品に外部クロックを入れた場合の測定事例を見ていただければわかると思います。

実際のところ10Mをつけて本当に性能を活かせているDACはほぼ見たことがなく、大抵はどの機種もジッタースカートの広がりは同じ程度のまま、それでいて外部クロックによる余計なスプリアスやノイズフロアが追加されるようなデータばかりです。ジッタースカートが狭くならないということは、外部クロックの本来の売りである中低域の位相雑音性能は改善していないということです。

では外部クロックなど意味がないと思うかもしれませんがそうでもありません。10Mクロックは一般的な測定のFFTでは見えない領域の性能を改善します。

それは周波数精度、超低周波位相雑音(一桁Hzのような領域)です。測定で見えない理由は周波数精度はFFTの測定時間より長周期なのでFFTの測定では不可視ですし、超低周波位相雑音も同様にFFTの窓関数による制約があるため通常の測定方法ではまず不可視領域に入ります。これらが測定でみえない理由です。

ですが周波数精度は周波数カウンターなら測定可能です。少なくともこちらの実験機では他社DDC製品含めて外部クロックを入れると、スプリアスやノイズが付与されたとしても長周期の周波数安定性、いわゆる周波数精度は外部クロックによって明確に改善します。

長らくこれらは音に影響がないと言われていましたが、実際には影響がありました。音質的パラメータとしては音の駆動の安定感や余裕にプラスの効果があります。骨格がしっかりしてビシッとしたタイミングの揃った音がでますし重心も下がります。これは典型的なハイエンド的な音質的パラメータなので、これらが改善することはハイエンド的価値観でまずプラス評価になります。

結局のところ外部クロックでノイズやスプリアスの追加で犠牲になる部分があるわけですが、それによる副作用よりプラス面のメリットがハイエンド的価値観で遥かに好ましい変化なので、外部クロックは肯定的に受け入れられている、これが現状だと考えています。

現在DACで採用されている低位相雑音クロックとこれら高精度クロックはまた違う音の良さがあり、理想は両方の良いところを兼ね備えることです。ですが現実には難しいです。

当社の実装、問題への対策について

理想はA=低位相雑音クロックとB=高精度クロックの性能両立だと書きました。Aはいわゆるフェムトクロック、BはOCXOやルビジウムが代表格です。この性能の両立は簡単ではありません。(Bは低周波位相雑音にも優れるクロックとします)

単体クロック製品についてよく調べてみるとわかることがあります。それはAとBはほぼ両立ができないということです。Aが良いものはBが悪く、Bが良いものはAが悪いことが大半です。しかも最高性能のクロックは大抵10Mなどの低い周波数で、同じモデルでも周波数が上がると急速に低周波位相雑音の性能が低下します。USB-DDCで768kなどに対応すると必要になるのが40M台の周波数ですが、この帯域でAとBに優れるクロック製品はほぼありません。

もう一つの問題は44.1kHz系列のクロックは産業用でほぼ使われていないためか、この系列の高性能クロックは選択肢がありません。事実上特注に近いため費用がかかります。超高額な製品で両立するものもありますが製品価格は100万円近くなる可能性が高いです。結局AとBを両立するクロックの追求はオーディオで最もお金のかかる分野だと思います。

ですが当社が見つけた現在の解決方法は低コストでAとBを両立できる方法論です。詳細はまだ明かせませんが予告している製品価格からわかるように莫大なコストを掛けずに実現可能の見込みです。

現在の期待値性能はオーディオ周波数で10Hzの位相雑音性能は-120dB前後、もう少し上の帯域の位相雑音性能も期待値-155dB以下と低価格OCXOを超える性能です。AとBの観点でどちらか一方ならより良い性能のクロックはありますが高額なものばかりですので、今回ご提供する価格ではほぼベストに近い性能の選択肢だと思います。

今後リリースする当社製品の内蔵クロックはこの基準の性能になりそうます。とはいえ上記のスプリアスやノイズフロアの副作用を含めれば内蔵より良いクロックはありますので、それらを使う選択肢は外部クロック端子という形で提供するわけです。

参考までに当社のIntegrated 250からAK4499特注DACではBを意識したAメインの方法論でBは改善の余地がありました。今後はAを維持した状態でBにより力を入れた設計になります。

