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AK4495S-DACのアップグレード検討中

電源回路の世代を更新しました。

現行のAK4495S-DACを購入された方を対象として準備ができ次第この最新世代型電源ユニットへのアップグレードサービスを行います。有償サービスとなりますがこれにより確実な音質向上があります。AK4495S-DACを購入された方には交換用電源ユニットの準備ができ次第にてご連絡差し上げます。本体は一度送付いただいての対応といたします。こちらの価格は3万円以内にて現在検討中です。

またそれに合わせて再生産中のAK4495S-DACについてもアップグレード済のものにします。価格は従来の28万円から30万円にアップしますが、音質のほうは更に価格を超えた仕上がりとなることでしょう。

下記が最新世代レギュレータの実測データになります。レギュレータの出力をシールドケーブルでローノイズプリアンプへ入力し60dB増幅したものを16bitオシロスコープへ入力、最終的に増幅率を逆算しFFTでノイズレベルを推定したものです。測定限界値は環境ノイズを含めた測定器側の限界ノイズフロアになります。但し50Hzと10kHz以上に存在するノイズは外来ノイズであり、レギュレータ基板を含めた完全シールドでない為、通常環境では完全に取り去れずに残っているものです。レギュレータ側の性能に起因する問題では無いことに注意してください。

最新世代のレギュレータでは既に計測限界を超えているため真の実力はこの測定では見えていません。この残留ノイズレベルは計測値が本当に正しければ50オームの抵抗より小さいもので現在最高峰のICレギュレータLT3042等を上回ります。ハイエンドDACではこちらの技術をベースにしたものを搭載予定です。

Integrated搭載レギュレータ

Integrated_Regurator

AK4495S-DAC現行搭載レギュレータ

AK4495S_ReguratorV1

AK4495S-DAC最新世代レギュレータ

AK4495S_ReguratorV2

計測限界ノイズフロア

Measurement_limit

今回の電源アップグレードの理由ですが、現在話題の某社ハイエンドDAC(価格約5倍のもの)と比較されて、特に低域の解像度が不十分であるという意見があったことです。

当方ではまず一つの原因がレギュレータの性能限界にあると判断し、その部分を重点的に対策いたしました。これにより中低域に残っていたノイズフロアを更に押し下げ、中低域の解像度については明らかな改善がありました。もちろんこの対策だけで十分だと考えているわけではありませんが、少なくとも某社ハイエンドDACとの差は多少は縮まっている筈です。

現在その他の音質改善項目にも取り組んでいます。現時点でも劇的に向上するポイントをレギュレータ以外にも見つけています。もちろんレギュレータの改善のみでも相当の向上がありましたが、この新しい対策では音質向上と表現するよりも音の品位、品格を感じさせるような進化と感じています。今回の改善によってようやくハイエンドと呼べる領域に入りつつ有るのではないかという手応えを感じています。

残念ながらこの新しい対策は基板自体の変更が必要なので有償アップグレードの対象とはなりませんが、次期AK4497ハイエンドDACでは今回の対策を更に推し進めたものとなるでしょう。

AK4497ハイエンドDACのリリース時期について

きちんとアナウンスできておりませんでしたが、AK4497ハイエンドDACのリリース時期についてです。

AK4497の評価チップは当方のような小さいメーカーには未だ許可が降りずIC自体入手出来ておりませんので現在全く開発は進んでおりません。こちらは夏以降にICを入手出来たとして、どんなに早くても来年以降となってしまう見込みです。そのためAK4497ハイエンドDACのリリースまでの期間はAK4495S-DACを改良したDACを当社ラインナップの最新世代といたします。そのための準備としてAK4495S-DACをアップグレード再生産しております。

何度もお伝えしておりますがDACチップのみが音質を決める要因ではありません。AK4497やES9038を使うだけでハイエンドの音質になるわけではありません。平凡な設計ではどんなICを使っても平凡な音質しか出ません。この点は何度でも強調しておきたいと思います。

おそらくAK4497搭載品は大手メーカーさまより先にリリースされるかと思いますが、逢瀬は後手に回るかわりにAK4497発売タイミングに間に合わせるような急ぎの開発はしません。より良いものを作ることだけに集中します。AK4495S-DACから更に飛躍しAK4497の真の実力を発揮できる最も優れた設計にてリリースすることを目指します。上記の最新世代レギュレータもそのための一つの要素に過ぎません。

