スピーカの改良と測定を行いました

前回問題点が2つ明らかになったのが今回の改造のきっかけです。1つめの問題は低域のTHD悪化です。測定上明確に箱の共振が残っていたので、それがTHD悪化の原因のようです。その判断の理由はユニットに近接して測定するとそのような問題がないことです。

この問題に対応するには大幅な改造が必要でした。今回行ったのは次の2点です。

  • 箱の内部にケースの振動を抑えこむため複数本の支柱を追加する。支柱も振動しないよう対策を行う。
  • 吸音材とアルミケースの間にブチルゴムを貼り付け振動対策を行う。

一番大変だったのは重量のあるスピーカなので倒して作業が出来る位置に移動させることです。上記の対策を行い叩きながら共振が殆どなくなったことを確認し、その後再び組み直してもとの位置に設置し直します。かなりの肉体労働です。しかしその甲斐もあって上記の対策後はケースを叩いてもほとんど鳴きはなくなりました。完璧に消し去ることは出来ていませんが相当良くなったのは間違いありません。これで低域のTHD特性は改善しました。

2つ目の問題はF特。2k-7kの間で山と谷ができていました。この原因はアルミ製のツイータに追加で取り付けたリングが原因でした。ツイータの周囲にわずかでも物があるとその影響でF特に測定ではっきりと分かる影響が出るようです。これは単純にリングを外すことで、この問題がクリアされました。しかし外見的にはリングがついているほうが良いので対策は考えたいところです。

そして最終的に出来上がった状態で測定をしなおししました。

  • 測定マイク:AUDIX TM1
  • 測定ソフト:ARTA
  • DAC、パワーアンプ:逢瀬Integrated+未公開パワーアンプを使用
  • ADC:E-mu 0404 USB

測定はツイータ軸上1mの位置です。ただし部屋は無響室でなく、今回はレベルを厳密に合わせていないので正確な測定ではありません。あくまで目安として判断してください。きちんとした測定はそのうち行いたいと思います。

図1.スピーカの周波数特性と二次三次高調波

周波数特性のグラフだけで見ると超低域までそれなりにフラットに見えます。85Hz付近の谷は部屋の定在波が原因です。100Hz以下の低域は定在波の影響を大きく受けるので通常の部屋ではどうしても凸凹は大きめになってしまいます。

THDについては100-200Hzで急激に上昇する現象はなくなりました。ほぼ全体域で1%を下回ることが出来たのでひとまず測定上問題は少ないSPになったと言えそうです。ただし防音室ではありますが測定上の在留ノイズが大きいので正確なスピーカのTHDを計測するためにはもう少しS/Nを高めることが必要になりそうです。しかし一般環境で低音の暗騒音を消すのは相当に難しそうです。

肝心の音の変化ですが、リングによる周波数特性のディップ解消によって、今までこのスピーカ特有の個性と思われていた中高域にあった面で迫ってくるような圧迫感がなくなりました。非常に優しい音が出るようになり空気感がかなり出るようになりました。以前はふわっとした音があまり出なかった印象だったのですが、この改善によってジャンルをより選ばなくなったのは間違いありません。しかしその分「面で押す力強さ」は減退しました。

低域の共振対策はほぼ全域で副作用なしの高音質化だと思います。いままで振動にエネルギーを奪われていた音がストレートに前に出てくるようになりました。現在の状態と比較してしまうと、以前は贅肉がついていた音であり、今はかなり引き締まりクリアでパワフルになった印象を受けます。低域の量感は若干減りましたが量は既に十分です。そして低音のレンジは下に更に伸びたように感じました。これは丁度アンプのダンピングファクターを上げた時の音の変化に似ています。

この2つにより音は相当変わったと感じました。測定上の問題はほとんど解消したのでグリルのデザインなど、此処から先は外見面での改良がメインとなりそうです。

図2.測定環境のノイズフロア(注:1kサイン派が入っています)


図3.累積スペクトラム(擬似無響室測定)


図4.インパルス応答(7ms以降の波形はルームの反射によるもの)

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