パワーアンプの予定・続報と最新情報
こちらの記事の続報です。Nilai500と1ET9040BAについては全く情報が更新されていない状況ですが、ひとまず直近の予定についてお伝えします。
物量型ケースのテスト結果
目的はケースの物量の音への影響の大きさの調査です。最初は比較のためNC1200+SMPS3kを使ったパワーアンプを作成しました。これは以前に通常の物量のケースに入れたものがあり、全く内部構成が同じものです。異なるのはACとSPコネクタ程度でケーブルやモジュールはすべて同じものを使っています。
物量型ケース採用の結果としては雰囲気自体がだいぶ落ち着いており静寂感が増し高域のうるささも若干減る傾向を感じます。従来のNC1200の印象として駆動力や余裕は高いが高域が荒く質感は微妙という評価だったのですが、物量型ケースに入れた場合は高域の問題はだいぶ緩和されていると感じました。コネクタ類の差だけでは経験的にここまで大きな違いは出ませんのでこれがケースの差なのでしょう。今後はケースの物量的な要素は決して無視できないことになりそうです。
そのためデザイン的にはベストではないと思っていますが、音を重視し今回はこの物量型ケースを採用することにします。
1ET7040SAを使ったパワーアンプ
こちらも試作品はほぼ完成でこれから量産の準備を少しずつ行っていく段階です。最終的には少し変更がありましてフロントはスイッチの配置を変更し前面にモデル名の刻印を追加します。全面の表示レイアウト的にはP502Lに近い仕上がりとなります。もう少しテストを行ったら先行で試作品の貸出もスタートしたいと考えています。
仮のデザインです。細かい位置はもう少し調整予定、型番もスペックとラインの整合性でWF-P952になりますが今回は限定生産なので502Lのようにそれとわかる表記を追加するかを検討中です。正規ラインとなる可能性もあるのでこのまま確定の可能性もあります。
音についてですが、旧世代と比較して今回はコンセプトを変更した内容になっています。
- WF-P400世代は基本のモジュールの素性の限界を取り出す設計方針
- WF-P500やWF-P502L世代ではNC500モジュールの欠点を隠す方向でSN的要素を強化するチューニング、万人に扱いやすい設計方針
- 新型は従来モジュールの欠点が解決したため、高域の精度、音の立ち上がりと焦点描写、駆動力のさらなる強化、これらが設計方針
実質過去のハイエンド製品であるP400やP500の後継となる新しい概念のハイエンドラインになると言っても良いと思います。懸念があるとしたら以前のモデルよりさらに高性能なシステム向けの設定になっており、状況によってはきつい音やうるさい音をだすかもしれません。ですが大抵はケーブルや振動やトラポからDACまでの上流の問題をさらけ出しているだけです。逆にそこに問題がなければ従来より限界の高い描写が可能になるチューニングです。場合によっては以前のモデルのほうが良いと感じるかもしれません。
高域の精度を高めながらきつくないうるさくない音にするためには相応の試行錯誤が必要でしたが、その結果は高域低域のレンジ拡大、細部のディテール描写が向上、アタックとリリースがしっかり分離する、このような方向性となっており、より世界のハイエンド志向な音に近づいているのではないかと予想しています。これはオペアンプを交換できるよくあるNcore系海外製品にはまず不可能な「最適化による成果」と予想されます。
注意点としてはこの方向性は立体感や定位を明瞭に描写する限界が高まる一方で、その限界自体はセッティングやシステムに強く依存することも事実です。音の立ち上がりに含む詳細な情報を正確に取り出すことを目標にしていますので、不完全性はそのまま出してしまいます。今までより相性問題が出やすい点は予め注意が必要です。(最低限DACが当社の製品の場合は大きな問題はないと思います)
販売の予定
今後ですがNC1200を試作モデルとして、1ET7040SAは限定生産モデルとして販売する予定です。NC1200モデルは上の写真のまま3台限定、1ET7040SAモデルは一部修正し20台前後の限定生産予定です。どちらも写真と同等の物量型ケースを使います。
- NC1200+SMPS3kの構成の物量型ステレオパワーアンプを3台限定。コネクタはWBTを使用、シルク刻印なし、背面に型番シール予定
- 1ET7040SA+SMPS3kの物量型ステレオパワーアンプ、20台限定。コネクタは502Lと同じ、シルク刻印型番表記あり
今のところNC1200モデルが先行で8-9月頃(光ブースターの状況次第で変動)、1ET7040SAは予想だと冬ごろになってしまうと思います。P502Lももうすぐ在庫が少し復活しますのでしばらくパワーアンプの在庫が充実するはずです。