AK4495S-DACも近いうち(8月下旬頃予定)にアップグレードし更に向上した音質となります。アップグレードしたAK4495S-DACがどのレベルの到達点にあるのか、貸し出しサービスを行いますので是非ご自身の耳でご確認ください。

数量完全限定、特注仕様DACの追加情報

こちらの価格は28万円 税別です。

2016/02/22追記 今週中にDACの貸し出しをスタートいたします。申し込みは下の青いボタンからお願い致します。現在8名お待ちいただいておりますので、現在からですと2ヶ月ほど貸し出しに掛かる見込です。

前回アナウンスした内容の追加情報になります。内容についてまずは概要から書きます。ただし現段階の予定なので若干の変更が出る可能性はあります が、こちらのスペックのうち大半はすでに実現可能です。

  • DSD/PCMボリューム変更対応、ヘッドフォン対応、リモコン対応
  • ES9018を超える音質のAK4495Sをデュアルモノで使用
  • 電源系統も完全なデュアルモノ設計
  • 完璧なモノ設計によりクロストークは測定限界の-140dB以下(ヘッドフォンは含まない)
  • 超高性能電源により、アナログ電源の理論上のノイズ抑圧比は約-300dB
  • 384kHzPCM、11.2MhzまでのDSDフォーマットに対応
  • DSDの過渡応答を正しく再現可能
  • SPDIFからのDoPに対応。DoPはDSD64までの対応(DSD128での動作確認は出来ておりません)
  • DSD、PCMの切り替えノイズなし。プリを省略しパワーアンプに直結が可能
  • デジタルフィルタの切り替えに対応
  • ロージッターかつppbクオリティの高性能TCXOオシレータを搭載しDAC素子へ直接入力
  • 一部のDACで潜在的な問題を解決(詳細は発表時に公開)、(当方の調査によるとこの問題が起きないDACは当初の予想より多いようなので表記を変更しました。)
  • 多系統デジタル入力に対応。OPTICAL:2、COAXIAL:2、AES/EBU:1、USB:1
  • 出力系統は、RCAアンバランス:1、XLRバランス:1、ヘッドフォン:1
  • DACとしては大容量のトランスを搭載し安定感のある低音を実現

なおこのDACは特注仕様の試験的リリースのため、以下のような制約があります。

  • 正式モデルではありません
  • ケースは背面パネル以外Integratedと共通のものになります
  • パネルはIntegratedと共通で、専用のネームは入りません
  • 背面パネルにモデル名等の表記はありません
  • 価格はIntegratedと同等です。

最終的に正式なハイエンドDACをリリース時にはこのあたりはすべて見直し、ネーム入り+新規型番の新製品として、ケースも新規設計で作り直しと なります。採用するDACも来年AK4497の発表がアナウンスされておりますので音質に問題がなければ正式版ではAK4495SからAK4497へとアッ プグレードする予定です。AK4497はすでに試作品が動作している模様ですのでそう遠くない時期に発売されると思っています。ということで正式 なハイエンドDACの登場は少なくともAK4497の発売以降となる見込です。

なお採用DAC素子であるAK4495SはAK4490、AK4495を超える音質であることを確認済みです。確認は同一レイアウト基板、同一パーツ、同一電源での比較による対等な条件での比較による評価です。以前作成したDAC基板差し替え可能な試作品にて比較試聴しています。ES9018を超えるというのも同DACの差し替えによる比較結果です。この結果ES9018はAK4495S、AK4495以下であることがわかりました。

もちろん従来から訴えているDAC素子による音質差はアナログ設計、基板設計などと比べると遥かに小さい影響しかありません。AK4495Sを使用しているから高音質というわけでは決してなく、それ以外の要素を出来る限りベストとした上で初めて有意となる差でしかありません。しかしその他の条件をきっちりと満たした上での比較では違いは相対的に大きく感じるようになります。それはハイエンドDACのクオリティを目指すのであれば、出来る限り隙がないように対策していくことが重要であり、現在の当方の最新DACは素子の選択も重要である、そのような領域に到達しているということの表れでもあります。

最新DACの音質について

Integrated時代のDACと比較して最新のDACでの最大の変化は古い録音の聴感音質がかなり向上している点です。デジタル初期の音源は 録音時に消えてしまった音があるため向上の余地が少ないですが、アナログの全盛期の録音は見違えるような再生となりました。

