デジタル製品の開発状況と今後の予定
まだ右手が万全ではない状況ですが、PC操作関係は大分支障なくできるようになってきました。最近はNilai500関連を除きますと、開発と在集を進めています。そこで一旦現在の最新情報、今後の見込みについてご報告したいと思います。
仮称NU-DDCについて(NU=Network&USB)
半導体不足で開発中断となったデジリコの実質的な後継製品でコンセプト変更版になります。実際の機能や性能は当時の構想時より大きく改善されていますが名称は完全変更となりました。理由は当初のコンセプトが実現困難のためで、より現実的でわかりやすく妥当な名称になりました。
必要な部材が概ね集められそうな状況となりましたので正式に部材を集めて量産の準備と設計を進めている段階です。残念ながらデジリコ開発時よりも電子部品類の価格が大幅に高くなってしまっていますが、できる限り音質&性能を維持しながらコストを維持できるように設計と部品選定を進めています。
この製品のメインターゲットはMutec MC3+USBやSingxer SU-2のような製品をお使いの方になります。この帯域の製品から音的または機能的なアップグレードの提供とできるように努力いたします。
現在は筐体レイアウトデザイン、基板設計、重要部材の取寄を順次進めています。怪我の前に最初期の試作機も完成しており現在はリストアップしている80%程度の機能はすでに実現済です。
そこに以前の記事のコメントで頂いた要望を再度整理し、機能や端子をスペースの限界まで追加したものが次の最終候補の設計になります。
主な接続能力
- USB機能 XMOS 768kHz/DSD512/DoP256対応(RoonはUSBで対応可能)
- 10M外部クロック機能 50ΩBNC端子 低周波位相雑音&周波数精度リファレンスとして使用
- HDMI-I2Sの入出力対応 入出力ともにPS audio/Gustard互換切替、768kHz/DSD512/DoP256対応
- ネットワーク対応 AirPlay2/DLNA/UPnP/Amazon music(非HD)/Qubuz HD/Spotify/Tidal Hifi/Deezer
- 動作レート自動追従の高精度ワードクロック/22-24MHzクロック出力機能 75ΩBNC端子
- SPDIF出力機能 RCA端子 DoP出力対応
- ファームアップ用USB端子が背面端子となり従来のようなケースの開封が不要に
特徴的な機能
- SPDIF含め、すべての入力に対するリクロック。マスタークロックの周波数精度を10Mクロック基準へ改善
- PCM768k/DSD512を上限に任意のレートへのDSD、PCM相互変換機能
- 上記機能を生かした、DSDtoPCM変換+自動上限レート制限機能(古いDACへの対応やSPDIF伝送への最適化)
- 入力側はDSDFlagピン不要でHDMI-I2S入力のDSD/DoP自動認識、HDMI-I2S出力へのDSD-Flag付与
- 入出力で異なるHDMI-I2S接続設定に対応。HDMI-I2S接続の相性問題の改善
ご要望があればファーム変更によって以下のような機能も実現可能です。
- ワードクロック端子から特殊な周波数の同期クロック出力機能
- 10MHz以外のリファレンスクロック周波数への対応
本機は内蔵外部どちらも10Mクロックが全ての入力に対して有効ですが、特徴的なのはこの10Mクロックは全帯域の位相雑音リファレンスではなく、あくまで絶対周波数精度と低周波位相雑音のリファレンスとして機能する点です。
このようにした理由は入手しやすい価格帯の高精度OCXOやルビジウムクロックは精度は優秀でも10kHz以上の位相雑音性能はさほど優れていないことが多いためです。その帯域はいわゆるフェムトクロックが得意な領域で逆にフェムトクロックは周波数精度が悪いのが一般的です。従来この両立は非常に高価格なクロックが必要でした。
しかしこの製品では内蔵の低位相雑音クロックと10M高精度クロックの良いところを組み合わせる設計になっており、さらに外部に低価格な10Mクロックを追加しても出力される最終的な広帯域位相雑音性能は低下しません。オーディオでより重要とされるのは精度と低周波位相雑音ですが、広帯域位相雑音性能と精度の両立を狙いやすい設計です。
DAC関連の今後の展開、展望について
おまたせしております。AK4499EXの検証を含めまして少しずつ開発は進めております。
実のところ次世代のDAC開発でもっとも重要なアップデートは上記DDC部の性能です。最終音質面での従来の重要なボトルネックの一つです。先にDDCを出す理由もまさにそこで、デジタル受けやクロッキングの改善は直接DACの音質と関係しているためです。
従来比でデジタルクロッキング技術を大幅強化すれば、その結果DACも大きく進歩します。DDCでのノウハウをそのまま、または更に強化させてDACに搭載する、これが次世代DAC製品群の最低限クリアするべき基準だと考えています。新しい音質基準を達成するためのステップです。
またDDCの設計性能コンセプトはハイエンドDACに限らずすべての製品に今後維持継承されます。当社のDAC搭載のすべての製品で今後この高度なクロッキング機能を前提にラインナップ展開される予定です。
今の時点では具体的にお伝えできる情報は少ないのですが、DAC関連の長期的な展望は次のとおりです。順番は開発予定順ですが販売予定順ではありません。
