Junction DAC(AK4499特注DAC Version 2)の開発状況

動作テスト中です。特性と音質は問題ありません。全chで安定してTHD+Nのレベルは低く抑えられています。

ただしまだ熱の問題があります。前回の試作基板より大幅に状況は改善していますが、ケースの蓋を締めて長時間経過すると、設置状況や周囲温度次第で危険領域に入る可能性があります。今後できる範囲で対策を行います。

音質と性能を考えると熱の総量を減らすことは難しく、とくに8ch出力が必須のためとても厳しい条件です。もしケース内での対策が難しい場合には熱が出ても問題がない設計へ変更とする可能性があります。

  • 出力監視と保護機能を兼ねて、各chの出力表示機能が付きます。8chの出力振幅を簡単にパネルで表示します。
  • すべての内部動作はマルチモードを基本とします。これによりモノモード設定時でもEQが有効になります。ユーザーから見たモノモードの動作は今までと殆ど変わりません。
  • DSPの制約になりますが、フィルターの絶対精度がEQ有効化によって多少犠牲になります。それでも大半のDACより高精度は維持します。
  • 同様の理由で音質調整機能も撤廃予定です。

その他の仕様については今後も分かり次第ご報告します。

熱問題の対策について追記(コメントから本文へ移動)

基本的に常時通電でなければ危険な熱量だとは考えておりません。使わないときは電源を落とす普通の運用であれば寿命の問題はありません。高級オーディオ機器ではかなり熱が出て筐体が熱くなる機器はそれほど珍しいものではなく、それらと比較しても熱すぎるということはありません。

問題は一部の常時通電運用なので一部のためにコストを大幅にアップするような対策(ケース変更、特殊耐熱部品の採用など)は避けたいです。これは多くの人にとって本来正当化されるべきではないコストだと考えております。

そこで温度センサーです。センサーは決して高額ではないしソフトウェアで解決できるなら量産コストもかかりません。なのでこれが最も多くの人にとって利益がある方法だと考えております。温度センサーを採用すれば常時通電は一定の温度条件を満たした上でなければ機能的に不可能になります。

あとは実際にテストをしてみないとなんとも言えませんが、今のところは上記の理由により、これが最も現実的な解決策だと考えています。

温度センサーのテスト(9月3日追記)

画面右下に温度を表示、中央は警告表示です。温度センサーはDAC基板とデジタルヒートシンクの中間の位置に設置しています。

画面はテスト中なのでかなり低い40度でエラー検出していますが最終製品では55度で温度異常の検出とする予定です。内部温度が50度を超えてくるとケースもかなり熱く感じますしIC表面温度は更に高温なので一度動作を遮断するのは妥当な動作ではないかと予想しています。

色々テストを行いましたが標準動作中のケース内の温度は夏場の弱冷房の室温+通常設置条件でフル信号連続動作時43度前後が最大でした。多少熱対策を行ったため前回報告時より-5度程度下がりました。この温度センサーで43度のとき一部の電源ICやアンプICの表面温度は赤外線測定で80度後半になる場所があります。センサーで55度だとIC表面温度は100度を超える想定ですのでここで動作を停止します。

エラー検出後はDACのマスタークロック供給とアナログ電源を自動で切断とエラー表示、その後45度を下回ると自動で復帰します。デジタル部や表示操作部は通電も動作もそのままです。

熱問題の対策について追記(9月21日追記)

コメント欄で回答しましたが、現在の問題はケース内部の総発熱量が多すぎることが原因であり、現状のケースの通気性が十分でない可能性が高いという判断になりました。そのため上パネルの新規設計とアップグレードに伴う交換作業を予定しております。上記ではできるだけ避けたい選択肢と書きましたが、これは避けられない選択肢と判断しています。

そのかわり放熱効率の改善に加えて、

  • デザイン面での更新(アップグレード済かどうかがひと目で判別ができる)
  • ケース物量アップ

等のメリットを追加することも盛り込む予定です。

仮ですが現在のデザインはこちらになります。これによってアップグレード前後での製品の印象は大きく変わることになると思います。

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Junction DAC(AK4499特注DAC Version 2)の開発状況” に対して10件のコメントがあります。