スプリアスや広帯域ノイズの悪化はコネクタが原因ではない

この原因はコネクタとは無関係です。悪い設計なら測定値は劣化しますし、良い設計ならBNCでも劣化しません。

様々なクロックオシレータ、設計や伝送方法も試してみましたが、外来ノイズの原因は主にクロック送信側の設計に依存するようです。とくに筐体と電源設計が重要のようで、同じ受信回路でもノイズやスプリアスが追加される製品とされない製品があります。その問題がGND経由でスペクトルとして観測されてしまっているか、もともとのクロック出力自体に余計な成分が付与されているかどちらかでしょう。それならコネクタの性能とは無関係に問題は発生します。

結局外部クロック方式は理想ではない部分があります。それはGHz領域などではなくもっと低い帯域の問題です。なのでSMAでももともとノイズが多い機種で設計が悪いならSMAで性能は改善しないどころか広帯域伝送性能が原因でより悪化するでしょうし、BNCでもよく設計されていれば問題はおきません。信号をトランス経由で絶縁するタイプもありますが完全に問題解決ができないようでDAC出力で劣化が見られました。

結局ノイズやスプリアスの観点で理想伝送を語るなら、外部伝送をやめて内蔵クロックが最善です。クロックを必要とする回路へPCB上で最短接続するなら電源もGNDも変動をはるかに少なくできますのでこれが結局一番問題が少ない方法です。

ただ内蔵できるクロックはコストの制約を受けますので本当に最高のクロックは載せられません。それこそ単体で数十万円~数百万円の部品の世界です。これらは製品価格の大幅上昇となりますので最初から搭載することはできません。

ですがだからといってそれで外部接続を拒否したら発展性がありません。その上を必要とするのが一部の方であってもその選択肢と手段を用意することが外部クロック対応の意義です。

BNCをSMAにして得られる要素

BNCもオーディオ用マスタークロックの伝送なら十分な性能を持っており、SMAとの性能境界は概ね2GHz以上と重要な帯域ではありません。またそれ以降の性能差も緩やかな信号減衰であり強いピークを伴うようなものではないため、GHz帯域の情報を損失なく伝送する用途でなければSMAは不要です。(特性測定の事例は検索すると見つかりますが、転載不許可のページだったので掲載はしません)

もう一つの重要な事実は最高性能クロックで主流なのはクリップドサインであり、矩形波と違って10MHz以上の成分をほとんど含みませんのでBNC帯域で十分なことです。

高性能クロックの大半がクリップドサインという事実が示すのは、クロックの性能と矩形波の正確な伝送はほぼ無関係ということです。相関があるならクリップドサインのクロック性能は低くなるはずですがそうはなっていません。要するにクロックで重要なのは矩形波信号の高調波を正確に伝送すること(SMA端子で得られる要素)ではなく、あくまで基底クロック周波数を正確に伝送することだと解釈しています。

こちらの考え方になりますが、超高速の矩形波を減衰せず伝達することは受信側の設計難易度をあげますし、ケーブル品質にも敏感になります。オーディオではユーザーがどのようなケーブルを使うかわからないため、ケーブルやコネクタの設計が悪ければ周辺機器にノイズを撒き散らすノイズ源となる可能性まであります。

それなら性能に影響しない範囲で不要な帯域を抑えた形で伝送したほうがEMC的輻射の問題の原因とならず、ケーブルやコネクタの依存性も減りますからほとんどの環境で適切な帯域制限は結果が良いのではと考えています。さらにインピーダンスマッチングの要件も低くなります。

さらに気になるのが果たしてSMA端子を付けているオーディオ機器の最終成績が本当に良いのかどうかです。大事なことはクロック単体の性能でもコネクタが何であるかよりも最終性能ではないのでしょうか。いろいろな理由で優位性を主張しても実際にはどこにも成果が公開されていません。例えばBNCからSMAにして性能が改善しているDAC側の測定データは見たことがありません。

ですが当社は今回の設計変更で何が改善したかすでに公開しています。下記のようなジッタースカートのほぼ完全排除がその成果です。ですがほとんどの外部クロック対応DACは宣伝と実態が異なっており、このような性能は実現できていないように見えます。

当方は測定値が全てとは決して思っていませんが、測定の意義やデータの公開は否定しません。ですがそれらを否定しているメーカーが何故かSMAの性能メリットだけ主張するのはあまり整合性が取れていないと思います。

光ブースター完売しました

先日のIntegrated 250に引き続き、完売ありがとうございました!

