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WATERFALL Power 400の状況について

ケースが上がってきましたので試作してテストしています。比較用に物量主義の合計2000VAのトランス+巨大コンデンサを載せたNcoreモデルも作成してあるのですが、現状ではトランスモデルに比べて音が固い部分があるのでチューニングしてもう少し聴きやすい仕上がりにしてからのリリースとなりそうです。

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これは経験上ですが低音の出方についてはトランスはやや柔らかく、スイッチング電源はキレがありハイスピードで超低音の伸びがあります。その分スイッチング電源のほうが音がきつく聞こえやすい問題がありますので、トランスモデルと比較して問題ないレベルまで調整します。とにかく基本特性に優れるアンプなので、その良い部分を削らないようにうまくキツさを軽減できるように持って行きたいところです。

ちなみに写真の上側はDSD対応の試作DACプリです。こちらはこのままの仕様では出しませんが今年中には音質的に最も優れている要素全てを集結したフルサイズのハイエンドプリDACの開発を進めたいと思っています。当然ですがIntegratedに搭載したものと比べて大幅な躍進となる予定です。DAC素子やデジタル処理の部分も色々検討中です。こちらも今後情報を出せるタイミングで出していきます。まずはパワーアンプです。

ES9018の歪率は非常に優秀

先日ご紹介したDSD対応DACですが、歪率を手持ち環境にてテストいたしました。中でもES9018が大変優秀でカタログスペックの数字も嘘ではない可能性がありそうです。ただしここまでくると測定器の歪率の影響が無視できないはずなので、正式な測定器ではない以上絶対に正しい数値かどうかは不明です。そもそも測定値が良いからといって必ず音質が良いわけではないのでこれは一つの目安でしかありませんけれども。

画像に自動縮小が適用されておりますので見にくいのですが一番高い高調波のレベルでも-130dBほどで、トータルの計測値ではTHDで0.00005%、+Nでも0.00039%という表記になっています。0.00005%というとノイズさえなければオペアンプICの歪率並です。ただ+Nについてですがこのアナライザは20-20kではなくて0に近い周波数からのノイズを測定しているようなので、+Nについてはよくある補正フィルタ込みの測定ならばもっと良い値でもおかしくありません。気になる中央のスプリアスは原因が不明ですが他のDAC素子では見られない傾向なので現時点では原因不明です。

次にCS4398です。THDは0.00029%、THD+Nは0.00066%です。カタログスペックが地味なためややマイナーな印象を受けるDAC素子ですが実は測定にも使用しているLynx Hiloでも使われています。測定値はHiloの内蔵DACとほとんど同等で歪の出方(奇数次高調波が支配的)も同じなのでこの辺りがDAC素子の限界なのだと思います。決して悪いデータではなく当方制作のPCM1792やPCM1795などと比較してもほぼ同等の測定値です。ES9018より挙動が素直で安定しており制御面での使い勝手も良いので優秀なDACだと思います。

他にWM8741も測定しましたがジッターレベルが低いにもかかわらずCS4398等とくらべてノイズフロアが高い等の問題があります。このDACは測定面は優秀ではありませんが音質面では決して悪くないので、大手での採用例があるのも頷けます。デジタルフィルタで音質を選べるのも良い点です。

プリアンプ、DSD-DACを開発しています

大変ご無沙汰しております。数ヶ月Blogを休んでしまい大変申し訳ございませんでした。3月にWATERFALL Integratedも発売となりましたが、その間に次世代の製品の技術基盤となる試作機開発を進めておりました。次世代の製品としては単体のパワーアンプ、プリアンプ、DACなどのセパレート機を予定していますが、この開発がそう容易ではありません。その背景事情をまず説明いたします。

現行の最新機種であるWATERFALL Integratedは、開発時点でいままでの高音質化のための技術を全て惜しみなくつぎ込んだ作品です。Integaratedは決して低価格の製品ではありませんが、それでも自信を持って世に発表できるレベルの仕上がりだと断言できる製品に仕上がっています。特に一体型ならではの特徴を活かした設計はセパレートではなかなか達成できない独自の合理性があるものです。これをセパレートで超えるにはそれぞれのDAC、プリアンプ、パワーアンプ各々の音質クオリティはIntegratedに搭載するものと比べて明らかに上回らなければなりません。

