AK4497の実験

ご報告が遅くなりましたが、AK4497の実験ができましたので簡単にご報告です。ICは代理店様より取り寄せいたしました。取り急ぎの取り寄せに対応していただいた代理店様にお礼申し上げます。

同一プラットフォームでの音質の比較

現在のところAK4497はやや古い世代のDACチップ差し替えプラットフォーム基板上での実験なのですが、アナログ回路、デジタル回路ともにAK4495等と共通の状態ですとチップ単体では大幅な音質向上というほどの差はないようです。もちろん現時点では測定特性に課題もありますから、万全といえる状態ではないので真のポテンシャルがきちんと発揮できている状態ではないと思っています。

このようにまだ改良の余地は残しておりますが、とりあえず現時点での旭化成DAC同士の違いを述べるなら次のような印象です。

  • AK4490:細身で荒さのある音、若さを感じる方向性
  • AK4495S:重心が低く、どっしりとした安定感、高級感がある音
  • AK4497:キレがあってレンジが広く、無駄を省き洗練された音

同じ条件同士で比較するとこのような特徴があります。しかしこの比較に使用した実験用プラットフォームは世代の古い基板なので、最新アップデートを施したAK4495Sと比較してしまうと、最新世代AK4495Sのほうが基礎的な音質は良く、古いプラットフォーム上のAK4497にはそこまでの優位性はないようです。現時点では空間の広さ、分離の良さについては最新世代プラッフォームのAK4495Sのほうが良いです。IC単体の音質差はその程度の差で、やはり周辺回路の設計のほうが重要だということを裏付ける結果になりそうです。

それでもAK4497が唯一上回る点がありまして、それは音数が多い時の分離の良さと立ち上がりの正確さです。音数が少ない時は最新AK4495Sが総合的に優位ですが、大音量かつ大編成の瞬間だけはAK4497のほうが音の収束と立ち上がりについて優秀に聞こえました。同じプラットフォーム上で比較するとAK4495Sでは大編成+大音量の時にやや大雑把なところがあります。両者ともに小編成、小音量のときにはそのような傾向はありませんでした。

逢瀬がAK4497に期待していたのはICを交換することによる音質差ではなく、AK4497世代の内部仕様変更によってもたらされる周辺アナログ回路の改良が主でした。この仕様の変更により周辺アナログ回路上で今までどうしても解決が難しい課題を改善できたので、その分の音質向上は大きいのではないかと期待しておりました。しかし現在のところ予想していたより差は大きくなさそうという結果でした。もちろん違いは有るはずなので、もしかしたら今回AK4497用に変更したアナログ回路をAK4495、AK4490と同じようにしたら、上記のAK4497の優位性もほとんど無くなるかもしれません。

ともあれまだ実験をスタートしたばかりですので、もう少しAK4497のポテンシャルを引き出す方法がないかじっくり検討してみたいと思います。

今後の開発方針につきまして

今後リリース予定の正式版ハイエンドDACでは、ES9038かAK4497採用の予定で考えております。ES9038が圧倒的に優れている場合にはES9038採用の可能性もありますが、同等ならAK4497になる予定です。どちらにせよベストをつくすためにES9038も最終選定自体は行いますが、DAC素子の世代変更自体は重要な改良点ではありません。

逢瀬ハイエンドDACのもっとも重要な変更点は現在の基板設計のボトルネックと、ケース設計の課題を全面的に見直し一新することが最大の改良点になります。現時点でわかっている音質的な課題に対しては大幅な設計変更が必要ですので、この部分について全面的に対策を施す予定です。なので逢瀬ハイエンドDACは他社の最新世代DAC素子搭載の製品リリースより確実に遅れます。

今後開発をすすめる正式ハイエンドDACでは、AK4495Sから飛躍できるような明確な音質差を目標にしています。そのため新しいICが発売されたからといって急いでICを差し替えただけの新機種販売は予定しておりません。

またAK4495S-DACの4497アップグレードも予定しておりません。IC単体のアップグレードより現在アナウンス中のOCXOオプション+電源ユニットのアップグレードのほうが音質的メリットはずっと大きいと判断しております。これは確実なお話ではないですが、おそらく最新世代のES9038を載せただけの平凡な設計のDACならば、現世代のAK4495Sでも十分対応できると予想しています。DACは世代とスペック競争だけではなくて、やはりトータルでの設計によって音質が決まるからです。

以上のように、ICの世代交代ではなく確実な設計の改良と対策による音質向上をもって、真のハイエンド製品として完成度を高めたうえでのハイエンド製品リリースとしたく思います。優先すべきはリリースの速さではなく、真に最高の音質の製品を作ることです。逢瀬は目先の利益は追求していません。取り急ぎICのみ差し替えてリリースを急ぐことは可能ですが、それが顧客にとって本当にメリットが有るかと考えると、それだけの為に高額な費用を出していただけるような違いは無いことを上記のような実験によって確認しています。

以上のように、基礎の設計から見直しするというのが逢瀬のハイエンドDAC最大の進化点です。ICはおまけ程度の変更でしかありません。

 

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

six − 4 =