この時代の生録音はレベルが低かったりノイズが多かったりと悪いシステムではそのまま悪く再生されますが、実は楽器のディテールなどはローレベル の領域に録音されており、DACの音質向上によってローレベルの再現性が向上し細部までよく再現されるようになるようです。

これによって最新の録音と古い録音の聴感上の音質差が大幅に縮まります。当方が感じているのはある一線からDACの音質が向上していくと古い録音 の音質は伸びしろが大きく、逆に新しい音源やハイレゾ音源は向上しても古い録音ほど大きくは向上しないという点です。

このあたりはあくまで個人的な印象なので上記は参考程度の話として聞いていただきたいところですが、少なくともこちらでは本当に良いDACはハイレゾなどに頼らずとも古い録音やCDでも十分良い音をだすことができると感じています。お客様にとって本当にメリットが有るのはお気に入りの音源をハイレゾに買い替え、ハイレゾ対応機器に買い換えることではなく、既存のコレクションがより良いサウンドを奏でることだと思っています。この最新DACはそのような目的に適合するはずだと信じています。

現在貸し出し機を準備中ですので、是非ご自身の耳で最新DACの音質をチェックしてみてください。貸し出しの予約フォームを設置いたしました。規約を良くお読みの上下記より申込ください。「AK4495S試作DAC」が該当品となります。貸し出しのスタートは2月中にはスタート出来る予定です。

貸出の申し込み

貸出機の反応と今後の展望について

貸出の結果公開は一般的にポジティブな意見のみを記述するというのがオーディオメーカーのやり方ですが、ここでは自社に有利なものだけではなく全 体的な印象について書きたいと思います。ただしプライバシーの問題もありますので詳細な内容までは踏み込まず、「このような反応が多かった」とい う範囲で具体的な機種名などはできるだけ避けて公開します。

WATERFALL Integrated

貸出の数は現時点で数十件です。初期から反響が良く、貸出数は伸びていますがそれに対して販売はそれほど伸びていません。その最大の要因は貸出をリクエストされるお客様の既存システムのレベルが非常に高いことです。

もともとこの製品のターゲットは現行システム総額で100万円以内のユーザーを想定していました。同価格帯の大半のプリメイン機を超える性能をより低価格でというのがコンセプトです。そしてその帯域の方ならばほとんどの方にとって有効なアップグレードになる可能性が高い製品という位置づけです。しかし実際に貸出をされたお客様は総額数百万円のシステムをお持ちの方が多く、さらにシステムのいずれかに著名なハイエンド級の製品を一台は持っ ている方が多かった印象です。これは当方の想定よりかなり高いレベルという結果です。

そして完全に想定外なのは当初考えていたようなターゲットの方は、貸し出しサービスでは全くと言っていいほどいないということがわかりました。 そもそも貸出を希望されるお客様というのが最高のものを求めるハイエンド志向の方ばかりということのようです。その結果IntegratedはDAC部、プリ部、パワー部のいずれかで既存システムを上回れるものの、一部分のためだけにプリメインアンプへと買い換える選択肢とはならないという結果です。

しかしそうであっても30万円のプリメインとしてはかなり優秀であり価格破壊であるという意見も大変ありがたいことに多数いただいております。そしてコンパクトで熱が出ないので夏向けのシステムに良さそうという話もありました。結果と して想定よりかなりのハイレベル、大規模な本格システムと比較をされつつも相応以上の評価を頂いているのが実情です。

ですがそのような評価であってもシステムの一部に食い込めるだけでは、トータルで上回らないと、なかなか購買にはつながらないというのが事実です。プリメインはそういう意味では非常に難しい製品だと 感じました。

WATERFALL Power

こちらは概ね好評のように思いますがまだサンプル数が少ないのである程度集まった時点で公開としたいところです。ですがパワーアンプに絞った単一 コンポーネントなので、そういう意味ではIntegratedよりも選びやすい製品のようです。

特注依頼について

話は変わりますが、実はBlogを全く更新出来ていない間にいくつか特注の依頼がありました。

まずはDACの特注です。この方は遠方からわざわざ埼玉県の試聴室まで来ていただき直接最新の開発機を視聴してもらいました。直感でうちだけしか候補には上がっていなかったそうです(大変有難うございます)。そして正規の製品ではありませんが当時出来る最高のDACを制作する流れとなりました。特注なので相応の費用を頂きましたがこの世に一台のみのDACとなりました。外観や操作はIntegratedのケースをそのまま流用しているので実質背面パネルと内部の構成だけが新規という形です。どうしてもケース加工の費用が大きいのでこの方法であれば比較的安値で対応ができるのです。