即ちIntegratedを超えるセパレートということは今まで上り詰めた限界、音質の壁をあらゆる意味で破ることが必要であり求められるということです。

試作プリアンプについて

プリアンプの仕様の前にIntegratedの内部仕様について書きます。Integratedでは低ゲイン(約4.5倍)のクラスDパワーアンプに高電圧のDAC-IV変換回路という組み合わせを使うことで実用上に優れたSN比を確保しています。これが上記した一体型ならではのメリットです。そして経由するアナログ受動素子や内部プリアンプなどの段数を極限まで減らし、デジタルボリュームのSN問題(減衰に伴いノイズフロアが減らないこと)を回避しています。このような設計によるノイズ対策により実際の音楽視聴での使用領域であってもデジタルボリュームを使いながら最高の音質が確保されているといえます。

実際に過去の試作品での比較ではこのIntegratedの内部設計と比較し、単体で最高級と言われるアナログ電子ボリュームであるPGA2320、MUSES72320等もIntegratedと同等の電源回路、アナログ回路の考えられる最高の条件でテストしましたが、どちらもただボリューム素子を通過しただけで音の劣化がはっきりと分かるような状態でした。明らかにIntegratedの直結と比べて音の細部の描写が大雑把になる、高音がきつくなる、リバーブの消え入る表現が曖昧になる、などの問題が発生します。巷ではデジタルボリュームによる音質劣化は大きいと言われていますが前提条件を整え、Integratedのように十分に合理的な設計を採用していれば下手なアナログボリュームよりもデジタルボリュームのほうが優れているということになりえると考えていますし、そのように実感しています。もちろん十分考慮された設計でないデジタルボリュームではこの限りではないかもしれません。

アナログの音量調整としては電子ボリューム以外の方法では、古くからある高音質抵抗をつかった低抵抗アッテネータという手段を使えば十分な高音質を実現できることはわかっていますが、最新機種で採用するべき手法ではない(既に優れた製品が存在する)こと、ほかにコストの問題、音量誤差、リモコン対応、動作切り替えノイズの問題があります。リモコンはリレーやモータなどで対応することも出来ますが、動作音と信頼性の問題も出てきます。それでは全ての条件をクリアするためにはどうすればよいのか…開発時点では考えられる理想に最も近いIntegratedを、外部接続前提の単体アナログプリで超えるのは非常に困難と思われました。

ですがあるとき閃きがありました。発想を転換し電子ボリュームの欠点を補う設計を思いつきました。詳細はここでは記載できませんが、簡単にいえば抵抗の問題と半導体特有の問題それぞれに資源を投入し対策することで、ある程度低抵抗アッテネータに近づけるはずだと予想しました。この対策によりDACの測定限界に近いSNを確保できれば、耳で聞こえる音質劣化はほぼ無くなるはずだと推測したわけです。実際にこの発想で設計試作してみたところ以前の電子ボリュームの実験時と比べて飛躍的に音質劣化を抑えることが出来ました。DAC出力と比べて音質の変化が全くないとはさすがに言えませんが音のディテールと品位の劣化がほとんど感じられないこと、Integratedと比べ音がまとまったように感じることなどからこれは十分セパレート単体機として通用する品質であると判断できました。

これにより今後の逢瀬でのアナログ領域での音量調整のための基礎技術が確立された瞬間でした。このアイデアに辿り着くまで非常に時間はかかりましたが結果から言えば成功です。ただし現状の仕様ではアンバランス、バランス入出力対応ですが、音量のコントロールの品質検証が中心だったためフォノは未検証です。

試作DSD対応DACについて

次にDACの開発状況です。単体機として最重要な点はIntegratedよりも音質の向上を達成することはもちろんですが、DSDの再生に対応することです。これから発売するDACとして機能的にDSD非対応ということは避けたいです。なのでDSD対応のDACの必要があります。

開発試作機は実験用ということでDAC素子をアドオン基板で簡単に交換できるようにしています。これによりPCM+DSD再生のための基本機能や電源回路、制御機能などは全てメインボードに集約させ、DAC素子+アナログ周辺回路はアドオン基板にします。これでDAC素子の音、動作、特性などを把握します。また試作ならではの追加機能としてADコンバータを搭載し、DACへDSD出力をする機能を持たせてみます。これは将来的な拡張も視野に入れた設計で直近の製品では採用はしない機能かもしれません。そして最後にUSBによるPCM+DSD再生に対応です。USBによるDSDとPCMはDAC側で自動判定切り替えとしDAC側の操作で設定を切り替える必要はないようにします。なかなか難しいですが切り替えのノイズなども極力排除します。ユーザーにとってストレスのない操作を実現するのが目標です。

