Ucdの独自カスタマイズについて – その1

もし未見の方は、まずは逢瀬がクラスDアンプを選んだ理由の記事を御覧ください。

逢瀬で採用しているクラスDアンプであるUcdモジュールは、もともとのデフォルト状態であっても特性は十分ですが、オンボードのICオペアンプバッファとレギュレータの質は十分とはいえません。そこでWATERFALL Compactではこの部分をオリジナルのディスクリートバッファアンプと電源回路Refine Unitに置き換えています。これにより分離とキレにおいて数段優れた音質として改善させしています。

ここまでは製品情報でも簡単に触れている部分ですが、ではこのディスクリートアンプ、そしてRefine Unitとは具体的にどのようなものか、何が優位性なのか、ということについてもう少し掘り下げて書いてみたいと思います。

カスタマイズその1…独自ディスクリートオペアンプによるバッファアンプ

Ucdアンプのコアはフルディスクリート構成であることは前回お伝えしたとおりです。Ucdのパワーアンプ部はIC=集積回路を使用しない個別素子によるアンプ回路であるということです。しかしUcdのパワーアンプ部はそのままではゲインが低いこと、入力インピーダンスが低いこと、これらの特徴があります。そのため汎用的なパワーアンプとして仕上げるためには、入力にもう一段バッファアンプを入れることが必要であり、これによりパワーアンプとして十分なゲインと入力インピーダンスの高さを確保しているのです。

ですのでこのバッファアンプのクオリティが音質に与える影響は非常に大きいものがあります。アンプの半身はこのバッファアンプといっても過言ではありません。はっきり言ってデフォルト状態ではUcdにとって十分なものではありません。使用されているのは今となってはやや古い設計となるICオペアンプである5532です。採用例も多く特性面から言えば特別悪いICではないものの、Ucdアンプの素性からするとトータルの音質はこの5532によって制限されているといってもいいような状態といえるでしょう。

そこで逢瀬ではこのボトルネックを改善するため独自のディスクリートバッファアンプを開発しました。17の能動素子を組み合わせた高いオープンループゲイン(動作条件により120dB~140dB程度)、FET入力でありながらローノイズ(約3nV/√Hz)、低バイアス電流(約1nA)なアンプであり、通常のICオペアンプと同様NFBを大量に掛けて特性を確保する設計となっています。また入力回路にはFET+カスコードブートストラップ回路を使用しているのでアンプの入力段として最適なハイインピーダンス入力に強い、特にバッファアンプ用として安定した性能を確保しやすい設計としています。

ではなぜディスクリートアンプを採用したのでしょうか。現代においてICオペアンプで特性上優れた製品はいくつも存在します。それで十分ではないかというのは当然の疑問だと思います。

しかし耳で比較した結果によれば、どれほど優れた特性のICであってもディスクリートオペアンプとICオペアンプの間には、原因は不明ですが超えられないベールのようなものがあります。逢瀬で実際にオペアンプの特性を測定し比較した結果によれば、特性の優れていないディスクリートオペアンプであっても、最高特性のICオペアンプより、音質上で言えばクリアで分離のよい音=逢瀬にとっての高音質であることがわかっています。測定特性以外による音の変化、その理由ははっきりしていませんが、様々な実験結果からの仮説はいくつかあります。

ここから先は厳密な理論や検証のとれた結果ではないことを断っておきますが、仮説として現在逢瀬が有力視しているのは配線による音質差です。まずディスクリートではGND、電源、これらの導体は銅線であり、絶縁は空気やレジスト基板です。それに対してICというのは半導体の上にすべての回路が入っています。半導体は導体や絶縁体になったりするので、このような性質を利用することによりICとして様々な複雑な回路を形成することが可能なわけですが、便利な反面、半導体は絶縁体としても導体としてもディスクリート構成に比べて不完全なことが原因ではないかということです。

オーディオでは電源ケーブルや信号ケーブルを変えることで音が変わりますが、銅線、銀線などで音が変わる世界ですから、ICによる音質変化は信号・電源ケーブル、シールドをシリコンに置き換えた変化のようなものではないかという話です。思えば新日本無線のMUSES01、02ではICの足に銅を使用していました。これが耳による選定ならばこのような対策が無効だとは思いません。技術系の方からは何かと物言いの入りやすいMUSESシリーズですが、もしかしたら半導体上の配線による音質劣化を少しでも和らげようという試みだったのかもしれません。後継の8820、8920は足が銅線ではなかったように記憶していますので内部でも色々と音質上の対策がされているのではないかと思います。

脱線しましたが、WATERFALL Compactで採用されているディスクリートオペアンプによるバッファは、Ucdの本来の実力、音質を取り戻すために必要と判断し採用したものだということです。逢瀬ではこのようなカスタマイズを一つ一つ手作業で行なっています。

もう一つのカスタマイズ、電源=Refine Unitについては次回以降の記事にて触れたいと思います。

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