  1. 柴犬 より:

    いつもお世話になっております。
    Junction DAC、楽しみにしております。

    さて発熱の問題でお困りとの事、余計なお世話かもしれませんがFANによる強制空冷は如何でしょう?
    自分の場合、AK4499特注DACの発熱が気になったのでPCケース用のFANで筐体上部空間を横方向に風を送ってます。
    AINEXの究極静音タイプを使用してますが、FAN駆動音は全く聞こえません。
    振動による音質低下については未知数ですが、宜しければ実験してみては如何でしょうか。

    1. ause より:

      情報のご提供ありがとうございます。

      現状の仕様だと8ch全部稼働すると熱問題は避けられそうにありません。上面のパネルを外せば熱問題はないので結局はケースの内部の空気の流れが悪いことが問題です。なのでファンの採用をすれば解決します。ただファンの採用については最終手段としたいです。結局ファンもファン自体の寿命で異音がするようになる問題もあり、製品寿命問題そのものは切り離すことができません。

      この問題についてはどのように対処するか検討中です。場合によってはある程度の発熱は許容して発熱中心部の部品構成を熱に強いものに限定にするなどして対応をするかもしれません。とりあえず現状の発熱は半導体や大半の部品の寿命にはほぼ問題なく電解コンデンサのみ問題という程度です。

      1. 菊水牛乳 より:

        単純だけど、ヒートシンクでは対応できないのでしょうか?
        通気性は必要でしょうけど
        私は熱いdacにはヒートシンクつけてました。効果はありました。
        製品では見たことはないので、問題があるんでしょうか?
        PCでは常識ですよね。

        1. ause より:

          ご意見ありがとうございます。

          記事の追記から色々と検証を行っていますが、現在わかっていることをお伝えします。最大の問題は部品単位の熱ではなく、システム全体の熱の総量が多すぎる問題の可能性が高そうです。根拠としては別の試作品で同じケースで個別部品の熱が高くてもケース内部温度の熱問題が発生していないためです。

          現状最大の対策は上のパネルを外すことでこれだけで約10-15度内部のセンサー温度が下がります。そのため現時点の予定は大幅に通気性を向上させた上パネルの新規生産です。記事ではできるだけ避けたい選択肢と書きましたが、結局のところ通気性が最大の制約ならこれで放熱性能が大幅に改善する見込みです。

          また合わせてデザイン面や物量面もアップグレードします。厚みは3mmから4mmとなり見た目でもアップグレード有無の差別化ができますし、Junction DACのモデル名も記載される予定です。単純な通気性向上のみでは再生産の意義は多くありませんが放熱対策と合わせてデザイン面や物量面でもアップグレードができるのであれば前向きな対策になるという判断です。

          ヒートシンクについては上記対策後の状況を見て判断したいと思います。

  2. 柴犬 より:

    >ファン自体の寿命で異音がするようになる問題もあり
    そうですね。ベアリングの寿命を忘れていました。

    >電解コンデンサのみ問題
    以下は、とある電気メーカーの修理部門に30年いるド素人の戯言なので聞き流して下さい。
    ご存じの様に、電解コンデンサという部品は周囲温度が10℃あがる毎に寿命が半減します。
    FANと電解コンデンサ、どちらが先に寿命がつきるか。
    そして交換のし易さ・部品代・工数を鑑み、総合的に判断すると良いと思われます。
    電解コンデンサの交換には半田付けが必要。
    対して、FANはドライバーだけで交換できます。

    スミマセン。
    余計な事を言いました。

    1. ause より:

      ご意見ありがとうございます。

      現状をもう少しご説明しますとDAC基板の周辺パーツが大変厳しい熱量です。無音時はさほどでもありませんが信号をフルパワーで蓋を締めて連続稼働すると最大で100度近い場所があります。105度10000時間のコンデンサを採用する予定ですし、コンデンサ自体にかかる熱は80度以下でしたがこれは冷房のある部屋での最悪条件です。モノモード、外部プリアンプ使用であればそのような常時ほぼフルパワー再生、なおかつ発熱する機材に囲まれた設置条件であれば普通にありえます。