DAC自体は現在開発中のため現時点ですべての動作は完全ではありませんが、初期試作にて実際に動作したDAC素子は3種、ES9018、CS4398、WM8741です。それぞれの選別理由は次のとおりです。

  • ES9018…スペックと音質の評判が最も高い。動作に癖があり使いこなすためには工夫が必要なので一度動作検証を行う必要がある。
  • CS4398…DSDと親和性の高いDAC素子であり、DSDネイティブでのボリューム調整やDSD128の対応がある。
  • WM8741…デジタルフィルタによる違いの検証。DSDの対応は平凡。

ほかにはAK4495も検討したいのですが現時点では入手困難のため見送りしています。ですがアドオン基板の制作だけで別の素子には対応できるので入手でき次第テストしてみたいと思います。今回は先送りになりましたがTIのPCMシリーズも今後検証予定です。

音質は結果から言えばDAC部としてIntegratedを超えることになんとか成功しました。音質設計のポイントはプリアンプ同様詳しくは書けませんが、オーディオの常識から少し外れた領域に限界を超えるための鍵がありました。これはDACの開発では基板設計と部品の配置が大変重要であるということです。今後この対策を踏まえた設計をもっと煮詰めて更なるハイレベルなDACへと飛躍させたいと思います。

またDAC素子とデジタルフィルタの音質傾向の差は確かにありますが決定的といえるほどの大きな差はありませんでした。そもそもアナログ、電源周りの設計のほうが音質へは大きく影響します。実際に過去に制作したDAC同士での比較において、それぞれに施した音質対策によってDAC素子の違いにかかわらずアナログ設計で音質の順位が簡単に入れ替わるということは頻繁に経験しています。最も良い事例としては過去の検証において、イーディオ様のご好意により貸し出しいただいたMSBテクノロジー社のマルチビットフルディスクリートMSB-DACモジュール(MP-ACD512)を使ったDACも試作しましたが、確かにディスクリートならではの音質的優位性はあるものの圧倒的というほどではありません。それよりもアナログ設計の優秀さがDAC素子そのものよりも重要であることを再確認する結果(最新のDSD-DACと比べて音質的優位ではない)となりました。これはアナログ領域の設計次第では低位のDAC素子でも上位の素子に音質で勝りうるという例(限度はあると思いますが)かもしれません。

そして気になるDSDとPCMの音質差ですが確かに音の傾向、キャラクターの違いはありますが、世間で言われているようなDSDの圧倒的優位性は感じませんでした。これもデジタルフィルターやDAC素子の違いと同じ程度の差のようです(もちろん音質差はあります。違いそのものは否定できません)。実際のところPCMでジッターの対策をしっかり行っている場合にはDSDもPCMも大きな音質差はないのかもしれません。おおまかな傾向としてDSDは空気感がある、繊細な音である、高音に色がつきやすいという傾向がありそうです。PCMは逆に力強く芯のある音で高音はなめらかである、というように感じました。DSDはSN面ではノイズシェーピングの影響で広域ノイズが増え特性ではDSD(128fs程度の場合)のほうがやや不利ですからなんとなく聴感と一致するように思います。

このあたりはわずかとはいえ音は違いますから、最終的にはPCMとDSD、デジタルフィルタは音楽ジャンルや好みで選ぶのが良さそうです。このような点は機能的対応の優位性だと思います。好きなようにユーザー側で音質の選択が出来るという点は明確なメリットといえるのではないでしょうか。

新型パワーアンプについて

最後にパワーアンプですが、既にUcdを超えるアンプが存在するので内部仕様はだいぶ前から決まっています。カタログの謳い文句であった真の前人未到のクラスDアンプとはUcdよりもこちらのほうが相応しいといえる代物です。Ucdと比べてすべての特性は約一桁上回っています(ハイエンドのアナログアンプと比較できるレベルです!)。音も別格ですので大変素晴らしい仕上がりに思います。ただ問題はデザインと機能仕様等の部分が決まっていないためにリリースが遅れています。上記セパレートのプリ、DACとの組み合わせを想定しています。