もう一件の特注依頼はIntegratedのブラックパネルです。こちらは国内加工なので相応の費用がかかりますが快く費用だしていただきましたので、特注での対応ができました。まだ完成しておらず納品はもう少し先になりますがこのような相談にも小さい会社なので対応が可能です。

今後の展望について

貸出機からの反響を受けてから次世代ハイエンドプリDACの構想は少し揺らぎました。特にプリの難しさから複合機は中途半端になるリスクが有るからです。Integratedのように中途半端な部分が一つでもあるとそれが原因で購買対象から外れてしまいます。やるなら確実に突出できる最高のものでなければなりません。

そうすると最も研究に時間を費やしており完成度も高いDAC部をまずは単体の製品として出すことが望ましいというのが現状の判断です。そのかわりプリDACは当面延期としプリ部の根本的な改良が必要という判断です。現行ではプリ部はDACの音質を劣化させる要因でしかないのでそのようなものを出すことは今までの実績から不適切と思います。もし劣化するとしても音楽的に説得力のある確信的なサウンドでなければなりません。現状では残念ながらその部分はまだ突出できるレベルではないです。

ということで、特注依頼から発想をもらいまして、ハイエンドDACはまずはじめに数量限定としてIntegratedケースを流用した特注モデルとして短期でリリースする予定です。そのかわりこのケース流用モデルは相応にお安く出せる見込です。この限定モデルは正式な型番ではなく、あくまで特注仕様のハイエンド同等仕様のDACという扱いです。その後正式なモデルとしてケースをデザインしなおしたハイエンドDACになります。

このDACですが中身はES9018を超える最高のDAC素子を採用します。本来それほど特性に優れるICではありませんが使いこなし次第ではデータシート以上の測定値を出せ、そして最終的に全く同等の設計での比較でES9018を超える音質を発揮させることが出来ます。スペックだけならES9018のほうが若干上ではありますが、そこは決してスペックだけではない音質再優先のための構成とします。もちろん問題のある劣悪な特性ではなくきちんと公開できる上質と呼べるレベルの測定特性は持っています。

そして周辺回路の設計でも今までの音質のためのノウハウを全て投入した最高のものになります。入出力もバランスアウト、アンバランスアウト、2系統の光、2系統の同軸、AES/EBU、USB等の多系統デジタル入力、そしてDSDへの対応など最新フォーマットに対する柔軟性ももたせます。

これから少しずつ情報を出していきます。どうぞご期待ください。

WATERFALL Power 400の状況について

ケースが上がってきましたので試作してテストしています。比較用に物量主義の合計2000VAのトランス+巨大コンデンサを載せたNcoreモデルも作成してあるのですが、現状ではトランスモデルに比べて音が固い部分があるのでチューニングしてもう少し聴きやすい仕上がりにしてからのリリースとなりそうです。

jhbchcaa

これは経験上ですが低音の出方についてはトランスはやや柔らかく、スイッチング電源はキレがありハイスピードで超低音の伸びがあります。その分スイッチング電源のほうが音がきつく聞こえやすい問題がありますので、トランスモデルと比較して問題ないレベルまで調整します。とにかく基本特性に優れるアンプなので、その良い部分を削らないようにうまくキツさを軽減できるように持って行きたいところです。

ちなみに写真の上側はDSD対応の試作DACプリです。こちらはこのままの仕様では出しませんが今年中には音質的に最も優れている要素全てを集結したフルサイズのハイエンドプリDACの開発を進めたいと思っています。当然ですがIntegratedに搭載したものと比べて大幅な躍進となる予定です。DAC素子やデジタル処理の部分も色々検討中です。こちらも今後情報を出せるタイミングで出していきます。まずはパワーアンプです。

ES9018の歪率は非常に優秀

先日ご紹介したDSD対応DACですが、歪率を手持ち環境にてテストいたしました。中でもES9018が大変優秀でカタログスペックの数字も嘘ではない可能性がありそうです。ただしここまでくると測定器の歪率の影響が無視できないはずなので、正式な測定器ではない以上絶対に正しい数値かどうかは不明です。そもそも測定値が良いからといって必ず音質が良いわけではないのでこれは一つの目安でしかありませんけれども。