- ハイエンド志向のDAC製品。フルサイズでAK4499EXを使ったもの。筐体デザインを更新。デジタルや特性面での多角的かつ安定的な性能を確保しつつ、アナログ領域のチューニング要素を搭載する。チューニングとは安易な音作りではなく、環境への最適化が目的。
- AK4499特注DACとIntegrated 250のアップグレード。どちらも1の開発ノウハウを投入し、DAC基板は完全交換となる見込み。性能面で根本的に一新される予定。AK4499特注DACの微小ディレイ問題も解決。
- Hypex社DIYプリアンプキット向けのDAC基板。ただしHypex社のDAC製品の内容次第。
- 廉価DAC製品。DDCと共通サイズ共通デザイン。旧AK4499を搭載。ACアダプター駆動で専用のヘッドフォン出力も搭載。
2以降はあくまで今の時点での構想です。予定は変更となる可能性があります。
AK4499特注DACを買いたくて、存在を知った時には売り切れていて、ヤフオクでも出ていましたが、買えなかったので 今は4497系のDACをを積んだのを使っていますが、逢瀬さんでフルサイズでAK4499EXを開発していると言う事なので凄く期待しています。
ありがとうございます。DACとしての心臓部はほとんど出来上がっているのですが、アナログ部やデザインと操作面の開発工程がまだまだ残されておりますので製造まではまだかなり掛かる見込みです。お待たせいたしますがよろしくお願いいたします。
NU-DDCと光ブースターの組み合わせについて伺いたいのですが、
NU-DDCのSPDIF出力から光ブースターを挟むと効果はありますでしょうか。
また、光ブースターは光入力から同軸ループを挟む2台構成が、
最も音質改善効果があるとされていたと思うのですが、
NU-DDCには光出力端子は搭載されないのでしょうか。
ご質問いただいた光ブースターとの連携については、実際の音を製品発売までに検証と情報公開を行いたいと思います。
ひとまず今の時点で技術的に分かっている点をお答えしますと、光ブースターの効果は主に信号に含まれる高周波ノイズ成分を取ること、GNDの影響をカットすること、出力駆動力のアップこの3つです。お伝えしていたように光ブースターはジッターそのものを取る機能はないです。
NU-DDCは逆にGNDの影響はLANと光入力以外ではカットできませんが、信号の低周波~広帯域でのジッターの改善、出力駆動力アップは可能です。出力駆動は光ブースターと同等と考えてもらって大丈夫です。この駆動アップは光出力では無効なのでNU-DDCでは省略しています。
なので光ブースターと組み合わせる場合「PC等>光ブースター>NU-DDCでHDMI-I2S出力」が最もクオリティが高くなるのではと思います。この構成ならPCからのノイズを光でカットしつつNU-DDCで光伝送のジッターも取れますし、DACにNU-DDCのマスタークロックも送れます。この場合だとNU-DDCのUSB-DDCとしての機能は使えませんが、ノイズ面もジッター面も内蔵DDCとして使う場合より改善する可能性が高いです。
逆にNU-DDCをPCと直結してDDCで使う場合、GNDの影響はカットできません。このとき後段に光ブースターを入れる利点があるように思えますがNU-DDC直結より良いかは環境依存性があるはずです。例えばDACにクロック同期機能があるかどうか、PC側から伝わるGND変動の大きさ、DAC側のGND変動とジッター感度の性能次第です。少なくとも後段光ブースターVS直結HDMI-I2S出力ですとブースター側が100%ベストとはならないと思われます(音の比較実績ではなく、あくまで技術的予測です)。
ベストにならない理由はDACにクロックを伝える手段がないためです。本当はHDMI-I2Sかワードクロックまたは22/24Mのクロックを受けられるDACと接続するのが望ましく、SPDIFのみの出力だとすべての実力は出せないと思われます。これはSPDIF規格自体がマスタークロックに相当する情報を捨てていることが原因です。
正直なところクロック信号を欠損したSPDIFでDACとつなぐしかない場合、DDCで予測できるパフォーマンスは限界があります。あとはDAC側で対策をするしかない部分で、DAC側のSPDIF受信以降の設計依存です。
光ブースターリリース時にすべての影響は改善できないという部分です。良質なクロックを持つ既存のDDCをすでに持っている場合、そこから光ブースター経由の時点でSPDIFとしてできる対策はほぼ終わっており、SPDIFのままさらなる改善はかなり難しいと思っています。
残念ながら現在ではワードクロック入力対応DACはほとんどありません。22/24Mが入る機材はもっと少ないです。なので今だとHDMI-I2Sが一番普及率が高くこの接続が望ましく、そうなると後段に光ブースターは入りません。当社もIntegrated 250以降は対応していますが当社も古い製品はHDMI-I2Sがないため一番良いパフォーマンスが出せないのは事実です。
このあたりは製品リリースまでに少しずつ音も含めて検証しようと思っていた内容ではありますが、今の時点でできる回答は以上です。あくまで技術的予測であって厳密な音の検証結果ではない点はご注意ください。よろしくお願いいたします。
AK4499EX DACはパラレルになるんでしょうか?