Integratedの外観をアップデート

写真のようにIntegratedの外観をアップデートしました。液晶をOLED(有機EL)タイプとし、アルミの仕上げを梨地仕上げに。これによって以前よりも大分高級感が出てきました。このあたりは文章で語るより写真をご覧いただいたほうがわかりやすいと思います。

スピーカの改良と測定を行いました

前回問題点が2つ明らかになったのが今回の改造のきっかけです。1つめの問題は低域のTHD悪化です。測定上明確に箱の共振が残っていたので、それがTHD悪化の原因のようです。その判断の理由はユニットに近接して測定するとそのような問題がないことです。

この問題に対応するには大幅な改造が必要でした。今回行ったのは次の2点です。

  • 箱の内部にケースの振動を抑えこむため複数本の支柱を追加する。支柱も振動しないよう対策を行う。
  • 吸音材とアルミケースの間にブチルゴムを貼り付け振動対策を行う。

一番大変だったのは重量のあるスピーカなので倒して作業が出来る位置に移動させることです。上記の対策を行い叩きながら共振が殆どなくなったことを確認し、その後再び組み直してもとの位置に設置し直します。かなりの肉体労働です。しかしその甲斐もあって上記の対策後はケースを叩いてもほとんど鳴きはなくなりました。完璧に消し去ることは出来ていませんが相当良くなったのは間違いありません。これで低域のTHD特性は改善しました。

2つ目の問題はF特。2k-7kの間で山と谷ができていました。この原因はアルミ製のツイータに追加で取り付けたリングが原因でした。ツイータの周囲にわずかでも物があるとその影響でF特に測定ではっきりと分かる影響が出るようです。これは単純にリングを外すことで、この問題がクリアされました。しかし外見的にはリングがついているほうが良いので対策は考えたいところです。

そして最終的に出来上がった状態で測定をしなおししました。

  • 測定マイク:AUDIX TM1
  • 測定ソフト:ARTA
  • DAC、パワーアンプ:逢瀬Integrated+未公開パワーアンプを使用
  • ADC:E-mu 0404 USB

測定はツイータ軸上1mの位置です。ただし部屋は無響室でなく、今回はレベルを厳密に合わせていないので正確な測定ではありません。あくまで目安として判断してください。きちんとした測定はそのうち行いたいと思います。

図1.スピーカの周波数特性と二次三次高調波

周波数特性のグラフだけで見ると超低域までそれなりにフラットに見えます。85Hz付近の谷は部屋の定在波が原因です。100Hz以下の低域は定在波の影響を大きく受けるので通常の部屋ではどうしても凸凹は大きめになってしまいます。

THDについては100-200Hzで急激に上昇する現象はなくなりました。ほぼ全体域で1%を下回ることが出来たのでひとまず測定上問題は少ないSPになったと言えそうです。ただし防音室ではありますが測定上の在留ノイズが大きいので正確なスピーカのTHDを計測するためにはもう少しS/Nを高めることが必要になりそうです。しかし一般環境で低音の暗騒音を消すのは相当に難しそうです。

肝心の音の変化ですが、リングによる周波数特性のディップ解消によって、今までこのスピーカ特有の個性と思われていた中高域にあった面で迫ってくるような圧迫感がなくなりました。非常に優しい音が出るようになり空気感がかなり出るようになりました。以前はふわっとした音があまり出なかった印象だったのですが、この改善によってジャンルをより選ばなくなったのは間違いありません。しかしその分「面で押す力強さ」は減退しました。

低域の共振対策はほぼ全域で副作用なしの高音質化だと思います。いままで振動にエネルギーを奪われていた音がストレートに前に出てくるようになりました。現在の状態と比較してしまうと、以前は贅肉がついていた音であり、今はかなり引き締まりクリアでパワフルになった印象を受けます。低域の量感は若干減りましたが量は既に十分です。そして低音のレンジは下に更に伸びたように感じました。これは丁度アンプのダンピングファクターを上げた時の音の変化に似ています。

この2つにより音は相当変わったと感じました。測定上の問題はほとんど解消したのでグリルのデザインなど、此処から先は外見面での改良がメインとなりそうです。

図2.測定環境のノイズフロア(注:1kサイン派が入っています)


図3.累積スペクトラム(擬似無響室測定)