画像に自動縮小が適用されておりますので見にくいのですが一番高い高調波のレベルでも-130dBほどで、トータルの計測値ではTHDで0.00005%、+Nでも0.00039%という表記になっています。0.00005%というとノイズさえなければオペアンプICの歪率並です。ただ+Nについてですがこのアナライザは20-20kではなくて0に近い周波数からのノイズを測定しているようなので、+Nについてはよくある補正フィルタ込みの測定ならばもっと良い値でもおかしくありません。気になる中央のスプリアスは原因が不明ですが他のDAC素子では見られない傾向なので現時点では原因不明です。

次にCS4398です。THDは0.00029%、THD+Nは0.00066%です。カタログスペックが地味なためややマイナーな印象を受けるDAC素子ですが実は測定にも使用しているLynx Hiloでも使われています。測定値はHiloの内蔵DACとほとんど同等で歪の出方(奇数次高調波が支配的)も同じなのでこの辺りがDAC素子の限界なのだと思います。決して悪いデータではなく当方制作のPCM1792やPCM1795などと比較してもほぼ同等の測定値です。ES9018より挙動が素直で安定しており制御面での使い勝手も良いので優秀なDACだと思います。

他にWM8741も測定しましたがジッターレベルが低いにもかかわらずCS4398等とくらべてノイズフロアが高い等の問題があります。このDACは測定面は優秀ではありませんが音質面では決して悪くないので、大手での採用例があるのも頷けます。デジタルフィルタで音質を選べるのも良い点です。

プリアンプ、DSD-DACを開発しています

大変ご無沙汰しております。数ヶ月Blogを休んでしまい大変申し訳ございませんでした。3月にWATERFALL Integratedも発売となりましたが、その間に次世代の製品の技術基盤となる試作機開発を進めておりました。次世代の製品としては単体のパワーアンプ、プリアンプ、DACなどのセパレート機を予定していますが、この開発がそう容易ではありません。その背景事情をまず説明いたします。

現行の最新機種であるWATERFALL Integratedは、開発時点でいままでの高音質化のための技術を全て惜しみなくつぎ込んだ作品です。Integaratedは決して低価格の製品ではありませんが、それでも自信を持って世に発表できるレベルの仕上がりだと断言できる製品に仕上がっています。特に一体型ならではの特徴を活かした設計はセパレートではなかなか達成できない独自の合理性があるものです。これをセパレートで超えるにはそれぞれのDAC、プリアンプ、パワーアンプ各々の音質クオリティはIntegratedに搭載するものと比べて明らかに上回らなければなりません。

即ちIntegratedを超えるセパレートということは今まで上り詰めた限界、音質の壁をあらゆる意味で破ることが必要であり求められるということです。

試作プリアンプについて

プリアンプの仕様の前にIntegratedの内部仕様について書きます。Integratedでは低ゲイン(約4.5倍)のクラスDパワーアンプに高電圧のDAC-IV変換回路という組み合わせを使うことで実用上に優れたSN比を確保しています。これが上記した一体型ならではのメリットです。そして経由するアナログ受動素子や内部プリアンプなどの段数を極限まで減らし、デジタルボリュームのSN問題(減衰に伴いノイズフロアが減らないこと)を回避しています。このような設計によるノイズ対策により実際の音楽視聴での使用領域であってもデジタルボリュームを使いながら最高の音質が確保されているといえます。

実際に過去の試作品での比較ではこのIntegratedの内部設計と比較し、単体で最高級と言われるアナログ電子ボリュームであるPGA2320、MUSES72320等もIntegratedと同等の電源回路、アナログ回路の考えられる最高の条件でテストしましたが、どちらもただボリューム素子を通過しただけで音の劣化がはっきりと分かるような状態でした。明らかにIntegratedの直結と比べて音の細部の描写が大雑把になる、高音がきつくなる、リバーブの消え入る表現が曖昧になる、などの問題が発生します。巷ではデジタルボリュームによる音質劣化は大きいと言われていますが前提条件を整え、Integratedのように十分に合理的な設計を採用していれば下手なアナログボリュームよりもデジタルボリュームのほうが優れているということになりえると考えていますし、そのように実感しています。もちろん十分考慮された設計でないデジタルボリュームではこの限りではないかもしれません。

