Hypex Nilai500とPurifi 1ET7040SAのパワーアンプについて

Nilai500ですが発売日に購入手続きを行いまして、先日到着したものを組み立てました。非常によくできているキットで組み立ても簡単で使用感もなかなか良いです。

現在評価中で数時間鳴らした段階です。まだ完全にエージングも終わっていない状態ではありますが、初期よりは落ち着いてきたので一旦ファーストインプレッションを投稿します。P952(1ET7040SA)やP502Lの1ET400Aモデルと比較すると高域がだいぶ伸びる印象があります。低域よりも高域のエネルギー感が強いです。そして全体的な雰囲気は静寂感と落ち着きがあります。

ただし高域については伸びと精度はあるものの余計な音を出している印象もあります。Nilai500がこちらのシステムの細かい問題をさらけ出しているのか、それとも実装上のなにか別の問題があるのか、このあたりはエージング後でも傾向に変化がない場合は要検証となりそうです。まだ鳴らしたてですのでもう少し経過を見てから判断します。

Nilai500はおそらくNC400からならアップグレードと感じられる可能性が高いです。背景の透明感、高域のピントの細かさ、粒子の細かさなど、全体の精度は向上していると思います。1ET400Aでも同様の向上がありますのでここからは完全なアップグレードとはならない可能性が高く、比較評価も難しいところです。

Nilai500とこれら製品の比較は気になっている方も多いと思いますので、エージングが完了したと思われる段階になりましたら、空気録音で上記製品との比較ファイルをアップしてみたいと思います。

P952の試聴感想から見る、今後あるべきパワーアンプの展開

非常に残念なのですが、今の時点ではP502Lと比較して圧倒的優位と評価する方が少ない印象です。特に駆動面はP502Lでも十分と評価する方が多いようです。一部制動のし過ぎという意見もありました。高域については意見が分かれており概ねP502Lの方向性のほうが好ましい意見が多く、総合性能的にはP502Lで十分という印象を受けます。要するにP952のような過剰な駆動力を必要としておらず、高域もP502Lの傾向のほうが聞きやすいということのようです。

もちろん全員がそのような印象というわけではないのですが、現在貸出を行ったお客様のケースに限ればトータルではP502Lのバランスがよいという印象が多数派のようです。そしてP952で気になった点ですが高域側の指摘が多いとはいえ内訳はだいぶ意見が分かれているように見えましたので、お客様の好みやシステムとの相性が支配的になっている可能性が高いと現状は判断しています。(この点では一部の方はP952よりNilai500の方向性が適合しそうにも思いました)

もちろんP952のほうが圧倒的に良いという意見もありまして、これはこちらの印象は当方とかなり近いものなのですが、予想よりもこのような意見がかなり少ないのが現状です。この反響は今後のパワーアンプの展開と方向性について考えるきっかけになっています。

P952を必要とするような顧客層に製品の情報が届いていない、そもそもそのような方は少ないなど、色々要因は考えられます。今後のP952の売上次第ですが、もし今回のP952の少数生産でも売れないとなると今後は同じコンセプトのハイエンドモデルを掘り下げていく方向は縮小せざるをえないです。

もちろん少数でもこの方向性のご要望自体はあると思いますので、後継の1ET9040BAについてもご要望があれば少数生産を行うことは考えていますが、この製品の方向性はP502LからP952のさらに延長線上になりそうですので、今回ご試聴でP952が合わなかった方には不要な製品だと思います。このような製品は受注生産でかなり生産を絞る形か、Purifiのリファレンスをそのまま売る形など、リスク回避の方向での展開を検討する必要があります。

すでにClassDも成熟の域になってきていますので、もはや絶対性能の追求よりも、別の付加価値、異なる方向性へのチューニング、好みに寄り添う解釈などが求められてきているのかもしれません。現在は中華系のさらに高特性アンプもより廉価で選択肢がありますし、特性度外視で個性を出していくアンプも固定ファンがいます。同様に既存の有名ブランド品に別の魅力を感じる方もいると思います。

ここから見えてくるのは、Ncore系での素直な性能追求路線やコストパフォーマンスのバランス追求の時代はそろそろ終わりということです。現状のニーズは当面P502LとP952の在庫が十分役割を果たすと予想していますので、より安くまたはより趣味性や所有欲の高いものを求められていくような気がしています。