図4.インパルス応答(7ms以降の波形はルームの反射によるもの)

WATERFALL Integrated量産候補品

Integratedの開発情報です。シルク、アルマイトを含めた最終試作品が出来ました。測定特性も安定しており、熱の問題もクリア出来ましたのでほぼ最終版といえる仕上がりです。ロータリエンコーダの感触のみ修正の必要がありそうです。あとはこれより動作に不具合がないかテストを十分に行った後に量産へと入りたいと思います。

これ一台でパワーアンプ、DAC、ヘッドフォンアンプ、が入っています。ヘッドフォンアンプはパワーアンプと共通のUCDクラスDアンプでヘッドフォンを接続すると自動で切り替えます。更にアナログ入出力もあるのでお手持ちの機材と組み合わせもOKです(スペースの関係でフォノは非搭載ですが…)。DAC単体としてもかなり頑張って作っているので十分な性能があります。

逢瀬のノウハウをこのサイズにほとんどすべて投入した自信作です。よろしくお願いいたします!

 

 

WATERFALL Integratedのケース加工

秋の正式発表に向けてIntegratedの開発を続けています。発注していたケースですが、本日加工品が上がって来ました。シルクを印刷すると一気にそれらしくなると感じています。これから組み上げて実験です。

ちなみに↑は写真ですが、製品情報にある↓のIntegratedの画像は3Dグラフィックで作成したものです。

製品デザインをするにあたって都度加工して組み上げて仕上げをチェックするという方法ではどうしてもやり直しの時間、コストも共にかかってしまいますが、このように3Dで事前にデザインの検討を行うことで大幅な効率化が可能でした。現代のツールに大変助けられていると感じます。とはいえ細部はやはり実際に作ってみないとわからない部分もあります。

今回仕上げを白アルマイトと梨地の2パターン依頼しましたが新製品のIntegratedは個人的には梨地が良さそうに感じています。梨地の上に印刷されたシルク文字が梨地のゆらぎがほどよく組み合わさり良い感じの質感を演出していると思いました。

Integratedの基板は先月に最終候補の版を発注済みなので、最終テストで期待した性能を出すことが出来ればそのまま量産へ入る予定です。順調ならば秋、冬ごろには発売できるように準備中です。よろしくお願いいたします。

測定環境のアップデート(Integrated開発機の特性を測定)

以前の測定ではノイズフロアや歪率について正確かどうかはっきりしなかったので、測定環境をアップデートしました。とはいえ本格的な測定器は非常に高額なので、現実的な価格帯でありながら史上最高峰の測定特性と噂されるLynx Hiloを導入しました。

早速ですがWATERFALL Integratedの試作品で測定データをとってみましたのでアップします。測定機材のアップグレードによりノイズフロアが大幅に下がり、DACの真のS/Nがある程度見えてくるだけでも価値がありました。

J-testの結果です。ピークは-6dBに合わせてあります。特別目立つノイズもなく素直な応答ですのでジッターは殆ど無いと推測出来ます。特にノイズフロアが-150dBを下回っているのでS/Nは非常に良好と思われます(これでも既に測定器の限界です)。特にS/Nとジッターによる音質差は音の濁りや分離の悪さに直結しやすいため歪率よりも重要と感じています。

続いて歪率ですが、100Hz以降に乗っている微細なリップルノイズは接続ケーブル起因によるものであることがわかっています。もっとケーブル長を短くするかシールドを強化しなければ除去は困難ですが、現状では間に合わせのため申し訳ないですがこのようなところが限界です。(もちろん将来的に改善したいです)

また歪率そのものについては特別悪くはありませんが現代においてはこのレベルなら特別優れているというわけでは無いでしょう。それよりも個体差、ばらつき等が結構あるので安定した数字を達成するには部品の精度を更に上げるしかないでしょうか。しかも微妙な歪率の差による音質劣化はほとんど感じられないので、機材としてはこのあたりの数字を達成していれば特別問題はないと考えています。

19kHz+20kHz、IMD混変調歪です。

最後にこれは16bitと24bitの-90dBレベルの信号をそれぞれWATERFALL Integrated 内蔵DACにデジタル入力し、アナログの出力波形を観測したものです。上が24bit、下が16bitの1kサイン波形(-90dB)です。これも海外のオーディオサイトの測定でよく使用されているデータですので掲載してみました。