アナログの音量調整としては電子ボリューム以外の方法では、古くからある高音質抵抗をつかった低抵抗アッテネータという手段を使えば十分な高音質を実現できることはわかっていますが、最新機種で採用するべき手法ではない(既に優れた製品が存在する)こと、ほかにコストの問題、音量誤差、リモコン対応、動作切り替えノイズの問題があります。リモコンはリレーやモータなどで対応することも出来ますが、動作音と信頼性の問題も出てきます。それでは全ての条件をクリアするためにはどうすればよいのか…開発時点では考えられる理想に最も近いIntegratedを、外部接続前提の単体アナログプリで超えるのは非常に困難と思われました。

ですがあるとき閃きがありました。発想を転換し電子ボリュームの欠点を補う設計を思いつきました。詳細はここでは記載できませんが、簡単にいえば抵抗の問題と半導体特有の問題それぞれに資源を投入し対策することで、ある程度低抵抗アッテネータに近づけるはずだと予想しました。この対策によりDACの測定限界に近いSNを確保できれば、耳で聞こえる音質劣化はほぼ無くなるはずだと推測したわけです。実際にこの発想で設計試作してみたところ以前の電子ボリュームの実験時と比べて飛躍的に音質劣化を抑えることが出来ました。DAC出力と比べて音質の変化が全くないとはさすがに言えませんが音のディテールと品位の劣化がほとんど感じられないこと、Integratedと比べ音がまとまったように感じることなどからこれは十分セパレート単体機として通用する品質であると判断できました。

これにより今後の逢瀬でのアナログ領域での音量調整のための基礎技術が確立された瞬間でした。このアイデアに辿り着くまで非常に時間はかかりましたが結果から言えば成功です。ただし現状の仕様ではアンバランス、バランス入出力対応ですが、音量のコントロールの品質検証が中心だったためフォノは未検証です。

試作DSD対応DACについて

次にDACの開発状況です。単体機として最重要な点はIntegratedよりも音質の向上を達成することはもちろんですが、DSDの再生に対応することです。これから発売するDACとして機能的にDSD非対応ということは避けたいです。なのでDSD対応のDACの必要があります。

開発試作機は実験用ということでDAC素子をアドオン基板で簡単に交換できるようにしています。これによりPCM+DSD再生のための基本機能や電源回路、制御機能などは全てメインボードに集約させ、DAC素子+アナログ周辺回路はアドオン基板にします。これでDAC素子の音、動作、特性などを把握します。また試作ならではの追加機能としてADコンバータを搭載し、DACへDSD出力をする機能を持たせてみます。これは将来的な拡張も視野に入れた設計で直近の製品では採用はしない機能かもしれません。そして最後にUSBによるPCM+DSD再生に対応です。USBによるDSDとPCMはDAC側で自動判定切り替えとしDAC側の操作で設定を切り替える必要はないようにします。なかなか難しいですが切り替えのノイズなども極力排除します。ユーザーにとってストレスのない操作を実現するのが目標です。

DAC自体は現在開発中のため現時点ですべての動作は完全ではありませんが、初期試作にて実際に動作したDAC素子は3種、ES9018、CS4398、WM8741です。それぞれの選別理由は次のとおりです。

  • ES9018…スペックと音質の評判が最も高い。動作に癖があり使いこなすためには工夫が必要なので一度動作検証を行う必要がある。
  • CS4398…DSDと親和性の高いDAC素子であり、DSDネイティブでのボリューム調整やDSD128の対応がある。
  • WM8741…デジタルフィルタによる違いの検証。DSDの対応は平凡。

ほかにはAK4495も検討したいのですが現時点では入手困難のため見送りしています。ですがアドオン基板の制作だけで別の素子には対応できるので入手でき次第テストしてみたいと思います。今回は先送りになりましたがTIのPCMシリーズも今後検証予定です。

音質は結果から言えばDAC部としてIntegratedを超えることになんとか成功しました。音質設計のポイントはプリアンプ同様詳しくは書けませんが、オーディオの常識から少し外れた領域に限界を超えるための鍵がありました。これはDACの開発では基板設計と部品の配置が大変重要であるということです。今後この対策を踏まえた設計をもっと煮詰めて更なるハイレベルなDACへと飛躍させたいと思います。