早速で申し訳ないですが光ブースターの後継品は構想をしています。現在製品ラインナップにデジタル系製品がなくなってしまったのでできるだけ早く製品ラインを補充したいと考えています。そこで光ブースターの後継はより本格的なリクロック対応DDCを考えています。現在開発中の次世代ハイエンド構想の一部を抜き出した製品になります。

確度の高い機能性能は次のような内容です。

  • USB-DDC機能(対応レートは機能面より音質面を優先予定)
  • 外部10Mクロック対応、内部にも低周波位相雑音の低いクロックは搭載予定
  • 光SPDIF入力とSPDIFリクロックに対応
  • リクロックの性能を活かすため、SPDIFはワードクロック出力に対応
  • HDMI-I2S出力対応
  • ACアダプタ仕様

今のところはこのようなイメージです。この製品は大半のDDCと違って光入力がつきます。なので光信号をリクロックして信号品位を改善する機能があります。これにより光ブースターではできなかった領域の音質対策ができます。

さらにハイエンド構想と開発により新しい方法論を開拓できましたので、今後すべてのデジタル製品で10Mクロックのメリットを活かせる設計になる予定です。

あとは確定ではありませんがネットワーク関連の対応を検討しています。現在低価格でAmazon musicから192kを出せるWiim miniがありますが、これと同じ機能を載せたいところです。ですがまだ確定ではないので過剰な期待はないようお願いいたします。ですが最悪ネットワーク対応ができなくても光入力をつけますのでWiim miniのような手軽な製品の音質を大幅に改善することがおそらく可能です。

予定価格は10万円前後を予定しています。本来はハイエンドラインが先と考えていてすぐに発売はできないと思っていますが、未だにIC類が入手しにくい状況(アナログ系とCPU系が難しい)が続いておりますので状況によっては大型の製品より先にこの小型でシンプルなDDCを先にリリースする可能性があります。とにかく手に入る部品で作れるものを作っていくしかない状況です。

Integrated 250完売しました

先日予告しましたこちら、日付改定(値下げ)のタイミングで1分たたずに即完売になりました。ありがとうございました。予想よりあまりにも早く売れてしまったので購入できなかった方はすみません。今後Integrated的なモデルは当面開発の予定がありませんので同等品のご案内はしばらくできない見込みです。

12月よりIntegrated 250の価格改定(半額、値下)します

今回の売上は次世代製品の開発や比較検証のために使用されます。

12月よりIntegrated 250の価格改定(半額、値下)します

WATERFALL Integrated 250

昨今高級オーディオでは大幅な値上げが発表されるケースが多いですが、ここであえて値下げをします。2022/12/01より半額の180000円に変更し、在庫限りの販売/再生産なしになります。期間は特に決めていませんので永続的値下げです。

現在の状況を冷静に判断しますと、T社もDAC一体型かつ低価格なNcore製品をリリースしておりますし、低価格中華製品のDACやアンプの実力もだいぶ上がっております。こちらの製品がそれらより音的に一方的に劣っているとは思いませんが、機能面やスペック面ではもはや優位とはいえない状況です。

ですので現在の市場の状況で満足感をより高めるための価格へと改定したいと考えています。半額であれば上記のような製品群からのスペック的というよりは音的なアップグレードの位置づけとして一定の意義があると考えます。特に内蔵しているパワーアンプはこれら製品と比較しても最も出力が大きい部類になります。

またこの製品をおもちの方は将来的にV2へのアップグレードパスがあります。今の時点ですとV2の価格について確定したことは言えませんが、おそらく今回の値下げ幅に+アップグレード費用しても従来の250の定価以下に収まると思います。なのでこの値下げは単なる値下げというよりV2を従来定価より少し安く購入できる権利のようなものとお考えいただければありがたいです。

V2は半導体不足が解消し必要な部品類が安定して入手できるようになったらできるだけ早く対応したいとは考えています。内容は以前の発表時よりも現在のほうが技術的に進歩していますのでより音的に優れた製品(より進んだクロック的対策、ライン駆動力の改善、HPAの改善、DACチップの更新)をお届けできる見込みです。

以前に定価で購入されたお客様にはご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

近況報告(P952パワーアンプ、DACアップデート関連)