2チップは確定ですがそれ以上は設計的な必然性があるかどうかです。前回のように安易にパラレル化を売りにするつもりはありません。初期ファームから本格アップデートを経験した方ならご理解いただけると思いますが、チップの数は特別に大事な要素ではありません。
ak4499dac購入を検討しましたが初期注文分だけで完売ですね。初め意味が????でした。逢瀬さんのブログを読んで理解しました。普通のメーカーとは違うけど良いと思います。
さて、今回のnu-ddcと次回のak4499exはやはり完全受注生産でしょうか?分離型dacチップに期待大なので購入を検討しています。マメにホームページを閲覧してチャンスを逃さないようにします。なお、私はオーディオデザインユーザーなので、技術的に公開してくれると安心して購入できます。それが音楽的に良いかは別問題ですが。
蓮見さま
AK4499DACはクラウドファンディング的な限定生産のプロジェクトでしたが、他の製品は通常の常設ラインナップです。ですが現状完売が多くご不便をおかけしております。
いまデジタル製品が殆どなくなってしまっているので可能な範囲で急ぎ開発作業を進めておりますが、今のところDDCは今年の後半、DACは来年前半が発売目標です。いずれも十分な数量を生産する予定ですが確実な需要を事前に見込むのが難しいため、在庫リスクとの兼ね合いであまりにも大量の生産は回避する傾向はあります。そのため確実な入手をご希望される場合には上記タイミングにてBlogや最新情報をチェックいただければと思います。
当社は技術的情報は国内オーディオメーカーの中では比較的公開している方だと思いますが、具体的にどういった情報を開示してほしいなどありますでしょうか。ただDDCの実測ジッターなどは高額な位相雑音測定器がないので制限はありますが、公開測定可能な内容なら前向きに検討します。
ありがとうございます。私はエンジニアではないので難しい話は分かりません。ただ、音楽的にとかカタログスペックを乗せるだけのメーカーよりは信頼できそうです。拙宅のシステムはアンプがスペクトラルなので、電気的特性を重視しているメーカーです。相性は良さそうなので検討します。販売予定スケジュールも分かりましたからマメに閲覧します。ハイエンドはもう手が届かないので、私のように予算がない物には救いです。是非とも良い製品を期待しています。
SPDIF入力からSPDIF出力のリクロックは対応していますか。
同軸SPDIF入力は絶縁の問題、背面スペースの問題で採用していません。またSPDIFでは光入力が2系統あるためどうしても必要な場合は市販の廉価なフォーマット変換機を使うことでも対応可能です。
SPDIF同軸が必要なケースは既存のCDPなどとの接続が考えられますが十分なクロック対策を行っているCDPの場合、あえて本機を間に入れるメリットが有るかは疑問です。
以上ご参考までによろしくお願いいたします。
すみません。読み直したらリクロックのご質問でしたので追記します。
光も含めてになりますが、リクロックの制約としてSPDIF系>SPDIF系の接続の場合、ワードクロック/MCLK出力を使わない場合はリクロックは有効ではありません。この理由はSPDIF信号自体がマスタークロックを含まないためです。SPDIF自体のタイミングをよくすることは可能ですがそれによる改善は本質的なものではなく制限があります。
ですので本機のI2S出力かワードクロック/MCLK出力を使わないまたは使えない場合は、事実上リクロックとはいえない状態となってしまいます。逆に言えばDAC側がこれらに対応する場合SPDIF系からのリクロックは有効です。
NU-DDCについて
現在mutec MC3-USBを使用しておりますが、サンプリング周波数の異なる曲を連続して再生すると冒頭が切れる既知の事実があります。
御社の開発途中のNU-DDCは連続して異なるサンプリング周波数の曲を再生しても( 44.1,192,等 PCM)曲の冒頭において、処理が間に合わす再生できない事象は起きない、工夫がなせれるのでしょうか?