またDAC素子とデジタルフィルタの音質傾向の差は確かにありますが決定的といえるほどの大きな差はありませんでした。そもそもアナログ、電源周りの設計のほうが音質へは大きく影響します。実際に過去に制作したDAC同士での比較において、それぞれに施した音質対策によってDAC素子の違いにかかわらずアナログ設計で音質の順位が簡単に入れ替わるということは頻繁に経験しています。最も良い事例としては過去の検証において、イーディオ様のご好意により貸し出しいただいたMSBテクノロジー社のマルチビットフルディスクリートMSB-DACモジュール(MP-ACD512)を使ったDACも試作しましたが、確かにディスクリートならではの音質的優位性はあるものの圧倒的というほどではありません。それよりもアナログ設計の優秀さがDAC素子そのものよりも重要であることを再確認する結果(最新のDSD-DACと比べて音質的優位ではない)となりました。これはアナログ領域の設計次第では低位のDAC素子でも上位の素子に音質で勝りうるという例(限度はあると思いますが)かもしれません。

そして気になるDSDとPCMの音質差ですが確かに音の傾向、キャラクターの違いはありますが、世間で言われているようなDSDの圧倒的優位性は感じませんでした。これもデジタルフィルターやDAC素子の違いと同じ程度の差のようです(もちろん音質差はあります。違いそのものは否定できません)。実際のところPCMでジッターの対策をしっかり行っている場合にはDSDもPCMも大きな音質差はないのかもしれません。おおまかな傾向としてDSDは空気感がある、繊細な音である、高音に色がつきやすいという傾向がありそうです。PCMは逆に力強く芯のある音で高音はなめらかである、というように感じました。DSDはSN面ではノイズシェーピングの影響で広域ノイズが増え特性ではDSD(128fs程度の場合)のほうがやや不利ですからなんとなく聴感と一致するように思います。

このあたりはわずかとはいえ音は違いますから、最終的にはPCMとDSD、デジタルフィルタは音楽ジャンルや好みで選ぶのが良さそうです。このような点は機能的対応の優位性だと思います。好きなようにユーザー側で音質の選択が出来るという点は明確なメリットといえるのではないでしょうか。

新型パワーアンプについて

最後にパワーアンプですが、既にUcdを超えるアンプが存在するので内部仕様はだいぶ前から決まっています。カタログの謳い文句であった真の前人未到のクラスDアンプとはUcdよりもこちらのほうが相応しいといえる代物です。Ucdと比べてすべての特性は約一桁上回っています(ハイエンドのアナログアンプと比較できるレベルです!)。音も別格ですので大変素晴らしい仕上がりに思います。ただ問題はデザインと機能仕様等の部分が決まっていないためにリリースが遅れています。上記セパレートのプリ、DACとの組み合わせを想定しています。

Integratedの外観をアップデート

写真のようにIntegratedの外観をアップデートしました。液晶をOLED(有機EL)タイプとし、アルミの仕上げを梨地仕上げに。これによって以前よりも大分高級感が出てきました。このあたりは文章で語るより写真をご覧いただいたほうがわかりやすいと思います。

スピーカの改良と測定を行いました

前回問題点が2つ明らかになったのが今回の改造のきっかけです。1つめの問題は低域のTHD悪化です。測定上明確に箱の共振が残っていたので、それがTHD悪化の原因のようです。その判断の理由はユニットに近接して測定するとそのような問題がないことです。

この問題に対応するには大幅な改造が必要でした。今回行ったのは次の2点です。

  • 箱の内部にケースの振動を抑えこむため複数本の支柱を追加する。支柱も振動しないよう対策を行う。
  • 吸音材とアルミケースの間にブチルゴムを貼り付け振動対策を行う。

一番大変だったのは重量のあるスピーカなので倒して作業が出来る位置に移動させることです。上記の対策を行い叩きながら共振が殆どなくなったことを確認し、その後再び組み直してもとの位置に設置し直します。かなりの肉体労働です。しかしその甲斐もあって上記の対策後はケースを叩いてもほとんど鳴きはなくなりました。完璧に消し去ることは出来ていませんが相当良くなったのは間違いありません。これで低域のTHD特性は改善しました。

2つ目の問題はF特。2k-7kの間で山と谷ができていました。この原因はアルミ製のツイータに追加で取り付けたリングが原因でした。ツイータの周囲にわずかでも物があるとその影響でF特に測定ではっきりと分かる影響が出るようです。これは単純にリングを外すことで、この問題がクリアされました。しかし外見的にはリングがついているほうが良いので対策は考えたいところです。

そして最終的に出来上がった状態で測定をしなおししました。

  • 測定マイク:AUDIX TM1
  • 測定ソフト:ARTA
  • DAC、パワーアンプ:逢瀬Integrated+未公開パワーアンプを使用
  • ADC:E-mu 0404 USB

