NC400を使用されている方の質問に回答します

質問の該当ページはこちらです。あくまで技術的な質問と捉えまして、こちらでは事実のみを回答したいと思います。

https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s1018042791

該当画像が何であるかの説明は下記製品紹介ページから確認が可能です。

WATERFALL Power 502L

Q. ノイズ対策後の画像でも60~70kHz付近にピークがありますが、アース接続に問題があるのではないでしょうか?

アースが理想状態に近いとしても、最終的なノイズの出方は接続元のDAC帯域外ノイズにある程度は依存します。そして当方の設計に問題は有りません。それを説明します。

当社の製品ページにあるサンプル画像で65k付近が大きく上昇している理由は、不適切アースではなく帯域外ノイズの非常に多いDACを接続した状態だからです。当社のDACと接続しているときはこのようにはなりません。あとで4499DACを接続しているときの測定結果を紹介します。

要するに最終仕上がりのノイズはフィルター有無ではなくDACの帯域外ノイズにある程度は依存するということです。P500、P502Lでは確かにノイズ対策回路が入っていますが、音声帯域に影響なく100%を除去しきることは難しいため完全な状態にはなっていません。しかし対策によって帯域内ノイズフロアの大幅な上昇はたしかに防いでいます。その比較参考のサンプル画像でした。

比較の前提条件として、帯域外ノイズの多いDACを使用した比較例だったため、対策後でも完全なクリーンな状態でないのはご指摘どおりです。

では当社の4499DACを接続したときの結果を紹介します。DACの動作状態、パワーアンプ通電時です。また定常ノイズの詳細を見せるために平均化処理をしていることに注意してください。あとで平均化していない比較画像も紹介します。

「なんだ山があるじゃないか!」と思われるかもしれませんが振幅をよく見てください。65kHzの山は-98dBVです。P502Lのサンプル画像と比較すると山は12dB以上低い=レベルは大きく見積もっても1/4以下ということになります。同じパワーアンプですがDACを変更しただけでノイズ全体が大幅に下がりました。

また、参考までにパワーアンプが停止中の結果を貼っておきます。これがこちらの環境での測定限界です。ここで出ているノイズはアンプではなくプローブが拾ったノイズやAC電源経由や空中にあるノイズです。上の画像の結果に出ている細かいノイズの一部は環境ノイズということです。

次に比較のために質問者さまの紹介している「アース問題のない状態」の測定結果が次の画像です。(必要に応じ引用させていただいております)

一見きれいですが、当方の計測と違いノイズフロアが-85dBV前後と高いため、微小成分の大半はノイズフロアに埋もれていて詳細はわかりません。これでは-98dBVの山は見ることができませんし、よく見ると当方のサンプル画像と山の振幅も大差ない(-80dBV前後)ように見えます。

文章で説明してもわかりにくいので、わかりやすく同じスケールで比較した画像がこちらです。青が質問者さま計測、赤が当方のサンプル画像です。

測定が同条件ではないので参考程度になりますが、赤の結果に一方的に問題があるとはいえないように見えます。

さらに4499DACと接続した結果(緑)を入れるとこのようになります。

緑と赤は接続元のDAC以外ほぼ同条件での結果です。この比較ではDACによって大きくノイズフロア自体が変動していることがよく分かります。4499DACは帯域外ノイズが少ないのでノイズフロア上昇が抑えられているわけです。そして緑は測定器の限界に近いレベルです(Integrated 250でも同様)。でも山は下がりますがなくなりません。

ここで一つ補足します。青の質問者さまのノイズフロアが大幅に高い理由はDACが原因ではないと思います。質問者さまはNC400とNC500のノイズスペックの違いではと推測していますがNC400でも本来はこの青よりローノイズです。

1つ目の原因はPicoScopeの製品グレードが違うためと思われます。当方が使用しているのはアナログ帯域用の高SN型なので通常品よりも低いノイズレベルを見ることができます。なので単にオシロの測定限界の差と思われます。もう一つはFFTのサンプル数の差。8192と131kでは見え方に違いが出ます。8192のほうがノイズ位置が高く見えます。

念の為こちらでも8192サンプルに設定して青と緑を比較した画像を作りました。これで青と緑はほぼ同条件ですが、若干青のほうがノイズフロアが低く見える条件(青3.1MHz帯域と緑5MHz帯域で8192サンプル同士のため)です。

このような条件に設定したとしても、依然緑のほうがノイズフロアも低く山の振幅も低い位置にあります。青は山自体がノイズに埋もれて殆ど見えませんが若干盛り上がっているのは確認できます。ですので結論として当方のパワーアンプの設計にアース問題はありません。また山の有無はアースの問題でもDACの問題でもなくNcore自体の特性です。どうぞご安心ください。

65k付近の山の原因考察

NC400、NC500では、理想状態に近いとしても65k付近にノイズフロアが上昇する部分があることがわかりました。ではその原因について考えてみます。

公式のNC500の周波数特性です。これをみると問題付近の帯域=60kHzに周波数特性の乱れがあります。これは何を意味しているでしょうか。本来D級アンプはNcoreも含めて出力にフィルターがあります。フィルターはLCなのでスピーカのインピーダンスカーブの影響で特性が乱れます。まずこれが基本です。

わかりやすい図がありました。こういうことです。(https://sound-au.com/articles/amp-classes.htmより引用)

この周波数特性の乱れを抑えるのがフィードバックの効果です。このフィードバックの量が多いほど変動のないフラットな応答が得られます。普通のD級アンプはフィードバック量が少ないから周波数特性が乱れるということです。その点でNcoreは音声帯域周辺で高いフィードバックを謳っていますが、こちらがNcore原理のループゲイン特性になります(Ncore Technology White Paperより)。

このゲイン分エラーを補正する能力があるということです。これは歪やノイズを抑える能力そのものです。10-20kHzで高いゲインを示しそこから周波数が上がるごとに急激に補正能力が下がります。そして70kHz付近に一つのゲインの谷がありその後緩やかに上昇と下降をしていきます。そして0dBとの交点付近が発振周波数です。

この70kHzのゲインの谷こそ、周波数特性の乱れとノイズフロアの上昇の原因ではないでしょうか。この帯域はノイズを抑える能力と歪を抑える能力が低いのは原理段階で示されていました。ここから判断すると、ノイズフロアの山の原因はNcoreの原理に理由があるように見えます。そうするとNcore採用の全ての製品に共通する傾向ということになりそうです。

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