非常に興味があり、公開できる範囲でお教え頂きたく。
小貫さま
DDCにご興味を持っていただきありがとうございます。
まずUSBの再生についてですが今の時点でのファームではサンプルレート切り替え後に1秒程度の時間が必要です。楽曲ファイル側に無音部分が1秒より少ない場合は音切れがあります。この対策については調査していますがXMOS側の深い処理の問題のようでこちらで解決ができるかどうかはまだ確約はできません。リリースまでにもし解決方法がわかりましたら対策を行いたいと思います。
ネットワーク側のUpnp再生では無音部分がかなり短いデータかつレート変更を伴う再生でも頭欠けはありませんでした。
以上ご参考までによろしくお願いいたします。
本件追加調査したところPCについては再生プレイヤー側の設定で回避が可能でした。デバイスとしては解決にはなっておりませんが、こちらでうまく行った事例は、
「Foobar2000でfoo_dsp_pregapを使い、DSPを有効にして1000msのディレイを有効にすること」
「TuneBrouserを使い、レート変更後のディレイを1000msに設定すること」
でした。最終的にデバイス側での解決が困難な場合には、上記の事例を参考にプレイヤー側の設定を調整していただくことで解決をお願いする可能性もありますので、予めご了承をお願い致します。
また、PC以外からの再生でレート変更がどうなるかはまだ検査していません。わかりましたらこちらに追記いたします。
有り難うございました。
発売後には是非貸し出し評価額可能となりますようお願い致します。
小貫さま
すみませんが初期のNU-DDCについては小型かつ価格も控えめに設定いたしますので今の時点では貸出を行う予定はありません。Roon対応版については最終価格次第で貸出を検討します。
NU-DDCのRoon対応に関しての質問です。現在Singxer SUシリーズを使っていますが、Roon Readyではないものの、問題なく認識し音楽再生ができております。NU-DDCはこの認識すらされないということでしょうか?
こちらでの事前検証では、NU-DDCでのRoonからの認識はシンプルなデバイス名のみで、存在は検知をしますが再生は受付ませんでした。できるのはAirPlay経由の再生限定でRoonの強みを活かせない状態です。
初期のNU-DDCはIntegrated 250で採用していた他社製USB基板とデバイスIDは同じに設定する予定ですが残念ながらそれは正規ハードウェアではないとRoonから認識されます。おそらくRoonはデバイスIDのみではなく様々な情報を照らし合わせて正規のデバイスかどうかを検知しているようです。またUSBのドライバも当社からは供給できませんのでASIOなど多機能なドライバはありません。あくまでWindowsやMACでの標準ドライバのみサポートになります。
正式な当社専用ドライバとID、そしてRoonのNU-DDCの対応予定について今の時点の構想をお伝えします。
NU-DDCがRoonに対応するための手順としては、USBのデバイスIDを新規で取得し、ドライバをライセンス、さらにRoon Readyに登録&認証、という3段階の流れが必要になります。総額で相当の金額がかかる見込みのためすべては有料のアップデートになります。希望者と金額をいくつかの段階に分け、必要な費用を皆様から集めアップグレードの判断が決まります。もし単価と希望者数の折り合いがつかない場合はアップグレード自体断念する可能性もあります。例えばですが希望者が少なすぎて一人当たり単価が高すぎて頓挫する可能性もあります。
いずれにしてもNU-DDCの初期出荷の勢いと、そのあと再生産まで見込めるかなど、総合的にみて判断することになります。勢いのない不良在庫となる場合はNU-DDCでのRoon対応や公式ドライバの提供自体を断念する可能性もあります。ですがNU-DDCは機能や性能に反して定価を相当抑えられている理由は上記のような努力でコストを抑えているためです。すみませんがご了承お願いいたします。
詳しくありがとうございます。対応版が出ることを期待しております。