測定はツイータ軸上1mの位置です。ただし部屋は無響室でなく、今回はレベルを厳密に合わせていないので正確な測定ではありません。あくまで目安として判断してください。きちんとした測定はそのうち行いたいと思います。

図1.スピーカの周波数特性と二次三次高調波

周波数特性のグラフだけで見ると超低域までそれなりにフラットに見えます。85Hz付近の谷は部屋の定在波が原因です。100Hz以下の低域は定在波の影響を大きく受けるので通常の部屋ではどうしても凸凹は大きめになってしまいます。

THDについては100-200Hzで急激に上昇する現象はなくなりました。ほぼ全体域で1%を下回ることが出来たのでひとまず測定上問題は少ないSPになったと言えそうです。ただし防音室ではありますが測定上の在留ノイズが大きいので正確なスピーカのTHDを計測するためにはもう少しS/Nを高めることが必要になりそうです。しかし一般環境で低音の暗騒音を消すのは相当に難しそうです。

肝心の音の変化ですが、リングによる周波数特性のディップ解消によって、今までこのスピーカ特有の個性と思われていた中高域にあった面で迫ってくるような圧迫感がなくなりました。非常に優しい音が出るようになり空気感がかなり出るようになりました。以前はふわっとした音があまり出なかった印象だったのですが、この改善によってジャンルをより選ばなくなったのは間違いありません。しかしその分「面で押す力強さ」は減退しました。

低域の共振対策はほぼ全域で副作用なしの高音質化だと思います。いままで振動にエネルギーを奪われていた音がストレートに前に出てくるようになりました。現在の状態と比較してしまうと、以前は贅肉がついていた音であり、今はかなり引き締まりクリアでパワフルになった印象を受けます。低域の量感は若干減りましたが量は既に十分です。そして低音のレンジは下に更に伸びたように感じました。これは丁度アンプのダンピングファクターを上げた時の音の変化に似ています。

この2つにより音は相当変わったと感じました。測定上の問題はほとんど解消したのでグリルのデザインなど、此処から先は外見面での改良がメインとなりそうです。

図2.測定環境のノイズフロア(注:1kサイン派が入っています)


図3.累積スペクトラム(擬似無響室測定)


図4.インパルス応答(7ms以降の波形はルームの反射によるもの)

WATERFALL Integrated量産候補品

Integratedの開発情報です。シルク、アルマイトを含めた最終試作品が出来ました。測定特性も安定しており、熱の問題もクリア出来ましたのでほぼ最終版といえる仕上がりです。ロータリエンコーダの感触のみ修正の必要がありそうです。あとはこれより動作に不具合がないかテストを十分に行った後に量産へと入りたいと思います。

これ一台でパワーアンプ、DAC、ヘッドフォンアンプ、が入っています。ヘッドフォンアンプはパワーアンプと共通のUCDクラスDアンプでヘッドフォンを接続すると自動で切り替えます。更にアナログ入出力もあるのでお手持ちの機材と組み合わせもOKです(スペースの関係でフォノは非搭載ですが…)。DAC単体としてもかなり頑張って作っているので十分な性能があります。

逢瀬のノウハウをこのサイズにほとんどすべて投入した自信作です。よろしくお願いいたします!

 

 

WATERFALL Integratedのケース加工

秋の正式発表に向けてIntegratedの開発を続けています。発注していたケースですが、本日加工品が上がって来ました。シルクを印刷すると一気にそれらしくなると感じています。これから組み上げて実験です。

ちなみに↑は写真ですが、製品情報にある↓のIntegratedの画像は3Dグラフィックで作成したものです。

製品デザインをするにあたって都度加工して組み上げて仕上げをチェックするという方法ではどうしてもやり直しの時間、コストも共にかかってしまいますが、このように3Dで事前にデザインの検討を行うことで大幅な効率化が可能でした。現代のツールに大変助けられていると感じます。とはいえ細部はやはり実際に作ってみないとわからない部分もあります。

今回仕上げを白アルマイトと梨地の2パターン依頼しましたが新製品のIntegratedは個人的には梨地が良さそうに感じています。梨地の上に印刷されたシルク文字が梨地のゆらぎがほどよく組み合わさり良い感じの質感を演出していると思いました。

Integratedの基板は先月に最終候補の版を発注済みなので、最終テストで期待した性能を出すことが出来ればそのまま量産へ入る予定です。順調ならば秋、冬ごろには発売できるように準備中です。よろしくお願いいたします。

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