      さらに別の過去実績で365日常時通電という方がいてその場合は5年持たない計算です。ファンがあれば完全に解決かというと夏場に通電したままという条件だと室温が高すぎてファンもあまり効果がないと思われます。

      DACの電流量を減らすとだいぶ条件は良くなりますし設定項目もありますが、音が良いからという理由で常に最大負荷に設定にされることは理解していますのでこの方法は使えません。常時通電はしない普通の使い方であればこのような考慮はまず不要なのですが、普通の使い方をされない想定が必要というか、割とそういう使い方をされる可能性が高いと考えています。

      なのでまだ確定ではありませんが、採用を考えているのは基板に温度センサーを搭載して危険な熱が出る条件で使用した場合はDACチップの緊急動作停止なども考えています。冷房無しの部屋や発熱源のある使用条件で常時通電を機械側が保護する仕組みです。一部の例外的な使用条件のためにファンや特殊仕様の耐熱部品を選ぶなら、この方法のほうが多くの方にとって利益もあるのではないかと考えているところです。

      この仕様は過酷な使用条件下では不便があるかもしれませんが、保護のかかり方は色々調整ができるようにするつもりです。それより長く安心して使っていただけることのほうが大事だと考えています。

  3. hdo より:

    蓋部分を風通しの良いスカスカのものにはできないのでしょうか?
    アップグレードと同時に交換すればよいと思います。
    また、この熱の問題は、将来のハイエンドDACにも共通した問題になるでしょうか?

    1. ause より:

      ご意見ありがとうございます。
      ケースの変更は可能ですがアップグレードコストのさらなる上昇と、外観的に現状より少し安っぽくなる可能性が高いです。本来であれば完全にケースを再設計することが望ましいですがアップグレードとしてはあまりに大規模になりすぎる(ほぼ別製品レベル)のでそこまでは検討していません。

      今のところ総合的なコストや将来的なチューニング余地、どんな使用状況でも安全を確保できること、これらを考えて温度監視の方向で検討しています。

      ハイエンドについてはケースを1から設計し直します。放熱とのバランスを考えた設計にするので問題はなくなる予定です。今回熱問題が発生しているのは当初のケース設計から想定しているより、音質目標が高く熱の問題が解決困難になっていることが原因です。熱のみ考えて対策をするなら電流を落とすことで簡単に解決できます。しかしそれは皆様が望む内容ではないと思うので音質は犠牲にせずすむ方法を検討しています。そのうえでかなり無茶な使用条件であっても問題なく使えるように解決を検討しております。

      ハイエンドについては対策を行いますが、本来は夏場も冷房無しで常時通電やアンプの直近や縦積みや狭いラック内に押し込めるなど、明らかに寿命が短くなる使用方法はメーカーとしては避けていただきたいところなのですが、100%そのように運用される保証はなく実際にそのように使われているケースがあります。なので熱対策を行うハイエンドでも熱監視機能は入れて保護対策を行う可能性はあります。

      以上、よろしくお願いいたします。

  4. かず より:

    こんにちは。
    アルミケースの内部にシリコングリスを塗ったL字の銅板をねじ止めして
    その上に熱伝導シートを挟んで4枚の基板を並べて載せるとかすればいいのかな

    1. ause より:

      かずさま

      ご回答の内容ですが、Kitの延長として扱われる想定の場合でしょうか?

      正式な製品として扱う場合はそのような改造は保証外となり非推奨ですが、この製品はもともとKitとして販売しておりますので完全自己責任でKit扱いの場合はそのように対処いただくのも良いと思います。上面パネルについても通気性の良いものに交換していただくなども同様です。

      ただしその場合は保証外動作となりますのでアップグレード後の保証は100%無効になります。
      以上ご参考までによろしくお願いいたします。

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