今後のパワーアンプの価格帯は大きく差ができます。1ET7040SAモデルは過去のハイエンドモデルに近い価格帯になります。P400、P500のステレオ構成よりは安くなりますがP502Lよりは大幅に高価です。NC1200モデルはP502Lと1ET7040SAモデルの中間より少し安い位置付けです。
選択の考え方としては、NC1200モデルと1ET7040SAモデルの駆動力は似たレベルのため、P502L以上の高域の精度が不要でコストと駆動力を重視したい場合はNC1200が良いです。P502Lのノーマル版とNC1200モデルの比較では多少値段は上がりますがNC1200に駆動力的な優位性があると思います。P502Lの1ET400A版は高域の精度が高いのでNC1200モデルでは失う要素がありますから非推奨です。
その他1ET7040SAという目新しさと値段の安さが大事な方は当社より安いパワーアンプが海外メーカーから買えますのでそちらを選ばれると良いでしょう。
1ET7040SAパワーアンプの設計方針 詳細版
当社が1ET7040SAに注目したのはこのモジュールの目新しさではなくGNDピンの増加による基板のGND結合強化です。それが1ET7040SA採用の理由です。1ET400Aはこの問題を解決しなかったので当社は試作品しか用意しませんでした。1ET400AはNC500と同じ問題があります(ただし音的な問題はだいぶ軽減されている)。
NC500(1ET400Aも含む)で問題になっていたのはD級アンプ基板とプリアンプ基板のGND結合ピンが少ないため高周波的な変動に弱いことです。D級アンプ自体が高周波で動作しているためこの問題は深刻です。
アンプ基板のGNDとプリアンプ基板のGNDが個別に変動すると、通過した信号も同時に変動します。もちろん差動伝送で軽減されますが完全ではありません。伝送経路の非対称性によって完全性は崩れます。悪いことにNC500のピンレイアウトではホットコールドが非対称な長さのピンに割り当てられていますので必然的に不完全な差動伝送になります。
そのため当社はNC500の設計では問題となる周波数領域を4次フィルターですべてカットすることで対処しました。これはアンプモジュール側の問題なのでプリアンプ基板でモジュールの設計問題を隠しました。その結果はきつくうるさくない透明でなめらかな描写が可能になりました。NC500は広帯域で高速なプリアンプを用意するほどきつくうるさい音になってしまいますがそれはモジュールピン設計の問題です。
このようにNC500~1ET400A世代では真の広帯域プリアンプと組み合わせることができませんでした。プリアンプで信号を丸めないと荒くきつい音になってしまいました。逆にプリアンプ一体型モジュールのNC400やNC1200は完全なGNDを持っているため、固有の荒さがあるものの自然な高域の伸びがあります。これは一体型だけの優位性です。NC500のようなGND結合の甘いモジュールを使っている限りこれは実現できません。
しかし1ET7040SAではこのGND結合ピン数が大幅に強化されました。ようやくNC400やNC1200のような連続ベタGNDに近い特性を実現できるようになりました。そこで当社の1ET7040SAの目標はNC400よりも精度が高く焦点のあった伸びのある高域と、従来のNC500にあった透明感と滑らかさの両立です。
そのために行ったことは高速なプリアンプを使用することと高域特性の最適化です。重要なのはオーバーシュートの拒否と高速スルーレートの両立。高い駆動力だけでなく同時にピークを取り除かなければなりません。そのために各種定数の最適化が求められます。シミュレーションと試行錯誤で特性を一致させなければなりません。
もう一つは電源の強化です。1ET7040SAではSMPS3kと組み合わせています。2つの1ET7040SAはSMPS3kと釣り合います。一部の海外メーカーはSMPS1200の優位性を主張していますが、当社はSMPS3kのほうが音質的に駆動力と安定感と余裕がありSMPS1200より優位性があると確信しています。このあたりは音質的な判断です。
これによってうるさくないが伸びのある高域、ピントのあった描写、透明感、絶大な駆動力と安定感と余裕、これらすべてを両立したアンプが誕生しました。
しかし今後Nilai500や1ET9040BAが登場します。なので1ET7040SAを使ったアンプの生産は限定で売り切れたらそのまま終了となる予定です。もちろんそれらの製品と比較しても1ET7040SAの優位性があるならば再生産を検討しますが、そのためにはこれらをすべて試してもう一度ベストはどれなのか再検討が必要です。Nilai500自体は電源が弱いのであまり期待していませんが、1ET9040BAはより良い可能性があります。
パワーアンプにボリュームは付けれますか?
ご質問への回答ですが、簡単には十分な品質なものを用意できないため付きません。
ご回答頂きありがとうございます。