逢瀬の目標と売上規模
こういうお話はどの業界でもまず公開されないと思うので、あえて公開してみたいと思います。これからオーディオ業界に参入したいという方にとってはあまり夢のない話です。そしてオーディオ業界の方にとってこの文章がどう思われるのか不明ですが、とりあえずこの文章を目にすることがあったら「あそこは全然儲かってないんだな!」と思ってください。こちらとしては同じような規模のところの方へは「お互いに頑張っていきましょう!」と言いたいです。
経営状況について
まずですがWATERFALL Integrated 180は最終成績(売れた台数)は一桁です。もちろんパワーアンプもDACも似たような実績です。これをお客様に話すと驚かれるのですが事実です。HPをみるとそれっぽい作りですが、今時この程度のページはほとんどマンパワーを割かないで作れます(一人で十分)。
ということで逢瀬は実は全然儲かっていません。
この台数で会社の維持費がどれだけ出せるのか試算してみましょう。30万円を10台売っても300万円です。そこから原価、開発費がありますので、それらをひいたらどうですか?実際には10台も出ていませんので、普通の会社の維持費を知っていればたった一人のアルバイト程度の人件費にすらならないことがわかると思います。オーディオ業界での他の事情は全く知らないのですがオーディオで知名度がうちよりも低い所はこんなものかもしれませんね。
ここからわかるとおり逢瀬は普通のやり方で経営をやっていける売上規模ではありません。当然ながらとても人を雇える規模ではないですし、全て一人で頑張るしかないのです。ではこの程度の売上でどうやって会社を維持しているのかと言えば、まず住居を事業に割いて使用しているので事務所のような経費のかかる所は借りていません。あと普段オーディオ以外の仕事(所謂これが本業)をやっております。そしてその仕事以外にも副収入が複数あります。
それらを総合してオーディオの会社を継続出来ています。しかしこれを見て「それでは逢瀬はそのうち潰れてしまうのではないか?」という心配はしないでください。考え方を変えましょう。逢瀬はあまり製品が売れなくても維持していくための余裕があるので会社がなくなることはありません。
利益が出る前提で戦略を組めば売上が出なかった時に会社は危なくなってしまいますが、そうではなく利益がでないことを予め見越しており、売上が少なくても余裕で会社が維持できる状態になっていると考えてください。それはまだ長く遠い目標を達成するための長期戦略です。
幸い私は年齢も業界の中では若い方ですから、これから10年後、20年後も心身の健康が許す限り気長に続けていきたいと思っています。
逢瀬の目標
当面の目標は、製品の音質が真のハイエンドクオリティであるという絶対評価を、限られた音楽的な方向性の一端で良いので確保することです。その先の目標もありますがまずはこの位置にあがることが第一となります。ここに売上という要素は何も入りません。まずは売れなくてもよいのです。それよりもそのような認知がしっかり広まることを目指したいです。
そこに至るためにはまだまだ目標には遠い現状があります。要因の一つはおそらく製品がまだ未熟な完成度でしかないからだと思っています。同等レベルの競合製品と比較して悪くないレベルでは全然駄目で、多くの人の印象を圧倒し超えていかなければなりません。競合がどうとか意識しているうちはまだまだだということでしょう。自らの究極を目指しそれを実現することが求められます。
もう一つの要因としては資金不足でイベントへの露出の機会がないことも原因でしょう。貸し出しだけではお客様に認知していただく機会に限りがあります。ですがまだ据え置きのオーディオイベントに出店できるだけの資金力が逢瀬にはありません。ここは気長に資金力をつけて挑戦していきたいところです。ただし売上が目標ではないので皆様にイベントでスピーカを鳴らす姿をお見せするためには時間は相当掛かる(下手したら10年以上後?)と思っています。
売上至上主義を放棄することでもたらされるもの
これはもう必死になって目先の利益を追求する営業努力から開放されるということです。そして会社の維持するために売ることに必死になってしまうことは音質追求のための目を濁らせてしまう可能性が高いため、音質を追求する上では売上という雑念から開放されることは凄く大事なことだと思っています。これをここに投稿しているのも決意を改めて定めている目標に邁進するためです。
これによって絶対的な音質レベルの高さを追求するため開発に専念することを選べます。例えば先日に音質面でベストではないと思ったIntegrated 180とPower 400とAK4495S-DACは次世代モデルがまだ出来ていないにも関わらず全て生産完了にしました。利益を出すことが一番重要ならこういう決断は絶対に出来ないでしょう。経営的には商品を全部取り下げて売るものがない状態にしてしまうなど、狂っているし最も望ましくない選択だと思います。
利益を出すことが一番になってしまうと、どうしても売るためにはどうしたらよいかということが優先されてしまうことになります。こうはなりたくありません。売るために真実を捻じ曲げるようになってしまったら末期的だと思っています。そのようなことをせずに会社を続けていくことは理想論ですが、理想を実現するための体制は出来ていますから、目標の達成までこの状態は継続したいと思っています。
オーディオの終着地
オーディオの音質追求はこの世の真理の探求とにています。おそらくこの旅に終わりはありません。真の終わりはありませんので終わりは自分自身で設定するものです。
宇宙について調べるほど新たな疑問が増えるように、オーディオもこれで十分これで終わり、というものは訪れることがないように思っています。真理とは目の前にあるのに大抵が最もわかりにくく掴みどころのないもので、見る人によって見え方も評価も変わるものです。都合よく見ようと思えばそう見えてしまうので、終わりだと思ったらそこが終わりです。オーディオもそういう非常に哲学的な世界で、それは世の真理と共通する部分があります。
ですので全てを知ったような口ぶりでもうこれで終わりとか究極を謳うオーディオほど実は不完全なものはないと思っています。この世界のすべてを知った人がいないように、オーディオでも真の究極と終着点を知った人物もまた不在のはずだからです。上記のような発言はあくまでその人に見える世界でのみ究極回答であるように見えるというのが正しいでしょう。こういう事実は常に念頭に置いておかなければなりません。
逢瀬はそのような盲目的な状態を恐れます。上記のような限界は自分自身で自覚したいと思っています。目指すのは全ての究極ではなく、一定の領域において限られた究極だということです。そういうことを自覚するためには率直なお客様の評価が重要です。自分自身だけで見える世界には常に限りがあるからです。かといって他者の意見に振り回されることも正解ではありません。誰もが完全ではないのです。すべてを見通すことは出来ません。なので沢山の意見の中から自分の目標にとって足りないものを探し出し、目標に足りない部分だけを追加して反映していくことが重要であると考えます。このとき異なる目標につながる道はあえて絶たなければなりません。
以上のようにオーディオには限りない世界が広がっていることを認め、自分自身のレベルを客観的にわきまえた上で、オーディオの一部領域での究極を目指したいと思っています。それは決して全てにおいて究極からは程遠いのですが、その一端だけでも確保することは難しく、十分に遠い目標です。その一端を確保した時、ようやく次の目標が見えてきます。
もし目標達成のステージが変わって、逢瀬の目標が変わったときには、あたらめてこのBlogでそのお話を書きたいと思います。