とにかく従来路線のままでは、大手製品、既存ブランド、海外廉価製品に挟まれて勝負するのは不可能だろうという判断です。

2022/12/22 補足追記:基礎クオリティの曲がり角

書き方として誤解があるかもしれませんので補足を書きます。まずP952の音的な基礎クオリティに問題があるとは思っていません。ですがすでに基礎クオリティが問題を解決しない領域に到達したものと理解しました。

オーディオではよくあるお話だと思いますが、一線を越えた品質領域になりますとシンプルなクオリティ向上のみで問題を解決することが困難になっていくと考えています。それは多くの不完全性の存在が浮き彫りになるからです。そうなったとき必要なのはシンプルな基礎クオリティの向上ではなく、バランスの調整やチューニング的な要因が重要かつ支配的になってくるということです。この帯域での一般的な手段は、アクセサリーやケーブルやセッティング等です。機器の場合は相性の模索という非常に難しい選択肢になります。

昨今低価格帯で基礎クオリティの向上が目覚ましいです。そのため基礎クオリティの問題を抱えている方が少なくなったこと(P502Lのお客様もこのカテゴリです)、これらの要因がより高度な問題解決手段を望む今回の結果につながったと理解しています。

なので次世代のハイエンドに求められるのはおそらく基礎クオリティ向上だけでは不足で、すでに一定のクオリティ条件を満たした環境にあるお客様にとって重要な、「高度な問題解決手段の提供」が必須になると思いました。

ただの基礎クオリティの向上の提示はP952がおそらく最終モデルです。同じコンセプトの後継製品は1ET9040BAを使ったPurifiのリファレンス設計でも十分だと思います。このような製品は海外で安く売られることでしょう。そしてこのような製品はおそらくほとんどの方にとって不要ですし、当社があえて似たような製品を作る意義はもうないという判断になります。

あえて独自設計で次世代パワーアンプを作るなら今後は今までとは全く違うコンセプトで、少なくともいくつかの問題解決手段を取り入れないといけないのではと思いました。ですのでここで書いた内容は決して悲観的な将来ビジョンではなく、今後のパワーアンプ展開における重要なコンセプト変更だと捉えていただけるとありがたいです。

今後の新展開として、Nilai500 mono kitのグループバイを検討しています

上の結論を受けた新しい試みです。今後オリジナル製品以外にこのような展開が可能な場合、こういう選択肢も取り入れていく見込みです。

組み立ててみてわかりましたが、Nilai500のキットは非常によくできており多くの人にすすめられる簡単な組立製品でした。こちらでまとめて購入すれば個別でご購入いただくより安く提供できる見込みですので、次回ロットの3月末までにグループバイ企画を立ててみようと思っています。為替も今より円高になる可能性が出てきていますので、3月は時期的にもちょうどよいと思います。

目安ですが10人以上希望者が集まれば個別で買うより確実に安くできます。こちらのNilai500が落ち着きましたら他のNcore系製品との空気録音比較をアップしますので、そちらを聞いて購入の判断をしてみてください。

当社を通すメリットがあるとすれば、本国から直接個人で買うより安くできること、日本語サポートを提供できること、組み立てにコツが必要な場所の情報を予め提供できること、初期不良や故障の際の交換対応をこちらで代行できることでしょうか(もし余剰在庫があれば在庫品と交換するのでおまたせしません)。

もちろん当社を通すことに抵抗がある方は個別で本国から購入頂いても構いません。なんの制限もないし自由です。ですがその場合はサイト表示の定価+為替手数料+決済手数料+送料+関税がかかりますので表示金額より追加費用が結構かかります。

グループバイの利点は送料と送金手数料を大幅に削減できることと、こちらは法人契約なので数量割引が適用できることにあります。これを適用すれば本国で個人購入するトータル金額比で同等か安い価格でも売れます。上記サポートや手数料などもちゃんと赤字にならずペイできる見込みです。

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Hypex Nilai500とPurifi 1ET7040SAのパワーアンプについて” に対して7件のコメントがあります。

  1. r より:

    3月末のグループバイで希望者が集まった場合、第2回目の募集をその後行う可能性はありますか?