逢瀬がクラスDアンプを選んだ理由

WATERFALLシリーズであるWATERFALL Compact、WATERFALL Integratedのパワーアンプ部には共通してD級=クラスDアンプを採用しています。国内では通称としてデジタルアンプと呼ばれることもある方式です。国内では一時期のブームがあったものの最近では落ち着いてきた印象があります。

まずクラスDアンプの音質の特徴を言えばアナログアンプと比べて量感は少なめで中低域があっさりしており、分離が良い、透明感があるというような感じでしょうか。スイッチング電源と組み合わされることも多く、駆動力があると評価されることも多いです。逆に高域はアナログアンプに比べて良い特性、質感を出すのが難しく荒さが目立ちやすい方式だと思います。

一時期のブームを考えると今更クラスDアンプ?と思われるのも無理がないかと思うのですが、個人的にはこのアナログアンプとは異なる音質を持つクラスDアンプの音、省電力、省スペースが可能な先進性、これらの特徴に可能性を感じていました。そしてやはりその音質に惹かれたから、というのが逢瀬のラインナップでクラスDアンプを中心に据える主な原動力となりました。もちろんアナログアンプで省電力を目指すのも良いと思いますが逢瀬はクラスDアンプの可能性に注目しました。上記のような弱点さえ克服出来れば従来達成できなかったような理想のアンプが出来上がるはずだと思ったわけです。

先日歪率が音質において最重要ではないという記事を書きましたが、個人的な経験的ではクラスDアンプの場合は歪率特性の良さと高域の綺麗さにおいてアナログアンプよりも強い相関関係があると感じました。一事が万事ではない、耳で判断しなければわからない、このようなことはオーディオでは日常茶飯事です。いままでの比較結果からはクラスDアンプの場合は歪率が優秀なアンプのほうが音が綺麗である可能性が高いということだけです。

クラスDアンプにおいて歪率はアナログアンプよりも強く音質に影響を与えているか、高周波領域において歪率が悪いアンプは歪率以外の要因で劣化をしている可能性があると考えています。(もちろんそれだけが絶対に正しいとは言い切れないですが)

例えばクラスDアンプでは高周波をカットするために通常は出力にフィルタ回路がありますが、それによってスピーカインピーダンスによる影響を受け、実際にスピーカから出力される周波数特性は通常大きく変動してしまいます。参考までに次のような測定データがあります。メーカは伏せますがクラスDアンプにおいて周波数が変動している様子がわかるかと思います。左上がアナログアンプ、それ以外は全てクラスD方式です。

この表の中で右上にあるHypex社のUcdと左下のアンプのみが周波数特性の変動を押さえたクラスDアンプだといえると思います。しかしこのようなクラスDアンプの欠点をうまく処理しているアンプを0から探すのはなかなか大変でした。なれない英語を使って海外から各種取り寄せて組み立てて比較。そのような日々がしばらく続きました。

そして現在逢瀬のメインで使用しているパワーアンプ部、Ucd=Universal Class Dと呼ばれるHypex社による独特の方式のアンプに出会いました。国内ではほとんど知名度がありませんが海外ではそれなりに知られたパワーアンプモジュールです。このUcdアンプは全てディスクリート、アナログ回路で作られておりデジタル制御ではありません。ですので厳密にはデジタルアンプという呼び方は正しくありません。アナログ回路によるMOSFETスイッチングアンプでしょうか。

またUcdモジュールは周波数特性の変動がないだけではなく、クラスDアンプとして非常に優れた高域特性を持っており、低域と高域で歪率特性がほとんど一定です。このような歪率特性を持つクラスDアンプは非常に稀であり、このような特性を実現することはほとんど類を見ない事例です。

実際にはほかにも一部で近い特性のアンプも見つけましたが動作の安定性や入手性などから、逢瀬の最初のラインナップではUcdを採用することとなりました。Ucdモジュールはそのままでも十分優秀な音質を持っていますが、逢瀬ではそれに独自の対策を施し更なる滑らかさと音の分離を持つ製品として仕上げました。

類まれな特性によって生じるクラスDアンプとは思えないような滑らかな高域、それとクラスDアンプそのものの音質である高い分離の良さと透明感、この奇跡のような両立がついに可能となったのです。もし機会がありましたらば、是非ともこの理想のクラスDアンプの音質を体験していただきたいと思います。

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