今回の記事は最新情報をまとめたものとなります。各ページでは細かく更新を行っておりますが、記事として一度まとめます。

まずP952パワーアンプはすでに貸出スタートしております。お申し込みはこちらから対応しております。

貸出申し込みページ

貸出の順番、現在の待機状況などはこちらにまとめてあります。まだ身分証をご提示いただいていない場合は身分証未提示の掲載もこちらでさせていただいています。

貸出状況

いただいたご感想などはとくに掲載しておりませんが、現在のところ概ね好評です。一点のみノイズ発生の報告がありP952アンプの不具合疑惑がありましたが、結論としてはアンプ側に問題はなく、再生ファイルに大きなDC成分があったため保護回路が発動していたことが原因でした。その詳細はこちらにまとめてあります。

貸出機不具合まとめ

今回のP952は新しいバランス補正回路を追加しております関係で未知の不具合があるかもしれません。結果として問題なさそうですが少し様子見のために量産を一旦ストップしています。

AK4499特注DACのアップデート

AK4499特注DACもパワーアンプもDCを再生することができますのでファイルにDCがあると場合によっては保護回路が作動してしまいます。そのため上記DC問題に対応したソフトウェアアップデートを行いました。DCカットOn/Off機能を追加しています。また若干の音質改善もあります。

AK4499特注DACファームウェアと更新履歴

音質の改善は次に記載する新しい前段の開発で気づいた改善点を反映したものとなります。おもに細部の描写精度や奥行きが改善しています。大局的には僅かな変化で測定的にも違いはほぼ見えないのですがハイエンド志向ならば無視できない違いになっていると思われます。先日のハードウェアアップデートと合わせていただくとより効果的でわかりやすいと思います。

新型DAC(AK4499EX、前段)関連

まずAK4499EXについては進展ありません。今回のICは日本向けは大手での採用もなさそうですし国内販売はないのかもしれません。とはいえ現時点の進捗だと前段(デジタル受け)の開発のほうが重要な段階なので致命的な影響はないです。しかしこのまま年末以降も入手ができない状況のままだと開発が遅れてしまいそうです。

予想通り中華系メーカーからはすでに新製品が発売されています。もう少し様子見しますが最悪それを購入してチップを剥がすほうが開発は早いかもしれません。とりあえず音の傾向チェックのために該当の中華製品を試しに買ってみるつもりです。剥がして使うまでするかどうかは状況を見て判断します。あとはDigikeyでの一般販売のスタートを待つか中華ルートでの入手を検討する状況ですがどうなるかは不明です。

デジタル受けの前段部の開発は順調です。ほとんどどこにも出かけずひたすら毎日開発をやっています。むしろこちらのほうがAK4499EXより重要だと考えています。今回は全く新しい構成なので新しいIC類ばかりでチャレンジが非常に多いです。そのため独力での開発は相当大変でした。

おかげさまで現在は当初実現したかった機能や性能を一部安定性に疑問なところもありつつほぼ実現できております。例えば開発機で試しているのは次のような内容です。

  • ネットワークオーディオへの対応
  • USB接続を高精度内蔵マスタークロック基準(試作ではOCXOを使用)で動作させる
  • 外部10Mクロックへの対応と、SPDIFなどの不完全な入力信号の揺らぎを外部10Mクロック精度で抑圧
  • 精度の改善のみでなくジッター除去も対応
  • 高精度クロックによるI2S出力、SPDIF+ワードクロック出力による既存DACとの接続性
  • AK4499特注DACと同等の高精度デジタルフィルターと各種DSP処理(アップサンプル、EQなど)

以上の機能が有効です。このうちネットワークオーディオは最終製品でも載せたいです。現行試作機はAmazon除くRoonその他各種サービスに対応していますが、最終的な対応内容は多大なライセンス料がかかりそうな関係でまだ未確定です。

ジッターと揺らぎ除去の測定サンプルはこちらです。

上の画像は現在主流の2桁femto秒スペックのジッタークリーナ使用時の出力です。ノイズフロアは概ねきれいに抑圧されておりますが、まだわずかに裾の広がりが可視化されています。

しかし現在の試作機(下の画像)では広がりが殆ど見えません。このような結果はAD/DA非同期の測定ではほぼ見たことがないです。特に-150dB以下の領域ではかなり難しいです。今回色々な対策をやっていたら結果このようになりました。ジッタークリーナーICやASRC単体ではこの裾の広がりは完全に改善することはできないようです。

現在の仮説ではこのあたりの違いが従来の後付の方法論や光ブースターでは解決できないトランスポート問題のもう一つの重要箇所と考えています。