    1. ause より:

      第一次のグループバイで予定人数を上回った場合はある程度の余剰在庫を持つ予定です。人数が多ければ余剰在庫も増えます。そしてその在庫はショップの常設在庫にしますので、それ以降の購入希望の方はこちらを購入する選択肢があります。

      ですがご希望のタイミングより前に在庫が終了してしまった場合は、再度ある程度まとまった人数が集まってから仕入れを行う形になります。

  2. 黒虎 より:

    今回の記事を読むと、パワーアンプというかスピーカーオーディオだとパワーアンプ等の各コンンポーネント単体の性能以外の環境要因が多すぎるかなと思いました。
    ヘッドフォンオーディオだと例えばDAC+ヘッドフォンアンプの複合機なら、製品単体以外の環境要因が少なくなるのではとも思います。
    ただ、DAC+HPAも廉価なモデルは多数あり、ハイエンドだとどこまで需要があるかという戦略的な話になりそうですね。

    1. ause より:

      性能以外の環境要因が多すぎるのはその通りかと思います。ですがIntegrated製品のような外的変動要因を極限に減らす戦略は以前に失敗でしたので今後は検討していません。試聴サンプルとしてはいいですが製品としては厳しいです。

      失敗の理由としてはやはり将来性やチューニング要素の少なさでしょうか。結局楽しみや拡張性の少なさは選ばない理由ですし、Integrated製品は買い替えの重さが致命的問題です。

      要するによほどの強い理由がなければIntegrated製品への買い替えは発生しないと考えます。大抵の場合はより魅力的な既存ブランド製品を買うのではないでしょうか。基本的に皆様大きな機器の入れ替えはあまり積極的ではないはずですから、どうしても単体コンポーネントが選ばれやすいと思います(当社のような零細ブランドなら尚更)。

      なので当社が今後手掛けるべきは単体コンポーネントの柔軟性の向上だと考えています。例えばヘッドフォンアンプで言えばボリュームなしのアンプのみの構成かつアンプの特性を柔軟に変更できるような製品、となるでしょう。逆に決してやるべきでない製品は設定パラメータのないDACボリューム一体型HPAです。

      ただしこれは一例であってヘッドフォンアンプ自体やるつもりはなく、DDC、ハイエンドDAC、Integrated V2より優先順位は低いです。

      1. 黒虎 より:

        以前の製品構想にヘッドフォンアンプがあったと思いましたので、やるつもりがなくなったというのは少々意外でした。現在は、スピーカーオーディよりヘッドフォンオーディオのほうが売れやすいとも思うからです。ただ価格設定による客層のターゲットによっても変わってくる話ですね。メーカーによってはDACにHPA基板またはプリ基板の追加をオプションにしたりもしています。拡張性となると単体製品が確かに一番ですね。

        1. ause より:

          ヘッドフォンアンプの構想が消えた理由はいくつかありますが、部品の入手困難状態と市場の成熟でしょうか。以前に開発していた製品の部品が未だ入手困難かつ、その間にだいぶ市場が成熟しているように感じています。

          また盛り上がっているのはイヤホン市場であってハイエンドヘッドフォン市場ではないように思います。イヤホン向けは既存のブランドが半分据え置きのような製品を出してきており、イヤホンユーザーは彼らが知っているブランド品以外はアンテナを伸ばしていないように見えます。そして当方もイヤホン自体ほとんど使用も調査もしていないためユーザーの趣向やニーズもよくわかりません。

          ヘッドフォンアンプはおそらく既存の製品と比較して安く良いものを出せるとは思いますが、今の市場に安くて良いヘッドフォンアンプのニーズがまだ有るのかなんとも言えません。今もハイエンドなヘッドフォンを追いかけるような方はすでに一線を越えるアンプ製品を購入済みに見えます。そこに安くて同等の製品が出ても買い替えはしないでしょう。

          それならば未解決なデジタルの問題を解決するほうが両方の市場に恩恵があり、多くの人にとって利益がありそうです。

          1. ause より:

            もう一点こちらについですが、
            >DACにHPA基板またはプリ基板の追加をオプションに
            やるかどうかは未定ですが、HypexのDIY-preamp kitに追加オプションをこちらで提供できないかは考えています。

            逆に自社設計の製品は今後内部の機能が増えそうですから、ハードウェアオプション的な設計を避けて、できるだけ完結した完成品で出したいところです。うちの規模だとハードを分けて在庫も別で管理しソフトもそれらを認識して動作を分けるみたいな手間とコストに対し、ハードウェアを少し削減するコストが全く見合いません。(大量生産なら開発コスト<量産コスト。少数生産では逆です)

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