歪率と音質の関係2
以前こちらの記事にて歪率が最重要課題ではないということを書きましたが、今回は逢瀬が歪率を無視している設計ではないことを示しておきたいと思います。次に示すデータは正式な測定機によるものではないため、完全に正しいデータではなくあくまで目安の歪率にとどまりますが、特定の測定条件に特化して歪率を減らす試みが可能であるという一例だとお考えください。
また共通の注意点として画像のFFTには表示されておりませんが測定系依存の低周波ノイズの影響で+Nは一定より良い数字が出ませんので基本THD表示を元に判断しています。
図1
図1に示したデータは試作DACのアンバランス出力を測定したものです。I/V変換と差動合成にはそれぞれ逢瀬ディスクリートオペアンプを使用しています。このような測定結果は部品の公差、個体差を微調整することで、ディスクリートのアンプを使った場合であっても達成が可能です。もちろんディスクリートオペアンプの内部設計において部品の個体差の影響があっても高いオープンループゲインを稼げるような設計を心がけていますが、最終的な手作業による調整が必須であるのは差動の精度についてはやはり部品の個体差の影響を排除できないからです。
図2
図2は別の試作DACでICオペアンプをI/V変換、差動合成に使用したものです。ディスクリートのほうが優秀であるのは、そもそも測定器そのものに誤差がありその誤差を含めて調整可能なディスクリートの優位性からかもしれません。正確な原因は不明ですが測定器そのものが正式なものではないため正しい測定器で測定した場合は上記と全く異なる結果になる可能性もありえることを断っておきます。
どちらにせよ本測定に限定すれば概ねDACのスペックに近い数字は得られています。ICオペアンプの最大の利点はもともと内部の精度が高く個別での調整が不要のため量産において個体差が少なく安定したスペックを確保しやすいところかと思います。
前回に書いたように歪率による音質差というのは比較的小さいと逢瀬では考えていますが、上記のように決して歪率を無視した設計をしているわけではありません。たとえ音質面で歪率が10%以下の比重であったとしても、逆に言えば10%の重要性はあるわけです。(注意:10%というのは感覚的なたとえ話で実際の話ではありません)ですので、より音質的に重要な対策とトレードオフでない場合であれば、歪率も決して無視をしてよいわけではないと考えています。
もちろん歪率以外にも重要な音質を決める要素は多数あり、全てにおいてバランスよく対策することがトータルの音質のためには重要であるということだと思われます。