Ucdの独自カスタマイズについて – その2

今回は電源の音質への影響についての内容です。

電源による音質への影響はよく言われている内容なのですが、開発を進めていくと電源が当初想像していたよりもはるかに大きな影響を与えていることがわかります。その理由を考えてみるとすべてのアナログ信号は電圧によって表現されており、グラウンドや電源電圧の変動は間接的に信号自体の変動へとつながります。ですから電源回路の重要性の高さは信号回路と比較して決して劣ることない理由も伺えるかと思います。ですから理想的には電源は信号と全く同じレベルの慎重な対策を行うべきでしょう。

電源の変動を直接制御するのは電源回路の役割です。その電源回路に一般グレードのICを使うことは音質への対策として全く不十分であると逢瀬では結論づけました。そのため逢瀬のラインナップでは独自の電源回路Refine Unitを必ず搭載することにしています。

「Refine Unit」について

Ucdのデフォルト状態ではオンボードにある簡易電源回路によるレギュレータがバッファアンプの電源を供給しています。逢瀬ではこのレギュレータによる音質に与える影響が大きいと判断しています。特にスイッチング電源を使用した場合に劣化が顕著であり、デフォルトのレギュレータにスイッチング電源を組み合わせると大きく音質が損なわれてしまいます。具体的には高域が荒くなり繊細な表現が大雑把に感じられてしまいます。これらは質の劣るクラスDアンプの特徴でありわざわざUcdを使う意義がありません。

そこでWATERFALL Compactではそのような劣化を防ぐために独自のレギュレータである「Refine Unit」を独自の基板上に搭載しディスクリートバッファアンプと組み合わせることにしました。これによりスイッチング電源と組み合わせた場合であっても音質の劣化はトランス電源と比べはるかに減少し、結果としてトランス電源と同レベルといえる音質を確保しています。(トランス電源とスイッチング電源の音質傾向は厳密には異なるので完全な優劣にはなりませんが)

Refine Unit自体はICオペアンプをエラーアンプとして使用したハイゲインのレギュレータとなります。その基準電圧はローノイズ電圧リファレンスであり、ICオペアンプはこの基準電圧をもとに出力電圧を常に監視し、その高精度エラー訂正能力によって電圧を常に理想状態に保ちます。その性能はICオペアンプと基準電圧の品質が肝となります。ICオペアンプを使用することにより単なるローノイズ電源というだけでなく変動を強力に押さえに行く動作が特徴です。

しかし回路技術以外に重要となってくるのは、電源回路に使うパーツの組み合わせによって実際の音が大きく変化してしまうという点です。これは単なる性能だけで測れる部分ではなく、耳によるテストと選別が必須です。実際Spiceなどの回路シミュレータで電源回路の性能を検証すると十分な性能というのは比較的容易に達成出来ますが(下の図1、図2はその結果)、シミュレーションと実際では大分異なる部分も多いですし、音質的には単なる基準や目安にしかならないということになります。耳での評価になるとそのままの理屈だけの回路では音質的に素晴らしいものであるとは断言出来ません。もちろん三端子レギュレータ等と比較すれば十分高音質と言える領域にはあるのですが、更にここからパーツの組み合わせや定数を吟味することが必要で、それによって更に「逢瀬らしい個性を乗せた高音質」とすることが重要だと考えています。

このディスクリートアンプ+Refine Unitの搭載によりUcdの本来の音質を取り戻し、さらに逢瀬の個性を乗せたクラスDアンプ。それがWATERFALL Compactとなります。


図1.単段レギュレータによるノイズ除去シミュレーション結果


図2.多段レギュレータ+フィルタによるノイズ除去シミュレーション結果

 

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